#22 愛されたい、嫌われ者
愛されたいけど、
嫌われ者でいい。
嫌われ者でいいけど、
愛されたい。
そう思って生きてきた節が、たしかにある。
始まりは小6だろうか。
キャプテンという大役を任された。
10番でフォワード。
足がめちゃくちゃ速くて、背も高い。
チーム内では得点を量産するもんだから、頭には王冠があった。
当時発する言葉たちは、間違いなく刃物になっていて、萎縮するチームメイトもいただろうなって、大反省していることも嘘じゃない。
上から指示を出すフィールドのボスは、やがて嫌われ者になった。
生まれて初めて、上下関係というものに触れた中高時代。
地元を離れて向かったのは、世間ではエリートとも呼ばれる学校。
川の上流から中流に下った鋭利な石は、やがて丸みを帯びる。
次第に人の痛みを分かるようになり、僕1人では太刀打ちできない世界だということに気付く。
ボスじゃなくてリーダーになりたい。
そう思って務めたキャプテンの先に、明るい未来は待っていなかった。
どれだけの善意、澄み切った情熱を見せても、誰かの世界では悪者にもなり得てしまう。
できたのは、風通しの良いチームではなく、マリアナ海溝に匹敵するほどの深い溝と、沖縄と北海道くらいの温度差。
学生時代のこの塩梅は、振り返ってみたら難題。
もっと上手いアプローチがあっただろ、と過去の僕に発破はかけたい。
プレイスタイル柄、指針を示し、誰か動かす場面が多い。
牽引力はさることながら、裏に説得力があるかどうかは、非常に鍵。
攻守の切り替えを要求するのであれば、まずは自分がやっているのか。
味方を鼓舞するのであれば、まずが自分がハードワークをしているのか。
それはピッチ外においても同じ要領で、あらゆることに先人を切るべき。
踏ん反り返って、腰深くかけて居座る先輩から要求されるより、一緒になってライン引きをするキャプテンで在りたい。
ゴミ拾えよ。って言うより、僕が拾ってる姿で感化される後輩がいて欲しい。
嫌われ者になる、にも種類があると思ってるから、言い方には凄い気を付けるようにはしてる。
頭ごなしに言われるのは不快だし、ミスに対する指摘なんてのはしたくない。
何せ、僕がミスを指摘できる側の選手ではないから。
どんな試合、勝負でも勝ちたい。
この気持ちに一点の曇りもなくて、そこには拘っているし、同じチームなら拘ってもらいたいエゴもある。
だからこそ、自分がボールを奪われてチンタラ歩いている選手はムカつくし、失点してヘラヘラしている選手とは、違う星の下に生まれたとすら思う。
そういう士気、意識的なところは決まって要求したいし、僕こそが締められることでもある。
こいつうるさいな。
そう思われてもいいし、後ろ指だってなんぼ差されても受け入れる。
それでも僕は人間だから、愛される選手で在りたいし、応援されたい。
この狭間で生きるのって、意外と勇気のいることだったりする。
渡邉 宰