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金融講座ⅴ12「『円安は悪か?』の報道記事を否定する」
次に掲載する報道記事を取り上げるが個人的には傾聴に値しない内容と考える。何故なら、記載された内容に現状認識と分析力が不足して説得力が乏しい。批判のための説得材料に乏しい記事であろう。はじめから批判ありきで批判のための記事で内容に分析力が不足している。今回は報道記事から円安を論じる。
皇紀2682年5月15日
さいたま市桜区
金融コンサルタント 田村 司
はじめに
為替相場は色々な要素で変動するが、今回のように、基軸通貨の米国が利上げに動くことで、その国の通貨高を誘う要因が相対的に多くなる。金融自由化された国においては、金利の高い所に資金が流れるのである。今回の円安は米国の金利引き上げに起因する。ウクライナ侵攻という有事の事態には円高になる。それは、有事の時の投資資金は自国の円へと逃避行動をとる。それが円買いとなり円高となる。しかし、今回は米国の利上げで金利の高い米国へと資金が流れる。その時は日本の金利と米国の金利の比較から円売りのドル買いが生じる。これが、企業業績不振による円売りによる資金逃避とは違う。日本は1985年のプラザ合意で円高・ドル安を決めた・しかしその後、1985年9月に決められたプラザ合意によって始まったドル安に歯止めをかけるための、ルーブル合意1987年2月22日にパリのルーブル宮殿で開催された先進7カ国財務大臣・中央銀行総裁会議(G7)が行われた。この様に相場は思い通りに動かせないので強引に誘導する政策が行われる。また、国家間の利害がぶつかり合う折衷の結果でもあろう。相場が実体経済を振り回し、良好な実体経済を悪化させる場合もある。また逆もある。現在は、政策立案者は熟考が必要であろう。
円が国際通貨でなくなる日 続く「悪い円安」 金利を“封印”した日本の凋落
テレ朝news 2022/05/13 20:04
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続く「悪い円安」 金利を“封印”した日本の凋落
20年ぶりの安値を更新し続ける円安が「悪者」扱いされている。輸入コストの上昇でガソリン高騰や食料品などの相次ぐ値上げに拍車をかけているからだ。
この円安はアベノミクスの超低金利政策の延長線上にある。金融緩和で金利が下がれば円安になり、上がれば円高に作用する。岸田政権は「アベノミクス」を「新しい資本主義」という看板にかけ替えようとしているが、超低金利のアベノミクス路線は修正していない。
「金利」は経済の生殺与奪を握っている。異様な金融緩和で金利という大事な「規律」にフタをすることで、現実を直視する目が曇り、未来を切り拓く力がそがれているのではないだろうか。金利を封じ込めてきたアベノミクス路線が日本凋落の一因になっていると考える。関係者の言葉などから問題の本質を探った。
■円安めぐる政府との“ズレ” アベノミクス路線を貫く日銀総裁
「どちらかと言えば、悪い円安」。
4月18日、鈴木俊一財務大臣は衆院の委員会で円安をけん制して見せた。ガソリンや食料品などの価格上昇が国民の財布を直撃していることが背景にある。
「経済を下支えするため粘り強く金融緩和を続ける」。
しかし、その10日後、日銀の黒田東彦総裁は、金融政策決定会合後の会見でこう明言した。金利上昇を抑えるため指定した利回りで国債を無制限に買い入れる指し値オペを原則、毎営業日実施すると発表し、金融緩和を強化する姿勢を示した。日銀は景気刺激の観点から円安が望ましいと考えているようだ。この発表の直後に円は急落。一時、1ドル=131円台を付けた。
「アベノミクスに囚われ過ぎている」(市場関係者)。
安倍政権と進めたアベノミクス路線を貫こうとする黒田総裁には、こうした指摘もある。
■「金利がないから何もできない」 円安で日本企業が海外から買収される懸念
アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)は5月4日、0.5%の利上げを決めた。一度に0.5%上げるのは22年ぶりのこと。コロナ禍から立ち上がる経済下で40年ぶりの高いインフレに直面するアメリカは速いペースで金利を引き上げる構えだ。
「日本は金利がないから何もできませんよ」。
中央省庁の中堅幹部は悔しそうに私にこう漏らす。金利の上げ下げで経済をコントロールする余地があるアメリカの姿がうらめしく映るのだろう。日米の金利の差が開くので、金利の高いドルが買われて円が売られ、円安が進む。アメリカ以外の各国も利上げの方向に動いている。
「円の価値が下がれば、日本企業が米中など海外から買収されやすくなる」(銀行系エコノミスト)。こうした懸念も生じている。
■「超低金利」が企業競争力を奪い、賃金も上がらず
安倍政権が2013年6月に打ち出したアベノミクスは3本の矢を柱にした。大胆な金融緩和、機動的な財政出動、民間投資を喚起する成長戦略。歩調を合わせた日銀は2016年1月には禁じ手とも言われるマイナス金利の導入に踏み切った。
アベノミクスの評価は賛否がある。戦後第2位の長さの71カ月も景気回復を継続させた。世界経済の回復が背景とはいえ、マクロ経済政策としては一定の評価に値する。しかし、課題のデフレ脱却は果たせず、副作用も招いた。アベノミクスは完全雇用をほぼ達成したが、非正規従業員や短時間労働者が増えたことで賃金は抑えられ、生産性低下の要因になった。超低金利の悪循環が続いている。
「日本銀行は、景気循環を超えてゼロ金利政策や円安を固定化しており、それが資源配分や所得分配を歪め、潜在成長率や自然利子率を低迷させている。ゼロ金利や円安なしでは存続できない生産性の低い企業が増えているから実質賃金も低迷している」。
BNPパリバ証券のチーフエコノミスト、河野龍太郎氏は4月、こう指摘した。河野氏はアベノミクス路線は失敗したと認識している。
■「倒産件数が歴史的な低水準」という不自然
帝国データバンクが調査した2021年度の企業倒産件数は5916件に減り、半世紀ぶりに6000件割れとなった。コロナ禍の中なのになぜ歴史的な低水準なのか。超低金利や公的な金融支援などが支えたからだ。一見、救済策が成功しているようにも見えるが…。
「銀行融資の審査基準も甘くならざるを得なかった」(霞が関筋)。
こうして、本来淘汰されてしまうはずの力のない企業が存続でき、その影響で、競争力が高い企業の成長が阻害されるという弊害も指摘される。企業の存続支援に力点を置くあまり、世界で勝負できる企業が育ちにくく、日本の衰退を促しているという見立てがある。
■他力本願型のアベノミクスの“失敗” 「金利復活で円安是正し財政規律を取り戻せ」
「アベノミクスは結局、まやかしのようだった」(元金融当局筋)。
アベノミクスに関わった関係者からも、こうした厳しい声が漏れてくる。省みれば、金融緩和は経済の規律を緩め、財政出動は将来の国民に借金を背負わせる、いずれも他力本願型の政策だ。政治的に苦労が伴う肝心な成長戦略は迫力に乏しい内容だった。経済政策とは「現在」と「将来」の両立てで講じなければならない。
「日本経済が長期低迷から脱却できないのは、経済政策が間違ってきたからである。超金融緩和、財政赤字の拡大、円安の三大失政だ」。
中前国際経済研究所の中前忠代表は去年11月、日経新聞のコラムでこう批判した。中前氏は、この3つの政策を逆方向にするべきだと提案する。特に金利の復活で円安傾向を是正し、財政規律を取り戻すことが重要だと指摘する。
「ゼロ金利からの脱却によってはじめて市場経済の規律が働き、産業間、企業間の新陳代謝が復活し、生産性が上昇してくる。ゼロ金利と量的緩和で財政規律を失ったままでは、日本経済の窮乏化は、世界経済の減速の下で一段と進まざるをえないだろう」。
■「政治が幼稚になっている」 日銀は政府の子会社なのか
以下は去年7月、アベノミクスを推進した安倍晋三元総理大臣が新潟県で講演した際の発言だ。
「子どもたちの世代にツケを回すなという批判がずっと安倍政権の時にあった。でも必ずしもこの批判は正しくはないんです。特にコロナ対策においては、政府・日本銀行が連合軍でやっていますから、政府が発行する国債は日本銀行がほぼ全部買い取ってくれています。みなさん、どうやって日本銀行は政府が出す巨大な国債を買うと思います?どこからお金を借りてくるのか。違います。紙とインクでお札を刷るんです。20円で1万円札ができるんですから。つまり、それは新しいお金が誕生して世の中に出て行きますから。それはデフレ圧力に対抗する力にもなります。同時に円高が進んでいかない力にもなって行くということであります。日本銀行というのは、政府の言ってみれば子会社の関係にあります」。
「政府の子会社発言は暴論に等しい」(シンクタンク幹部)。
その後も繰り返される安倍氏の「日銀は政府の子会社」発言にこうした批判がある。日銀の資本金の55%は政府が出資しているが政府に議決権はない。何より日銀法は金融政策において日銀の政府からの独立性確保を定めている。財政健全化は最重要課題の1つだ。もし財政破綻に向かえば、超インフレ、失業、預金封鎖、増税、円の暴落などが想定され、すべての負担が国民に押し付けられる。
「政治が幼稚になっている」。
中央省庁の幹部が私に漏らした言葉だ。コロナ禍との闘いには財政出動も必要だったろう。ただ、先進国で最悪の日本の財政をめぐる政治家の発言には慎重さが求められるのだ。
■アベノミクス路線の修正か継続か 「MMT」にすがる政治家
「自民党内ではアベノミクス路線修正への反発が広がっている」(永田町関係筋)。
アベノミクス路線をめぐっては現在、修正派と支持派がせめぎあっている。一方、与野党の一部には、大胆な財政出動を前提とした「現代貨幣理論」(MMT)に依存しようと考える議員がいる。MMTを端的に言えば、自国通貨の円を発行できる日本政府は、一定の条件下なら財政赤字を拡大しても基本的に債務不履行にならないという「打ち出の小槌」のような理論だ。未来に責任を負う政治家が軽々に政策に応用していいのだろうか。理論の発祥とされるアメリカでは、サマーズ元財務長官が「重層的な誤りがある」と否定している。
金融緩和や財政出動は、ある意味、政治家に大きな負担がかからない政策手段だ。だが、政治家とは、経済規律という制約の中で、岩盤のような規制や抵抗勢力と必死に闘い、新しい制度を創生するために必死に知恵を生み出すのが本来の姿ではないだろうか。
■金利の正常化は大きな痛みを伴うが…
「金利は簡単に上げられない」(政府関係者)。
政府は円安をけん制する一方で、金利上昇に慎重な点では黒田総裁と同様の姿勢だ。国の借金は1241兆円余に膨れ上がり、未知の領域に入っている。財務省は金利が1%上がると国債費が3.8兆円増えると試算する。国債費が膨らめば財政を圧迫するので、政府が金利上昇に臆病になるのは無理もない。
しかし、人口が減り、経済が縮小し、世界で埋没が進み、将来が見通せない日本は極めて深刻な局面にある。可能性がある人や企業を、まるでICU(集中治療室)のような異様な超低金利にいつまでも閉じ込めておくわけにはいかないのではないだろうか。居心地のいい超低金利になじんでしまった日本が、金利を正常化する道は大きな痛みを伴うだろう。しかし、正常な金利を早期に取り戻すことは事態打開へ避けて通れない一歩だと考える。
金利が付けば利子収入が生まれる。全国の家計の預貯金1000兆円弱に仮に1%の金利が付けば10兆円弱の利子が家計に入り、このうち約20%の税金の約2兆円弱が国・地方に回る。企業への融資に市場に即した金利が付けば、銀行の審査基準も正常化し、競争原理が機能し、強い企業が成長する余地が生じる。世界で勝負できる強い企業が増えれば、新たな関連企業や雇用が生まれる。
■円は20年~30年後に国際通貨から陥落するのか
ロシアがウクライナに侵攻した2月下旬、ある有力エコノミストは「日本は円高に見舞われる」と予想した。有事で安全資産の円が買われると踏んだのだ。しかし、予想ははずれ、侵攻から2カ月で約15円も円安が進んだ。円はもう安全資産と見なされていない可能性が指摘される。
「今のまま日本が0.5%程度の低成長が続き、他国が相対的に高い成長を続けると、20年後とか30年後は、すっかり円が埋没して国際通貨でなくなってしまうかなと思う」。
河野龍太郎氏は5月のセミナーで、将来、財政危機が始まって、円が国際通貨から陥落する可能性をこう警告した。大地震や台湾有事などが立て続けに起これば、もっと早く「陥落する」と見立てる。
「日本がこのままなら、いつか1ドル=300円の時代が来てもおかしくない」(国会議員)。政界からこんな弱気な声も出始めている。
テレビ朝日 岡田豊 経済部デスク、元アメリカ総局長著書『自考 日本人の最後の切り札』(プレジデント社)
米FRB、政策金利0.25ポイント引き上げ、2022年利上げは7回見込み、前回3回見込みから大幅増
(米国)2022年03月17日
米国連邦準備制度理事会(FRB)は3月15、16日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利の現状の誘導目標0.00~0.25%を0.25ポイント引き上げ、0.25~0.50%とすることを決定した(添付資料図参照)。2020年3月から続けてきたゼロ金利政策を解除し、量的緩和策も今月で終了することから(2021年12月17日)、今後は金利の引き上げペースと量的引き締めの実施時期に焦点が移る。なお、今回の決定に関し、9人のFOMC委員の中で、ジェームズ・ブラード委員(セントルイス連邦銀行総裁)は金利引き上げ幅を0.5ポイントとすべきとして、唯一反対票を投じた。
今回の声明文では、ロシアによるウクライナへの侵攻について、米国経済への影響は極めて不透明としながらも、短期的にはロシアの侵攻とそれに関連する(地政学的)出来事がインフレにさらなる上昇圧力をかけ、経済活動を圧迫する可能性があるとして、警戒感を示した。また、今後のFOMCでFRBが保有する資産の削減を始めることを予定しているとして、早期に資産縮小の開始決定を行う可能性を示唆した。
今回の会合では、全地区連銀総裁らを含むFOMC参加者16人による中長期見通しも示された。緊迫化するウクライナ情勢や長期化する高インフレなどを背景に、2022年の実質GDP成長率は2.8%と、前回12月の4.0%から大幅に下方改定された。また、2022年のインフレ率(コアCPE)は4.1%と、前回の2.7%から大きく上方改定されている。他方、FF金利引き上げについて、2022年の利上げ見込み回数に関する委員の中央値は、前回は3回だったが、物価見通しの上方改定などにより、今回は7回となった。2022年のFOMCは残り6回あるが、この見込みどおりに進む場合、今後の会合で毎回利上げが行われる想定となる。また、利上げは2023年以降も引き続き行われる見込みで、2023年のFF金利の中央値は2.8%と、長期均衡金利と見込む2.4%を上回る水準となっている(添付資料表参照)。
ジェローム・パウエルFRB議長は会議後の記者会見で、今後の利上げについて「経済は非常に堅調であり、タイトな労働市場と高インフレを背景に、FOMCはFF金利の目標レンジを継続的に引き上げることが適切と予想する」として次回以降の継続的な利上げを明言するとともに、FRB保有資産の縮小について「早ければ次回5月の会合」で今後の縮小計画を決定する可能性があると述べた。長期化する高インフレについては「ロシアのウクライナ侵攻による原油やそのほかの財の価格上昇は、国内の短期的なインフレにさらに上昇圧力をかけるだろう」とし、「金融政策を適切に行えば、労働市場が堅調な間はインフレ率が2%に戻ると予想している」と述べつつも、「戻るにはこれまでの予想よりも時間がかかるだろう」として、高インフレが長期化する可能性があるとの認識を示した。
エネルギー価格高騰によるコストプッシュ型インフレが進み、景気後退とインフレが同時進行するスタグフレーションも指摘される中、パウエル議長は今後1年の景気後退の可能性を否定し、インフレ抑制を重視して利上げを優先するとともに、資産縮小にも取り組む姿勢を示した。しかし、2015年12月以来のゼロ金利からの利上げになることに加え、FRBの保有資産は新型コロナウイルス感染拡大前(2020年2月)から4兆ドル以上積み上がっていることから、コストプッシュのインフレを抑制しつつ雇用最大化も実現するという難しい政策バランスがFRBに求められている。
(宮野慶太)
米FRB、0.25%利上げ ゼロ金利政策2年ぶり解除決定
毎日新聞 2022/3/17 03:19(最終更新 3/17 09:16) 有料記事 902文字
米連邦準備制度理事会(FRB)本部=米ワシントンで
米連邦準備制度理事会(FRB)は16日、高騰する物価上昇(インフレ)を抑制するため、政策金利の引き上げを決定した。新型コロナウイルス禍からの景気回復を支えるために2020年3月から続けてきたゼロ金利政策を2年ぶりに解除した。利上げは18年12月以来3年3カ月ぶり。同日公表した政策金利見通しでは、22年中にさらに6回の利上げを行う方向性を示し、高インフレが抑制できる水準まで急ピッチで利上げを進める方針を鮮明にした。
金融政策を決定する連邦公開市場委員会(FOMC)で賛成8、反対1の賛成多数で決定した。政策金利を0・25ポイント引き上げて0・25~0・50%とする。パウエル議長は会合後の記者会見で「米経済は非常に強く、労働市場の逼迫(ひっぱく)と高インフレを踏まえると政策金利を継続して引き上げることが適切だ」と述べた。
(いまさら聞けない)米国の利上げって何?どんな影響がある? 2014/08/25
最近ニュースで米国の利上げの話を聞かれたことがあるかもしれないが、そもそも投資に縁遠い方には何のこと?と思われるかもしれないし、投資をしている方の中にもどんな影響があるのか整理できていない方もいるかもしれない。今回は米国の利上げによってどんなことが起こりうるのかまとめてみた。
まず、そもそも利上げとは何か、というと米国の中央銀行(FRBという)が政策金利を上げることだ。なんだそれだけのことかと思われるかもしれないが、これが経済、さらには私たちの生活に与える影響が大きいのだ。利上げ決定の前後で次のことが起こるだろう。
■株価が下がる?
金利が上がると株価が下がる、これは投資の定石だ。多くの企業は銀行から資金を借りて事業を行うが金利が上がると返済額が増えるので利上げは業績悪化につながると考えられるためだ。米国企業の業績悪化は取引のある世界の企業に影響するため、米国の株安は世界の株安に連鎖すると考えられる。確定拠出年金を導入している企業にお勤めの方で、何らかの形で株式を保有されている方は保有資産を見直してはいかがだろう。
■円安米ドル高になる?
お金を銀行に預けるなら高い金利がつく方が良いと思われるように、米国の金利が上がると米ドルが買われるので円安米ドル高になる。円安は日本の輸出企業には追い風だが、海外旅行には行きにくくなる。また、原発の稼動停止により化石燃料の輸入が増えているが、円安は輸入価格を上昇させるため電気料金の値上げがあるかもしれない。ガソリンやその他輸入品も上昇するかもしれない。最近の為替相場は利上げを織り込みつつあり、すでに円安が進んでいる。
■米国の債券が下落する?
米国の債券に直接投資をされている方が満期まで保有する場合は影響ないが、投資信託などで間接的に債券投資をされている場合は注意した方が良い。金利が上がると債券の評価額は下がるからだ。株安でも債券なら安心とはいかないかもしれない。
■新興国の株式、債券が下落する?
米国の中央銀行がこれまで金利を低くしていたのは企業などが資金を借りやすくするためで、世の中にお金をたくさん行き渡らせ景気を良くし、雇用を支えるのが目的だった。米国からあふれたお金は新興国に流れ込み、新興国の株式や債券は買われて米国だけでなく新興国の景気も支えてきた。利上げはこの流れに逆行することになる。新興国に投資する投資信託にも注意が必要だ。
少なくとも以上のことが考えられるのにも関わらずなぜ利上げするのか?と思われるかもしれない。米国の中央銀行が一番恐れているのは物価の上昇、つまりインフレ。お金がたくさん出回るということはお金の価値を下げることになるのでインフレにつながるのだ。インフレは人々の生活を苦しめ、社会不安を引き起こすなど悪影響を起こすと考えられる。米国の中央銀行(FRB)は様々な影響を考えながら慎重な舵取りを求められているのだ。
為替週間見通し:下げ渋りか、米国金利の先高観を背景とするドル買いは継続へ
投稿:2022/05/14 14:37【今週の概況】
■米国経済の減速懸念で円売り縮小
今週のドル・円は反落。米国金利の先高観を背景に週初に131円35銭までドル高円安が進行し、ドルは年初来高値を更新したが、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策引き締めによって米国経済が急激に減速するとの見方や世界経済の成長鈍化などを巡る懸念が強まり、5月12日の欧米市場で127円52銭までドル安円高に振れる場面があった。米長期金利の低下や米国株式の下落もドル売り材料となった。しかし、13日の東京市場で国内の輸入企業によるドル需要が強まったことや、米国の主要株価指数先物が時間外取引で上昇し、日経平均も高く推移したことから、リスク回避の円買いは縮小。ドル・円は129円台前半まで戻した。
13日のニューヨーク外為市場でドル・円は、一時128円84銭まで下げたが、129円台半ば近辺まで反発した。この日発表された5月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値は、市場予想を下回ったことから、ドル売りが一時優勢となった。ただ、議会上院で再任が承認されたパウエルFRB議長は6月と7月開催の連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で50ベーシスポイントの利上げを支持していること、米国株式が持ち直したことから、リスク回避のドル売り・円買いは縮小し、ドル・円は129円26銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:127円52銭−131円35銭。
【来週の見通し】
■下げ渋りか、米国金利の先高観を背景とするドル買いは継続へ
来週のドル・円は下げ渋りか。米連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利の引き上げを通じて金融正常化を推進していくことから、ドル買いは継続するとみられる。日本銀行は現行の金融緩和策を長期間維持する可能性が高いこともドル買い材料となる。5月11日に発表された米4月消費者物価コア指数(CPI)は前年比+6.2%と上昇率は3月実績を下回ったが、高インフレが続いていることが確認された。今月3-4日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合でインフレ抑制に向け、一段の金融正常化(政策金利の引き上げ)を推進する方針を打ち出している。そのため、来週発表される5月NY連銀製造業景況指数、4月小売売上高などの経済指標が市場予想を上回った場合、金融引き締めの継続を織り込む形で長期金利は底堅く推移し、ドル買い・円売りの取引が優勢となる展開が予想される。
一方、20日発表の日本の4月消費者物価コア指数は、携帯電話の値下げ効果がはく落するため、日本銀行が目標としてきた前年比+2%前後の物価上昇が予想されている。ただ、日銀は現行の金融緩和策を維持するスタンスを変えておらず、長期金利の上昇を抑制する方針を堅持していることから、日本の物価上昇を意識したドル売り・円買いが広がる可能性は低いとみられる。
【米・4月小売売上高】(17日発表予定)
17日発表の米4月小売売上高は前月比+1.0%と、3月実績の+0.7%を上回る見通し。個人消費が好調を持続できれば、持続的な景気回復を期待した株高につながり、リスク回避的な円買いは抑制されそうだ。
【日・4月消費者物価コア指数】(20日発表予定)
20日発表の日本の4月消費者物価指数(コア指数)は、携帯電話の値下げ効果が薄れ、前年比+2%程度の物価上昇が予想されている。ただし、日銀は現行の金融緩和策を堅持する姿勢を変えていないため、ドル売り・円買いが強まる可能性は低いとみられる。予想レンジ127円80銭−130円80銭。
利上げすると為替はどうなる? 米国の利上げとドル円の関係をわかりやすく解説
最終更新 2022/3/1 16:00
【QUICK Money World 荒木 朋】先進国で金融緩和を縮小する動きが強まっています。新型コロナウイルス禍からの景気の持ち直しやインフレ率の上昇加速を受け、大規模な金融緩和政策を終了するとともに利上げに踏み切る国も出てきました。世界最大の経済大国である米国は、今年3月にも利上げを決定すると予想されています。そもそも利上げとは何か?という基本的なことから各国が利上げに動く理由、利上げと為替の関係などについて詳しくみていきたいと思います。
利上げとは? 景気・インフレ過熱を抑制する金融政策手段
「利上げ」とは、米連邦準備理事会(FRB)や日本銀行など各国の中央銀行が政策金利を引き上げることを指します。政策金利は景気や物価、金融システムの安定を図るため中央銀行が金融政策の手段として設定する短期金利のことです。政策金利を上げ下げすることで、民間金融機関の貸出金利や預金金利などに影響を及ぼし、ひいては企業の設備投資や個人消費といった実体経済にも波及することを狙うものです。
政策金利の引き上げ(=利上げ)は、景気が過熱気味だったり、物価が継続的に上昇するインフレーション(インフレ)加速への懸念が強まったりした場合に、それを抑制することを目的に実施されます。具体的な波及経路を見てみましょう。利上げを行うと、一般的に民間金融機関の貸出金利や預金金利といった市場金利が上昇するため、企業は設備投資を控えるようになったり、個人は貯蓄に回すなどしたりして消費を抑制するようになります。その結果、景気全体の過熱を抑える効果が期待できるようになるというわけです。
反対に景気が悪化したり、物価が継続的に下落するデフレーション(デフレ)に陥ったりした時などには、景気を支える目的で中央銀行は利下げに動きます。
過去の各国中央銀行の金融政策のパターンを振り返ると、利上げは景気が抑制され過ぎるのを考慮して慎重かつ段階的に実施されることが多く、反対に利下げする場合には景気浮揚を狙って短期間の間で大胆な措置を講じる傾向があると言われています。
米国は3月に利上げ実施の公算
現在、金融市場で最も注目されているのが、世界最大の経済大国である米国の金融政策の行方です。2020年3月の新型コロナウイルス禍において、FRBは利下げと量的金融緩和を伴う大規模な金融緩和を矢継ぎ早に実施しました。その後、景気は順調に回復し、21年11月には量的金融緩和の縮小に着手。その量的緩和は22年3月に終了する予定です。そして、3月15~16日に開催される米国の金融政策決定会合である米連邦公開市場委員会(FOMC)では、2018年12月以来となる利上げが決定されるとみられています。
FRBにとってやっかいなのは、景気の過熱というよりも、想定以上にインフレ率の上昇が加速している点です。インフレ状況を把握する上で多くの国で一般的に採用されている経済指標の1つに消費者物価指数(CPI)がありますが、2月に発表された1月の米国のCPIは前年同月比7.5%上昇と前の月(7.0%)から伸びが加速し、1982年2月以来、約40年ぶりの高い伸び率を記録しました。※米国のCPI(前年同月比、%)
先ほど過去の金融政策のパターンで、利上げ局面では慎重かつ段階的に実施されることが多いと述べました。実際、過去の直近2度の米利上げ局面(2004年6月~06年6月と15年12月~18年12月)を振り返ると、金融政策会合ごとの利上げ幅は0.25%で、景気や物価動向を見極めながら段階的に実施されていました。
もっとも、今回の利上げ局面ではインフレ加速を鎮静化させるため、3月の金融政策会合で0.50%の利上げもあり得るとの見方も浮上しているのです。現在のインフレ加速は需要拡大というよりも製品や人材不足などによる供給制約の影響が大きいとも言われています。仮に景気の足腰が盤石ではない状態で大胆な利上げが実施されることになれば、米景気を冷やしかねないと懸念する声も出ています。
米国の利上げは為替のみならず世界の株式市場や他国の金利、さらには原油や金といった商品市況にも影響を与えます。今回の利上げの狙いは景気の過熱感や金融資産のバブル的な兆候に対する先手と言うより、過度な物価上昇を抑制し景気の大幅な落ち込みを避けることにあります。長きにわたって先進国の物価上昇は緩やかなペースでした。日本にいたってはマイナスに沈んでいくデフレ経済です。これらが一気に反転したことで世界のあらゆる金融市場に動揺が走り、経済指標や中央銀行や政治家と言った要人発言に一喜一憂する展開が続いています。価格変動が大きく先行きの見極めも難しい状況です。
QUICK Money Worldでは日々のマーケットの変化を専門記者・ライターが伝えています。以下のリンク先では利上げに絡んだ「為替・金利」に関する記事を一覧にしています。マーケット情報の収集と知見の獲得にぜひご活用ください(一部は会員限定コンテンツとなっています)
利上げと為替の関係は?
次に利上げと為替の関係を考えてみましょう。
為替レートは2つの通貨の交換比率なので、基本的には2国間の相対的な力関係・需要と供給のバランスによって決まります。為替レートを左右する力関係・需給バランスの変動要因として、2国間の景気動向や物価動向、金利動向などが挙げられます。
先に、景気が過熱したり、インフレが加速したりする場合に利上げが実施されると紹介しましたが、為替の変動要因となる景気・物価・金利の各動向は利上げと密接に関係しているので、それぞれ1つずつ整理していきましょう。今回は米国(ドル)と日本(円)の関係をみていきます。なお、米国では利上げが見込まれる一方、日本はゼロ金利政策が当面続くと予想されています。
まずは景気です。利上げを実施するということは景気が力強い回復を見せている証左といえます。米経済の成長力が日本経済に比べて相対的に強いとなれば、ドル建て資産に対する需要が拡大し、ドルの価値が上がります。その結果、ドル円相場は円安・ドル高(円売り・ドル買い)に振れやすくなるという流れです。
次に金利です。米国が利上げを実施すれば、米金利は上昇圧力が高まりやすくなります。一般的な感覚でも、例えば金利が1%の金融商品と3%の金融商品がある場合、誰もが3%の金利が付く金融商品の方を購入したい気持ちになるでしょう。それと同じく、資金は金利の低いところから高いところへ流れるのが基本です。米金利が上昇すればドル資産への人気が高まり、為替市場では円安・ドル高の圧力が強まることになります。自国通貨を売ってドルを買い、金利の付く金融商品、例えば米国債などへの投資といった流れが考えられます。
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最後に物価(インフレ)と為替の関係です。インフレは、1個100円だったモノが200円に値上がりするような現象で、この例では以前より2倍のお金を支払わないとモノが買えなくなる状態です。お金(通貨)の側面では価値が2分の1になっていることを意味します。インフレ加速が懸念される米国では、物価の観点ではドルの価値が下がることを意味し、教科書的にはドル安材料の1つと言えます。
このようにみていくと、利上げに動くことはその国の通貨高を誘う要因が相対的に多くなり、ドル円相場では相対的に円安・ドル高への圧力が強まりそうにもみえます。しかし、今回の米利上げは供給制約も一因と言われるインフレの退治に向けた利上げの側面の強さも見え隠れします。拙速な利上げが米景気に悪影響を及ぼすようだと、「利上げ=通貨高」という教科書的なシナリオが簡単には進まない展開も想定されそうです。
過去の米利上げ局面、ドル円相場どうなった?
最後に、過去の直近2度の米利上げ局面(2004年6月~06年6月と15年12月~18年12月)におけるドル円相場はどうなったのか見ておきましょう。
2004年6月~06年6月の利上げ局面では、04年6月に米政策金利が1.00%から1.25%に引き上げられた後、06年6月に5.25%まで利上げが実施されました。2年間の金融引き締め局面で利上げ幅は合計4.25%に達しました。
この期間のドル円相場(月末終値ベース)は2004年6月の1ドル=108円台から一時は102円台まで円高・ドル安が進みましたが、その後は緩やかにドル買いが優勢となり、05年11月には120円近辺まで円安・ドル高が進む場面もありました。利上げが打ち止めとなった06年6月は114円台でした。この期間は一般的な為替のセオリーとされる「利上げ=通貨高」の関係が成り立ったと言えます。
一方、2015年12月~18年12月の利上げ局面では、15年12月に0.25%から0.50%に利上げが実施された後、18年12月にかけて米政策金利は2.50%まで引き上げられました。3年間の利上げ局面で利上げ幅は合計2.25%となり、04年6月~06年6月の2年間の利上げ幅(4.25%)に比べると緩やかな利上げが実施されたことが分かります。
この期間(15年12月~18年12月)のドル円相場(月末終値ベース)は、1ドル=120円台から円高・ドル安が進行し16年には100円前後まで円高が進む場面もありました。利上げを停止した時点でも109円台で開始時点よりも円高水準になりました。
同期間は米利上げ開始後、16年初めに世界的な景気減速が意識されました。また、16年6月に英国民投票で英国の欧州連合(EU)離脱(=ブレグジット)が決まったほか、17年には米国でトランプ大統領が就任し、米中貿易摩擦が勃発するなど複数の政治リスクも顕在化し、米利上げが景気下押しにつながりかねないとの警戒感が円高・ドル安を招いた一因とみられています。
今回は「利上げ=通貨高」になるか?
利上げは、基本的には景気の強さを示し、金利面での投資魅力拡大につながりやすくなるため、一般的に為替市場では「利上げ=通貨高」のシナリオが意識されやすくなります。ドル円相場では円安・ドル高が進みやすいと言えます。
しかし、今回は景気拡大の持続性に一抹の不安もある中で、インフレ退治を理由に大胆な米利上げが実施されるようだと、米景気への先行き懸念が台頭する可能性も否定できず、それがドル円相場の波乱要因になるかもしれません。米利上げの幅やペースがどのように進むかが、為替(ドル円)相場の行方を決定付けるポイントの1つになりそうです。
参考文献・参考資料
円が国際通貨でなくなる日 続く「悪い円安」 金利を“封印”した日本の凋落 (msn.com)
米FRB、政策金利0.25ポイント引き上げ、2022年利上げは7回見込み、前回3回見込みから大幅増(米国) | ビジネス短信 - ジェトロ (jetro.go.jp)
米FRB、0.25%利上げ ゼロ金利政策2年ぶり解除決定 | 毎日新聞 (mainichi.jp)
(いまさら聞けない)米国の利上げって何?どんな影響がある? (ewarrant.co.jp)
為替週間見通し:下げ渋りか、米国金利の先高観を背景とするドル買いは継続へ 投稿日時: 2022/05/14 14:37[フィスコ] - みんかぶ(旧みんなの株式) (minkabu.jp)
利上げすると為替はどうなる? 米国の利上げとドル円の関係をわかりやすく解説 - 経済・ビジネス|QUICK Money World -
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