#17 数字


「スプリントが、あと800メートル足りない。」

トレーニング前のミーティング。
名指しで公開処刑を受ける。

モンゴルでの2シーズン目。プレシーズン。
背中にGPSを付け、トレーニング中からスタッツの分析が始まった。

グローバル化を図るクラブは、サッカー部門のマネージャーにドイツ人、スロバキア人監督を招聘した。共通言語は英語に。


冒頭の指摘は、僕にとっては受け入れ難いモノだった。
サッカーはスプリントしたもん勝ちなのか。
常に最速で走ることが良い選手の象徴なのか。

振り返ってみれば、この時の僕はまだ青くて。
どんな指摘を受けても刃になっていたに違いない。

ただ、ここでの指摘が、総移動距離やヒートマップに対するコトだとしたら、まだ受け入れる余地はあったとも思う。

主戦場をアンカーとする僕にとって、スプリントを披露する回数は極めて少ない。
現に、クラブはカウンターやハイプレスのプランはなく、後ろからのビルドアップとゾーンディフェンスを主としていた。

果たして、その数字が見るべきモノか否か。
判断するべきだと、僕は思う。


さて、今から2週間ほど前。
アスリートに特化したスマートウォッチ、Garminを購入した。
これまでApple信者をやってきて、Apple Watchを手放す決意をしたわけだ。

その意図は、見るべき数字を見るため。

スポーツに特化しているとは、口が裂けても言えないApple Watch。
ゆっくりジョグをしている最中に、心拍200を示されたら、もうさすがにダウト。笑

安静時心拍、発汗量や運動強度、リカバリー時間。
気にしたことのなかった、気にするべき数字たちが並んでいる。
今取り組んでいる低パワーでのランニング、ワラーチの継続において、注視すべき指標になる。


自分の都合の良いように落とし所を探してみたけど、数字を持っているに越したことはないなと思ってしまった。
言い訳や難を逃れるために、この数字は必要ないな…なんて見切りを付け勝ちだけど、全部できた方がいいじゃん。

引き出しに閉まっておいて、必要な時に取り出せばいいだけで。
環境が、監督が、クラブが、国が。
問いが変われば答えを変わるわけで、それに至ることが評価に繋がる。

周りが求めることを披露してこそ、僕はショーケースに並び続けることができる。

お前、全部掴めよ。

はい。頑張ります。

渡邉 宰




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