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Photo by
yamayasu400
峠 | 自由詩
あの山の頂上まで上り詰めた時に
僕はこれ以上のない感動を覚えた
気が遠くなるほどの険しい崖を命綱無しでよじ登り
一歩踏み外せば奈落の底に堕ちてしまうような夢だ
『ライク・ア・ヘヴン』とでも云いなくなるほどに
誰も辿ることない絶景をこの手で独り占めしたくなる
「これが僕の憧れを抱いていた景色なんだ」
「これが僕が心の底から望んていた世界だ」
心からの感動に包まれている時間も束の間で
そこから自分をどこに解き放すべきなのかを
此処より遠くの頂から見透かされている神の手に
悪戯に試練を与えられているような気分に浸るんだ
辿り着いていないことの後悔と
辿り着いた後に気づいた後悔
どちらが心に重くのしかかってくるかを
鼬ごっこのように自問自答を繰り返せど
景色は徐々に色味を暗く染め上げるだけで
心の時計は電池切れのまま微動だにしない
「これから先はどこに向かうべきなのか?」
「ここより先はどこに目指すべきなのか?」
導き出した答えは、ここがゴールではない
ここがまた一からのスタートであるのだと
僕の全身に吹いてくる冷たくも強い風は
果たして「向かい風」か「追い風」なのか
それも誰かが決めてくれるものではなく
峠に辿り着いた僕自身が決めるものなのだろう
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