やさしい法律講座ⅴ70「刑法の名誉棄損と公職選挙法」
テレビ報道やSNSで世間を騒がせている兵庫県知事の名誉棄損が告訴されるとの報道記事がある。百条委員会の内容開示によって事実と論争が明確になることであろう。
今回はそのような混乱の報道記事を紹介する。
皇紀2684年11月24日
さいたま市桜区
法律研究者 田村 司
刑法の条文を確認してみよう。
以前のブログもご参考にしてください。
やさしい法律講座V60「挙証責任は原告だ!」|tsukasa_tamura
やさしい法律講座ⅴ36 副題 構成要件該当性|tsukasa_tamura
やさしい法律講座ⅴ35 副題 名誉毀損と侮辱及び決闘|tsukasa_tamura
第三十四章 名誉に対する罪
(名誉毀き損)
第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
(公共の利害に関する場合の特例)
第二百三十条の二前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
2前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
3前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
まず、刑法の構成要件が必要
一定の法律効果を発生させる前提と考えられるものであり、民法でいうところの「成立要件」のことを指すものである。これに対応する意味で用いれば、刑罰法規が類型化した一定の犯罪行為の型のことをいう。
つまり、ある行為が刑法の予定している犯罪の型(犯罪類型)に当たることを、「構成要件該当性」と呼ぶのである。
「構成要件該当性」の判断に当たっては、一方で、①保護法益、②犯罪主体、③犯罪客体、④行為の特色を明らかにし、他方で、事例の中から法律上の要件にあたる要素を取り出す作業を行いその上で両者が符合する(よく合致する)かを吟味するのである。因果関係・共犯など。
その次に違法性(正当防衛、医療行為、安楽死)、有責性(心神喪失を検討する。
違法性について
正当防衛(刑36条)正当行為(刑35条)緊急避難(刑37条)犯罪の意思なし(刑38条故意)として、違法性が阻却(→しりぞけられること)され、犯罪とはならない。このような違法性阻却事由の有無を検討することになる。
(正当行為)
第35条 法令又は正当な業務による行為は、罰しない。
(正当防衛)
第36条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
2 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
(緊急避難)
第37条 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
2 前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。
(故意)
第38条 罪を犯す意思がない行為は、罰しない。
有責性について
構成要件に該当(犯罪類型に条文該当)し、違法性をそなえている行為であっても責任を負わせることができるかの有責性の考慮が必要である。それには、年齢的なもの(刑41条責任年齢14歳)と規範的な判断・制御能力(刑39条心神喪失)がある。これらの事情があれば、有責性が阻却される。
(責任年齢)
第41条 十四歳に満たない者の行為は、罰しない。
(心神喪失及び心神耗弱)
第39条 心神喪失者の行為は、罰しない。
2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。
結論:「犯罪の成立」
このように、犯罪が、構成要件に該当し、違法、有責などの条件がそろったときに、「犯罪の成立」と表現しているようである。
民事訴訟では実体法を基準に自己に有利な効果を発生させることを主張している者が原則として証明責任を負う。
刑事訴訟では「疑わしきは被告人の利益に」という法原則に基づき原則として検察官が証明責任を負う。
つまり、相手を訴えた原告が証明しなければならないという原則。訴える原告ではなく、訴えられた被告が証拠を出す道理がおかしい。それができたら嘘の訴訟がまかり通ることになる。常識で考えても訴える者が証拠を揃えて訴えることが本筋である。
翻って、本案の犯罪が、構成要件に該当し、違法、有責などの条件がそろって「犯罪の成立」しているかである。
そこで、報道記事を読むに当たって構成要件に該当し、違法、有責などの条件を確認してみて欲しい。
兵庫百条委員長、立花孝志氏を名誉毀損容疑で告訴「虚偽情報を投稿」
朝日新聞社 によるストーリー
兵庫県の斎藤元彦知事らが内部告発された文書の真偽を調べている県議会調査特別委員会(百条委員会)で委員長を務める奥谷謙一県議は、自身に関する虚偽情報をX(旧ツイッター)に投稿したなどとして、知事選に立候補していた「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏を名誉毀損(きそん)容疑で刑事告訴し、22日に県警に受理されたと発表した。
奥谷氏側によると、立花氏は選挙期間中にX上で「悪人で、うそをついたりマスコミに圧力をかけたりした」という趣旨の虚偽の投稿をするなどし、奥谷氏の名誉を毀損したとしている。
立花氏は22日の記者会見で、「奥谷さんは、私がデマを吹聴していると会見でおっしゃられたので、来週中には提訴する」と述べた。(添田樹紀)
「虚偽通報でXアカウント凍結された」稲村氏側が告訴状 兵庫知事選
島脇健史2024年11月22日 21時09分
兵庫県知事選に立候補して落選した稲村和美氏の後援会は22日、公式のX(旧ツイッター)アカウントが選挙期間中、選挙活動の妨害を目的とした虚偽の通報で2度にわたり凍結された疑いがあるとして、県警に被疑者不詳で偽計業務妨害容疑で告訴状を提出した。
後援会「ともにつくる兵庫みらいの会」共同世話人の津久井進弁護士が同日、県庁で会見し、発表した。後援会のXアカウントは選挙期間中の5日に運用を始めたが、6日に凍結。急きょ別のアカウントを12日に開設したが、約1時間後に凍結された。Xに解除を申し立てたところ、最初のアカウントは投開票日前日の16日に利用可能になったが、その間の投稿はできなかったという。
津久井氏は「『強烈な身体的脅迫についての報告』といった不正な通報が組織的に行われ、凍結された疑いがある」と話し、「選挙が正しく行われるためには、正しい情報が流通することが大前提。今回の選挙をきちんと検証する必要がある」としている。
また、後援会は22日、被疑者不詳で公職選挙法違反(虚偽事項公表など)の疑いで県警に告発状も提出した。選挙期間中にX上で「外国人参政権を進めている」など事実と異なる投稿が、稲村氏が9日に公式ウェブサイトで否定した後も、稲村氏を当選させない目的で行われた疑いがある、などとしている。(島脇健史)
「出てこい」県議宅前で演説、SNS中傷で辞職も 兵庫知事選で何が
2024年11月21日 18時00分
兵庫県知事選では、告発文書問題を調査している県議会の調査特別委員会(百条委員会)のメンバーに対する恫喝(どうかつ)めいた演説や、名指ししたSNSによる中傷も相次いだ。SNS投稿は、議員辞職の「引き金」になった可能性もある。現場では何が起きていたのか。
「出てこい奥谷」
「あまり脅しても自死されたら困るので、これくらいにしておく」
告示後の11月上旬、百条委員会の奥谷謙一委員長の自宅兼事務所前で、「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏が拡声機を使って街頭演説を繰り広げた。大勢の人が集まって笑い声を上げる様子も含めて、演説の動画はSNSなどを通じて拡散された。
百条委は6月、元西播磨県民局長(7月に死亡)が斎藤元彦知事のパワハラの疑いなどを匿名で内部告発した内容について、真偽や経緯を調べるために設置された。
奥谷氏は家族を避難させたとし、「すごい怖い思いをした」と話す。立花氏を名誉毀損(きそん)容疑などで刑事告訴することも検討しているという。
元県民局長の公用パソコンの中にある私的な文書を見て知っていて、マスコミに圧力をかけて隠蔽(いんぺい)しようとした▽公益通報の結果を県が発表しようとしていたが、それを遅らせた――などの投稿が、SNS上の複数のアカウントから拡散していた。奥谷氏はいずれも「デマだ」と説明したうえで、「SNSを通じてデマが広がっていくことは本当に怖い」と話す。
一方、立花氏は奥谷氏の自宅前での行為を自身のユーチューブで「選挙演説をしただけ。彼が『立花に脅されて、母親が困ってる』と記者会見の場で言ったのは名誉毀損」と主張している。
放送法も公選法も「選挙報道を抑制せよ」なんて言っていない、新聞・テレビの創意工夫に欠ける姿勢こそ深刻な課題だ
西田 亮介 によるストーリー
(西田 亮介:日本大学危機管理学部教授、社会学者)
>>「新聞・テレビはなぜ「役に立たない」と見なされるのか?選挙期間中にこそ高まる政治への関心、なのに報道は抑制的に」から続く
「政治的公平性」定めた放送法は改正が必要か?
改めて、選挙報道はどうあるべきなのか。来年も参院選や東京都知事選などが控えている。
「放送法を見直すべきだ」という声が根強いようだが、筆者の考えでは放送法、おそらくは政治的公平性を定めた第4条の見直し(削除)は却って悪手だ。
(国内放送等の放送番組の編集等)
第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。(放送法第4条より引用)
アメリカは1987年に日本の放送法第4条と似た公正原則を撤廃した。現在のようなそれぞれ党派性を強く帯び、相互参照されることの少ないメディア状況になってしまった。同じ途を歩んでしまいかねない。
むしろ運用の改善、とくに報道表現の試行錯誤と創意工夫活発化と公職選挙法の再検討が重要ではないか。
現行法でも「報道を抑制せよ」と述べられていない
前者に関して、筆者は長く情報の「整理、分析、啓蒙(解説)」を核とした「機能のジャーナリズム」の重要性を説いてきたが、これはシンプルに政治の情報発信の高度化に対して、報道も同程度に高度化すべきだというメッセージである。
政治家はいつも嘘をつく。もう少しマイルドにいえば、政治家と政党は自分たちの立場と利益を念頭に置いた発言や主張を行うから、生活者目線での読み解きが必要だというもので、これはSNSや動画が主流になる時代でも同様のままである。
より具体的にいえば、通常時の報道を選挙運動期間中も、既存媒体とネットで提供すべきというのが筆者の認識だ。
そもそも放送法も、公選法も選挙運動期間中に、報道を抑制せよということを述べていない。それどころか、報道や評論の自由を強調してさえいる。
(新聞紙、雑誌の報道及び評論等の自由)
第百四十八条 この法律に定めるところの選挙運動の制限に関する規定(第百三十八条の三の規定を除く。)は、新聞紙(これに類する通信類を含む。以下同じ。)又は雑誌が、選挙に関し、報道及び評論を掲載するの自由を妨げるものではない。但し、虚偽の事項を記載し又は事実を歪曲して記載する等表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない。
(選挙放送の番組編集の自由)
第百五十一条の三 この法律に定めるところの選挙運動の制限に関する規定(第百三十八条の三の規定を除く。)は、日本放送協会又は基幹放送事業者が行なう選挙に関する報道又は評論について放送法の規定に従い放送番組を編集する自由を妨げるものではない。ただし、虚偽の事項を放送し又は事実をゆがめて放送する等表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない。
(それぞれ「公職選挙法」から引用)
日本新聞協会もかつてはこうした報道や評論の自由の重要性を確認する声明を出している。
◎日本新聞協会「公職選挙法第148条に関する日本新聞協会編集委員会の統一見解(要旨)」
現在の放送事業者や新聞社はデジタル化の遅れと経営課題からこうした問題を正面から真剣に考えていないように見える。
果たして、本当に我々が見慣れたテレビの選挙報道表現でなければならないのだろうか。新聞紙面の表現でなければならないのだろうか。ニュースバリューは変化していないだろうか。
それらをろくに考慮せず、報道表現の試行錯誤や創意工夫がほとんど行われていないことこそが第一の深刻な課題といえる。
付記すれば、放送法と公選法のマスメディアに関する「規制」は影響力を念頭に置かれたものである。かつてより影響力が低下することを念頭に置くなら、許容される表現のあり方も変化するものと考えるのが妥当ではないか。
ファクトチェックへの恒常的取り組みが望まれる
第2に公選法と取締の運用上の課題でいえば、選挙の自由妨害や虚偽事項の公表に関する規制のあり方や運用に改善の余地があるようにも思われる。
(選挙の自由妨害罪)
第二百二十五条 選挙に関し、次の各号に掲げる行為をした者は、四年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。
一 選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者又は当選人に対し暴行若しくは威力を加え又はこれをかどわかしたとき。
二 交通若しくは集会の便を妨げ、演説を妨害し、又は文書図画を毀棄し、その他偽計詐術等不正の方法をもつて選挙の自由を妨害したとき。
三 選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者若しくは当選人又はその関係のある社寺、学校、会社、組合、市町村等に対する用水、小作、債権、寄附その他特殊の利害関係を利用して選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者又は当選人を威迫したとき。
(虚偽事項の公表罪)
第二百三十五条 当選を得又は得させる目的をもつて公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者の身分、職業若しくは経歴、その者の政党その他の団体への所属、その者に係る候補者届出政党の候補者の届出、その者に係る参議院名簿届出政党等の届出又はその者に対する人若しくは政党その他の団体の推薦若しくは支持に関し虚偽の事項を公にした者は、二年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する。
2 当選を得させない目的をもつて公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者に関し虚偽の事項を公にし、又は事実をゆがめて公にした者は、四年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。
(いずれも公選法より引用)
東京15区補選の選挙妨害事件を巡る訴訟や今後の判決なども踏まえて、よく検討されるべきだ。いずれにしても政治活動が表現の自由のひとつの象徴と捉えるべきであれば、安易な規制ありきではなく、報道表現の改善による対抗が望まれる。
もちろん懸案事項は少なくない。『令和5年版 情報通信白書』などによれば、日本ではファクトチェック概念は十分普及しておらず、ベンチマークとなる各国と比べても認知されてすらいない。
NHKを除くと、既存メディア各社はファクトチェックへの関心が乏しいこともわかっている。
ファクトチェックに取り組む、新興事業者の体制は脆弱でヒューマンリソースは不足し、影響力も信頼性も乏しいだけに、日本では既存メディアの恒常的取り組みが望まれる(だが、事業者団体はファクトチェックそれ自体に懐疑的である)。
「わからない」状態に留まることは難しく、「真実」の所在はよくわからない。選挙では確定的な「新事実」は明らかになっておらず、司法はなんら新しい判断を下しておらず、百条委員会もやはり止まっていたという事実だけがある。
他国ではメディア不信と分断が深刻化している
来夏の大型選挙のみならず、今後の選挙ではますます政治家や候補者らの発信と組織化は高度化するだろう。報道はどうか。
いち早く、刷新を表明したのはNHKだ。
◎NHK「選挙報道の在り方検討」 兵庫知事選受け稲葉会長 | 2024/11/20 - 共同通信
いささか心許ない。
なぜ民放は、新聞は、このような見直しを行わないのか。もちろん番組単位では放送の公平性について説明するような番組も登場している。
しかし、局として見直しを発表したような社は管見の限り、このタイミングでNHKのほかにはほぼ見当たらない。
業界関係者は二言目には「受信料収入に支えられたNHKはずるい」という。前回述べたように、誰のせいでもないだろう。人手は足りず、制作費も減少するばかりなのだから。
かくして、デジタル化や紙面刷新の「検討」ばかりが行われ続けてきたのがマスメディアの現状ではないか。
マスメディアよりもネットメディアが主流になった他国では軒並みメディア不信と分断が深刻化している。
筆者の持論は、「情報のシビル・ミニマム」の議論を開始し、補助金やNHK受信料の一部等を原資に、通信のユニバーサルサービス制度のようにある水準を満たすメディアに幅広く補助する仕組みの構築である。
だが、実際は新聞を実質的に規制する法律や所掌する省庁はなく、「触らぬ神に祟りなし」とばかりにテレビはさておくとして新聞の衰退は放置されている。
テレビには電波独占の歴史があり、新聞は軽減税率の対象になっている。公共性への寄与が暗黙の了解になっているはずだが、国民が信頼性を「体感」できなくなると「特権」への合意形成もますます難しくなるだろう。
現状、既に顕在化しているようにも思われる。メディア自身が絶えず、報道を総合的に見直し、公共性への貢献、場合によっては支援含めて、社会に訴えるべきだ。
ただし、前々回も述べたように、世界を見渡しても成功例は乏しい。
◎西田亮介「第5章 デジタルコミュニティと情報流通情報空間のトラスト(信頼)をどう保つのか」『デジタル政策の論点2024 デジタルガバナンスの未来』
繰り返しておこう。「日本のメディアは、世界と同じ途を辿らない、容易ではない選択ができるだろうか」と。
斎藤知事陣営、SNS上の“公選法違反”に政治ジャーナリスト「PR会社の内容が真実なら問題」
日刊スポーツ新聞社 によるストーリー
元日本テレビ政治部記者で政治ジャーナリストの青山和弘氏、元財務省官僚で経済学者の高橋洋一氏が23日、ABCテレビ「教えて!ニュースライブ 正義のミカタ」(土曜午前9時30分=関西ローカル)に出演。番組では兵庫県知事選で再選した斎藤元彦知事(47)を取り上げた。
斎藤氏の選挙活動を巡り、交流サイト(SNS)の広報戦略を担当したとする兵庫県西宮市のPR会社のインターネット記事を巡り、SNS上で斎藤陣営に対し公職選挙法違反の疑いがあると指摘されている。
PR会社の経営者がSNSを使った戦略を提案し「広報全般を任された」などとする記事を22日までにインターネットに公開した。
SNSでは「有償で請け負っていれば公選法に違反するのではないか」という投稿が広がっている。
斎藤氏は22日、報道陣の取材に「法に抵触することはしていない」と述べた。 青山氏は「PR会社の記事の内容が真実ならばかなり問題」と指摘した。
「ネット利用の選挙運動にお金を払うと、公職選挙法上の買収に当たる可能性がある。例えば、車上運動員はお金を払ってアルバイトでもいいが、電話作戦でお金を払うと買収になる」と解説した。
公選法では選挙活動で報酬を支払える対象は事務員や車上運動員、手話通訳者などに限定されている。
青山氏は「PR会社の経営者と斎藤知事の関係性とか不確定で分からないが、可能性としては出てくる。今後の展開次第です」と指摘した。
高橋氏は「ポスター制作だけなら問題はなく、要するに最後は金額の問題になると思う。ポスターだけならたぶん、ウン百万だけだろうし、全部の企画をやっていれば何千万ですよね」と解説した。
齋藤元彦「再選」に浮かれていていいのか…いまだ晴れていない告発者処罰で「職権濫用」の疑義
藤井 聡(京都大学大学院工学研究科教授) によるストーリー
• 10 時間 • 読み終わるまで 9 分
問題の発生から再選にいたる経緯
「パワハラ疑惑」で辞任に追い込まれた齋藤元彦氏が、この度の兵庫県知事選挙で再選されました。
現下の民主主義制度を採用している我が国では、この結果は重く受け止めねばなりません。少なくともこれで齋藤氏は「知事」の要職に就くことが決定しました。そしてその事実を受け止め、これからメディア上の論調や有識者達の発言内容が変わってくるものと予期されます。(例えば、コチラ、日刊スポーツ、11月17日「斎藤元彦氏に泉房穂氏が生番組で謝罪『おわびです。かなり厳しいトーンで…』兵庫県知事再選受け」)
ただし、この結果は、あくまでも「知事を誰にするか」を決定するもの。言うまでも無く、「当選者に関わる真実」に関わる諸判断がこの決定によって影響を受けるべきものではありません。
ここでは、その一点について検討をしてみたいと思います。
この度の選挙の構図は「既存マスメディアvsSNS」と言われていますが、その件の「事実的経緯」は以下の様なものです。
(1)兵庫県の一職員から、齋藤知事のパワハラを告発する文書が、兵庫県警、報道機関4社、国会議員1名、県議4名、ならびに県庁内の通報窓口に提出された(3月12日付け)。
(2)齋藤知事サイドは、その告発には「事実無根の内容が多々含まれ」ており、かつ、「嘘八百」を含むものであり、その外部告発行為は公務員として不適切な行為だと断罪し、当該告発者を「告訴」する準備を進めている旨を記者会見で発表(3月27日)。その上で当該職員を特定するための徹底調査を庁内で行い、告発者を特定。それと同時に、当該告発者の処分を検討するために「弁護士を入れた内部調査」を開始した事を公表(4月2日)。
(3)その後、同職員から今度は、兵庫県内の公益通報制度を利用し、庁内の窓口に疑惑を通報(4月4日)。
(4)さらにその後、「弁護士を入れた内部調査」を通して、「告発は核心部分において虚偽であり、告発文書は知事や職員に対する誹謗中傷であり、不正行為」と判断し、告発した職員について「停職3カ月の懲戒処分」を決定(5月7日)
(5)県が実施した調査で、「7人が知事や幹部のパワハラ、6人が知事や幹部への物品供与」を回答で指摘したという結果が公表される。(5月9日)
(6)齋藤氏は、当該告発内容について、「第三者委員会」の設置を表明(5月14日)。またその後、議会が告発内容の真偽を確認する「百条委員会」設置が決定(6月13日)
(7)記者会見で初めて、齋藤氏は告発内容を「全て否定」(6月20日)
(8)告発者が「一死をもって抗議する」「百条委員会は最後までやり通してほしい」という一文が入った陳述書を残し、自殺(7月7日)
(9)齋藤知事は告発内容の一つであった「おねだり」に関連してワインを受け取っていたこと認める(7月19日)。ただしその後、それが「社交辞令の範囲」と釈明(7月24日)
(10)兵庫県議会は、全会一致で、齋藤氏を不信任を決議し、齋藤氏辞職。その後実施された知事選挙で齋藤氏再選(今に至る)。
以上の出典は、こちらの情報を基本にとりまとめたもの。このサイトには、各情報の出典も明記されているのでそちらもあわせて参照してください。
告発者への知事の態度は不適切ではなかったのか
この一連の経緯で、法的に重要なポイントは、かの告発が「公益通報」に該当するか否か、という点です。もし「公益通報」であるなら、「告発者捜し」や「告発者の処分」を行った齋藤知事が「公益通報者保護法の違反者」ということになるのです。これは刑事罰の対象ではありませんが、「知事」としての振る舞いとしては著しく不適切な振る舞いだということになります。
ただし齋藤知事は「告発された側」ですが、その「告発された側」である齋藤知事は、これを「公益通報」ではなく、「斎藤政権にダメージを与え、転覆させるような計画で、選挙で選ばれた知事を地方公務員が排除するのは不正な目的」の文書であると認識する、という立場を取っているようです。そしてその根拠として、片山元副知事は、内部調査の段階で、当該職員のメールに『クーデターを起こす、革命、逃げ切る』というくだりがあったことを挙げています。
しかも、齋藤批判を拡大させた「告発者の自殺」は、告発者の「不倫」の証拠が彼のパソコンに大量に残されており、それが原因なのであって、別に齋藤知事のパワハラが原因なんかじゃ無い、という言説も、選挙期間中、SNSで大いに共有されました。これに加えてこうした情報がSNSでは共有されているのに、既存メディアでは全く報道されていないという点が「炎上」的にネット上で共有され、齋藤知事は『告発者を自殺に追い込んだ悪い為政者だ』という認識から『既存メディアに不当に虐められる被害者だ』という認識へと、ネット世論は変わっていったのでした。
今回の齋藤氏の勝利は、こうした世論の変化に基づくものでした。
告発された権力者が自分の権限で断罪することの意味
しかし、ネット上での上記の言説が真実であろうと無かろうと、それとは無関係に齋藤氏の振る舞いはやはり、「為政者」(Govener:知事)として許されざる振る舞いであったと筆者は考えます(注1)。
なぜなら、今回告発されているのが「齋藤知事」の本人であるにも関わらず、その当の本人の齋藤知事自身が、「第三者」の意見を取り入れず、自分自身の知事としての権限を使って、本人の権限で「当該の告発はフェイクである」と断罪し、懲戒処分にしてしまっているからです。
この問題の本質はここにあります。
すなわち、この告発が仮に「齋藤政権を潰すための意図」に基づくものであったとしても、また、メディアが偏向報道を行い、かつ、その告発に「嘘」が含まれていたのだとしても、その告発の中に何らかの「真実」が含まれている「可能性」がある限りにおいて、その告発を、知事という強大な自らの権限でもって「握りつぶす」かのような振る舞いは「公益通報者保護法」の精神の下、許されないものなのです。
そして、内部告発がなされた時点(上記の(3)の時点)で、その告発の中に何らかの「真実」が含まれている「可能性」があったことは否定しがたい事実なのです。
したがってその齋藤氏の振る舞いは、自らの知事という強大な権力についての「職権濫用」以外の何ものでもない疑義が極めて濃厚なのです。
仮にこの齋藤氏の振る舞い(注2)を正当化するとするなら、断罪する時点で「この告発内容は“全て”虚偽である。したがって、如何なる調査を受けようとも、私は無実であり、この告発内容には一片の真実もないことが、その調査が適正である限りにおいて必ず証明できるのだ」といわねばなりませんでした。
ですが彼は、最初の記者会見の席(上記の(2)の時点)で「虚偽が多い」といったものの「一片の真実も無い」とは断定しなかったのです(注3)。
この一点において、彼の態度は、為政者として許されざるものと判断せざるを得ないのです。
「すべてが虚偽ではない」と自覚していた
しかも、こうした筆者と同様の認識は、上記の段階(2)の「前」の時点で「詳細については調査が必要なので申し上げられない」と発言すべきだと進言していた兵庫県内の人事当局も、そして上記(4)の段階で『公益通報の結果が出るまでは、処分しないほうがいい』と進言した県職員も共有していたことは、その発言内容から明白です。これらはいずれも、県庁内には「告発に真実が含まれる可能性を完全に排除できない」という認識が存在していたことを示しています。(ABCニュース、8月27日「『嘘八百』『事実無根』メモ自作し“パワハラ疑惑”告発文を批判 県人事当局は『調査が必要』との想定問答を事前準備も 斎藤知事『処分の過程は適切という認識』」参照)
さらに言うなら、齋藤氏は、上記の(9)でもってその告発の内容の「一部」が真実であることを認めているわけですから、調査や処分の「前」の段階で、「この告発内容は“全て”虚偽である」とは決して言えないということを齋藤氏自身が自覚していたとすら考えざるを得ないのです。
したがって、今回の件は、齋藤氏は、知事の権限で以て、自らの不適切行為を訴える告発を「完全なる事実無根の嘘の代物」と断罪することは、公益通報制度の理念からして許されざるモノだったのです。
分かり易く言うなら、以上の経緯を冷静に読み解けば、齋藤知事には、「自分にとって都合が悪いものの一部は真実も含まれていた告発を、自らの知事権限でもって『全て虚偽だ』という『嘘』をついて、握りつぶした」という濃密な嫌疑があるわけです。
これこそ、彼が「公益通報者保護法違反」を犯したと疑われるポイントなのです。ちなみにこの法律違反は一般の公務員にも該当しますが、齋藤氏が「知事」であることを考えると、その道義的責任はより思いものという事になります。彼は行政官であるというのみならず(国民の信頼がとりわけ必要な)「政治家」だからです。
この齋藤知事の「違反行為」は、その告発の動機の如何によらず、メディアの報道姿勢の偏向性の有無によらず、明確に存在するものです。
政治家は「李下に冠を正さず」だろう
ちなみに、こうした齋藤氏の違反行為があったのか否かが「行政手続き的」に確定するのは、「百条委員会」の結果が出た後、という事になると考えられます。なぜなら、百条委員会は告発の内容の真偽に加えて、「この告発が公益通報に該当するか否か」を審査する委員会だからです。
これは言い換えるなら、今、齋藤氏は、「公益通報者保護法違反の被疑者」の立場にあるのです。
それにも関わらず、齋藤氏は出直し選挙に出馬し、そして兵庫県民は「公益通報者保護法違反」を犯した齋藤氏を当選させてしまったのです。
そうなると、かの告発が「全て虚偽」であると認定され、齋藤氏が公益通報者保護法違反で「行政的にはシロ」となる可能性が拡大すると危惧されます。とりわけ、県議会は彼らの「保身」のために、おそらくは「グレーなところは多分にあるが、黒とは断定できない」という結論を導く公算が高いでしょう。そうしなければ、齋藤氏を勝たせた世論に「喧嘩」を売ることになるからです。議会にはそれだけの「根性」はない疑義が濃厚です。
しかし、仮にそうであったとしても、齋藤氏に知事の資格はないと、判断すべきである、というのが当方の(控え目に言うところの)個人的見解です。なぜなら、「李下に冠を正さず」「信なくばたたず」とまで言われる政治家としては、仮に司法的に、行政府的に「シロ」であったとしても、それとは別に、「政治家として許されるか否か」という判断は下されねばならないからです。
その視点から考えれば、当方は齋藤氏には知事の資格があると判断することが著しく困難なものとなります。しかし…今回の兵庫県においては、如何なる思考プロセスを経てそういう結論に辿り着いたのかについてはここでは不問に付しますが兎に角、齋藤氏には知事の資格ありと考える有権者が投票者の内の最多を占めたというのが、今回の現実です。
法治国家の人間として当方も無論、この事実は事実として受け止めますが、それでもなお、自らの保身のために公益通報者の保護義務を、知事の権限を使って握りつぶした嫌疑がかけられている齋藤氏の知事再任には大きな疑問を感じている方は未だに多数おられるものと思います。
ついては是非皆様もこの問題を、今一度、正確な事実を辿り、法的精神をご理解いただきながら、じっくりとお考えいただきたいと、心から祈念いたしたいと思います。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(注1)無論だからといって、メディアの偏向報道が許容されるべきでは有りません。とはいえそもそもそれとこれとは別次元の問題なのです。例えばある罪Aを犯した人物がまた別の犯罪Bの被害者であったとしても、その被害を受けたという事実は罪Aを免罪することの根拠にはならないというのと同じ話です。メディアの偏向報道には当方も辟易しており、それはそれでまた別の糾弾論が必要となると考えますが、その件はまた別の機会に論じたいと思います。
(注2)ここに言う齋藤知事の振る舞いとは,本文(1)の外部通報に対する(2)の振る舞い,ならびに,(3)の内部通報に対する(4)の振る舞いの二つです.外部通報と内部通報では法的位置づけが異なるため,この両者の振るまいについてはそれぞれ個別に判断する必要がありますが,ここでとりわけ重大な法的・道義的責任が問われるのが後者の内部通報に対する(4)の振る舞いです.
(注3)彼が言ったのは、「嘘八百を含む」だの「事実無根の内容が多々含まれ(る)」だのといった「一部に嘘がある」という話しであり、「全て嘘だ」とは言っていない。
斎藤知事問題の百条委が混乱「秘密会」映像が突然ブッッ切れる 副知事証言が消され無音→委員長遮り制止→虹色画面に 委員長「尋問不可能」と
デイリースポーツ によるストーリー
兵庫県議会が、斎藤元彦知事の疑惑告発文書問題を審議する文書問題調査特別委員会(百条委員会)が、県知事選への影響に配慮し「秘密会」の形式で非公開で行った10月24日と同25日の映像をネット公開した。
一部で録音音声が流出して問題となっていた。
10月25日の審議では、証人として片山安孝前副知事が出席。疑惑告発があった当時に関する証言で「いま公用パソコンの話を2つしましたけど、3つ目には倫理上問題のあるファイルがありました」と述べた後は、片山氏の発言音声が消え、委員長の奥谷謙一県議が「あの、証言していただかなくて結構でございます」と制した。
片山氏が「これは」「私のほうで証言させていただきます」と続けたが、奥谷委員長が「プライバシー情報ということですよね」「証言していただかなくて結構」と遮り、後方に「切ってください」と言った場面で、映像が突然切れた。
その後、虹色の縦幕画面になった後に、百条委の画面に戻り、奥谷氏が「先ほど、片山氏から不規則な発言がありました。私のほうから制止を求めたんですが、聞かずに証言を続行しようとしました。これ以上、尋問を行うことが不可能であると私のほうで判断したんですが、ご異議ございませんでしょうか」と述べた。
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?