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政治(金融・経済)講座V1015「金融大暴落はどのくらいの確率で起こり得るのか」
今回は、金融機関に約半世紀、勤務した色々な経験で独自解説をする。金融システムは大変もろいのである。何故なら、もともと金融は「信用」で成り立っている形の無いものである。その「信用」の化身が通貨であり、借用書であり、当事者間の「信用」や「信頼」が崩れたら、ひとたまりもなく金融システムは崩れ去るのである。「取り付け騒ぎ」は銀行を「信用」できない結果起こる。その時に中央銀行の対応によっては、健全経営の銀行でも、あっという間に経営に困窮することになる。数学的な確率論ではなく、不安心理が引き起こす心理学の問題でもある。その心理を引き起こす社会情勢が民衆の不安心理を助長させる場合もある。経済における景気は「気」という心理が引き起こすと言われている。経済を数理的に解析した解説書はあるが、心理学から解説した経済学は少ない。インフレは需要供給バランスで決まるがその過程には人間の心理が作用することは歴史が示すところである。これが、経済学者の10年後の経済予想が外れる原因でもある。10年後までの人間の深層心理なんか分かるわけがないのである。
さて、不安心理を醸し出す報道記事が多数でているが、経済学者の経済予想が当たった試しがないので真に受けるのもどうかと思うが、それが大衆の不安心理に作用することで現実化する可能性は否定できない。ではどうすればよいか。明快な回答はないに等しいが、吾輩には秘策がある。それは、手法として、ポートフォリオであろうか。そして、「信用」財産を「現物」財産や「人材」財産へも分散して置くのも対策の一つかもしれない。今回は関連する報道記事を紹介する。
皇紀2683年4月18日
さいたま市桜区
政治研究者 田村 司
【世界大恐慌再び!?】2024年の金融大暴落「グレートリセット」が全世界にリーマン・ショックの10倍のショックをもたらす理由
「2024年末から史上最大規模の新たな金融危機が始まる」と警鐘を鳴らすのは、為替トレーダーとして30年以上、世界経済を見続けている岩永憲治氏だ。NYダウの大暴落が「すでに決まっている」と断言する理由とは。著書『金融暴落! グレートリセットに備えよ』から一部を抜粋、再構成してお届けする。
敏腕トレーダーが占う2023年「米国発世界的株高」→2024年金融大暴落“悪夢のシナリオ”はこちら
リーマン・ショックで終焉とはならなかった米国経済
2024年の秋以降、100年に一度の史上最大にして最後の、米国発バブル崩壊が訪れる。世界はリーマン・ショック時の10倍ものショックに襲われることだろう。
なぜ、2024年に発生するであろう米国発のバブル崩壊が2008年のリーマン・ショック時の10倍のショックを世界にもたらすのか?
答えから先に示すと、NYダウがピークから10分の1程度まで下がる可能性があると考えるからだ。株価が10分の1になるのに、10倍のショックが来ない、あるいは軽微で済むと考えるほうがおかしい。
ただし、仮にそうなる場合にはある程度事前に予測ができるはずだ。今後発生するかもしれないそうしたリスクの回避方法を紹介するのが、本書の目的でもある。
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相場展開は様々なパターンがありうるが、パターンごとに対処方法は異なる。本書では最もインパクトが強く、最もリスクが高いシナリオを想定している。
これから2024年第3四半期近辺に合わせて、NYダウは4万ドル近辺まで上昇、臨界点でトップアウト。そこからは全世界的に100年に一度の怒濤のグレートリセット(社会や経済のシステムの大幅な 見通し・刷新)が始まる。金融界のみならず世界経済の常識が変わるだろう。
その後のNYダウのボトム(底)はバラク・オバマ政権時代のリーマン・ショック後に付けた6500ドルでは止まらず、そこを突き抜けてさらに下がっていくだろう。
次ページの「NYダウの経緯(月足)」を見ていただきたい(図表1-1)。白抜き、黒抜きの一つ一つの細長いラインは、ある期間の値動きのうち4つの価格(始値、高値、安値、終値)を1本の「足」として描いたものだ。その形状がろうそくに似ていることから、ろうそく足と命名されている。
ちなみに、このろうそく足を並べたチャートから相場の流れを分析する方法は日本の江戸時代、堂島の米取引に由来するとも言われている。90年代前半あたりまでは海外のチャート分析では3本足(高値、安値、終値)が主流だったが、いまやろうそく足の知名度は抜群だ。
株式チャートが示す「暴落のサイン」とは
終値が始値より高い、つまり上昇力の強い相場展開を表したものは白い「陽線」、逆に終値が始値より低い、つまり下向きの圧力がかかっているものは黒い「陰線」となる。白・黒の分は「実体(胴体)」と呼ばれ、「実体」部分以外の実体から高値までの細い線は「上ひげ」、安値までの細い線は「下ひげ」と呼ばれる。
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本書P.20−21より、図表1-1 NYダウの経緯(月足)© 集英社オンライン 提供
図表は月足の動きを示したものだが、左上に2016年の2月から示現した「六陽連(月足で6カ月連続高)」の拡大図を入れた。この「六陽連」こそが上昇の相場の合図であり、この時は1万5000ドル台から上伸する合図であった。
少々細かい解説になるが、ろうそく足のなかには「実体」がほとんどなく「上ひげ」とよりひき「下ひげ」だけからなる「寄引同時線」がある。2016年2月は「寄引同時線」のなかでも「トンボ」の名称を持つ独特のろうそく足となっている。
これは月初から価格がどんどん下がっていったものの終わってみれば始値の水準まで終値が戻ってくるという、行って来いで相場が戻ってきた展開を示す。「トンボ」の場合は買い方が優勢、底値圏で出てくると底打ちを示唆するとされ、陽線と同等にカウントできる。
大きなトレンドでは、ここからバブルがスタートし、2022年1月に3万6900ドル台まで上昇後、同年10月に2万8600ドル台まで下落。そこから先は4万ドルを目指して上がっていく可能性があるが、結局はグレートリセットにより、リーマン・ショック後の底値6500ドルでは止まらず、最大 年から 年をかけてもう一段下の4000ドルあたりまで下がっていくというのが私のシナリオである。
よく日本の株式関係者はバブルが崩壊すると「株価は半値八掛け二割引」になると語るが、それよりも強烈な下落が待っているわけである。
NYダウは実はすでに「終わっていた」
なぜNYダウは、そこまで落ちなければいけないのか?
それは、2008年9月のリーマン・ショック発生のときに米国経済もEU経済圏もすでに破綻していたからである。本来であれば、現状のような経済構造を持つ資本主義下での 「最後のバブル」はそこで終了だったのにもかかわらず、各国政策当局は、淘汰されるべき〝ゾンビ企業〞などを残したままマネーを投入することで延命を図ってきた。
FRB(米連邦準備制度理事会)は金融緩和と量的緩和とを駆使し、何とか、ごまかしごまかししつつ経済活動を持ちこたえさせてきた。ごまかしとおせると思っているところで、今度はコロナ禍に見舞われ、さらに米国政府はコロナ対策として国民に対して総額8500億ドル超(1ドル130円換算で110兆円規模)もの現金支給を実施した。
過剰な資金供給を背景に米国経済は活性化したかのように見える。それが本当なのかどうかを今回、マーケットが〝確認〞しにいくということだ。
文/岩永憲治 写真/shutterstock
敏腕トレーダーが占う2023年「米国発世界的株高」→2024年金融大暴落“悪夢のシナリオ”はこちら
金融暴落! グレートリセットに備えよ
岩永 憲治
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もうすぐリーマン・ショック級の金融危機が起きる!?元敏腕トレーダーが近未来の経済危機を予測し、潮目の見方を指南!
リーマン・ショックから15年。コロナ禍やウクライナ戦争で世界の情勢も変わり、それまでのグローバル経済は立ち行かなくなった。最大の問題は世界的なインフレが止まらないこと!世界中にお金があふれ、生産地と消費地の間のいたるところでボトルネックが発生した結果だ。2022年からアメリカは金融を正常化しようとして急速な金利の引き上げを行っているが、その体制下で新たな金融危機が起こる可能性が飛躍的に高まっている。(2023年3月半ばにも、アメリカではIT系の投資に積極的だった3つの銀行が破綻し、米国財務省の即断の政策により金融危機が未然に防がれた。)
そんな予断を許さない情勢のなか【次なる史上最大の金融危機が2024年末前後に起こるであろう】と予測する。既に経済不況に突入したという意見もあるが、リーマン・ショック後の為替変動をいち早く予想した著者は、もう一度バブルの最後の吹き上げが起こり、2024年の大統領選の終わるころには米国経済においては株価が上がって景気も良くなったというユーフォリア状態に陥るという。そして誰もが予測もしなかった状況で反転し、最終的には1929年の大恐慌やリーマン・ショックを超える危機が来ると言う。
その兆候はいつ、どんな形で現れるのか?過去のバブルとその崩壊の歴史を紐解きつつ、トレーダー時代に培った「潮目の読み方」を披露する。自衛隊での訓練経験を持ち、外資系金融機関で様々なキャリアを経た著者は、独自の情報収集力に優れ、危機管理意識も卓越している。そんな著者が日本人の誰もがこれからの困難な時代に自分の金融資産を守り生き抜くために是非とも読んでほしいと、渾身の思いで書いたデビュー作である。
ECB総裁、米政府デフォルト「想像もできない」-債務上限巡り発言
Alexander Weber によるストーリー • 8 時間前
(ブルームバーグ): 欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、米政府が債務不履行(デフォルト)に陥る事態は想定していないとし、仮にそうなった場合は世界中に悲惨な結果をもたらすとの見解を示した。
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ラガルド氏は16日の米CBSの番組「フェイス・ザ・ネーション」のインタビューで、「米国には絶大な信頼を置いている」と発言。「彼らがそのような大惨事を引き起こすことは想像もできない」と述べた。
その上で「もしそれが起きれば米国の信頼性が疑われ、極めてネガティブな影響がこの国だけでなく、世界中に広がるだろう」とし、「私自身も政治の世界に身を置いたことがあり、政治のことは理解できる。しかし、より高い国家の利益を優先しなくてはならない時がある」と続けた。
米国では、連邦債務上限引き上げ問題を巡り与野党が膠着(こうちゃく)状態に陥っている。バイデン政権は、共和党のマッカーシー下院議長と債務上限問題で交渉は行わないと主張。一方で共和党側は、債務上限引き上げと歳出削減を結び付けることを求めている。
マッカーシー米下院議長、1年間の債務上限適用停止案を準備-関係者
Billy House、Erik Wasson
2023年4月14日 14:13 JST
マッカーシー米下院議長(共和)は与野党が膠着(こうちゃく)状態に陥っている連邦債務上限引き上げ問題を巡り、ホワイトハウスと議会民主党が実質的な歳出削減で譲歩することなどと引き換えに、1年間の適用停止とする提案の発表を来週計画している。
事情に詳しい関係者2人が匿名を条件に明らかにしたもので、バイデン政権と民主党に対し、この問題で交渉を促す形となる。5月後半に下院で法案の採決を行い、2024年5月ごろまで債務上限の適用を停止する内容となる。
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議会共和党としてはこのようなスケジュールを組むことで、来年の米大統領・議会選挙のラストスパートに向けてさらなる譲歩獲得の機会を得たい考えだ。
共和党が準備している提案は同党が掲げる歳出削減や規制改革を盛り込むもので、成立の可能性はほとんどない。
ただ、こうした提案を行うことで今後の予算協議に別途、道を開くことになれば、米国のデフォルト(債務不履行)につながりかねない与野党対立の解消につながる可能性もある。
バイデン大統領は共和党に対し、無条件の債務上限引き上げに応じるよう呼び掛ける一方、予算問題ではマッカーシー議長と別途協議する方針を表明している。
マッカーシー議長は17日にニューヨーク証券取引所(NYSE)で演説を行う予定。議長の予定に詳しい関係者1人によれば、演説では債務上限問題に言及する見通し。
原題:McCarthy Planning to Unveil One-Year Debt Ceiling Extension (1)(抜粋)
ウォール街が目を背けるリスク、米連邦債務上限と政府デフォルト
Liz McCormick、Erik Wasson、Josh Wingrove、Mike Dorning
2023年3月8日 12:02 JST
米政府が財務省短期証券で支払い不履行なら恐ろしい結果
投資家はそんなことは「起こり得ない、起こらない」と思い込む
米政府が今年、壊滅的な影響を与えるデフォルト(債務不履行)に陥ることはないというのが、広く信じられている常識だ。しかし、近年世界を揺るがした衝撃的出来事の数カ月前の常識は結局、見事に間違っていたことが判明している。
リーマン・ブラザーズの破綻しかり、2016年米大統領選の結果しかり、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)しかりだ。
今年起こり得るショックの原因となるのは、米政府手続きの特性と激しい党派間の対立だ。米連邦債務は議会が定める法定上限に達しているが、下院共和党は民主党およびホワイトハウスから譲歩を引き出すまでは上限引き上げに同意しない構えだ。
こういった膠着(こうちゃく)状態は初めてのことではないが、米財務省が支払い義務を履行できなくなるまで議会が債務上限の引き上げや一時適用停止を可決しなかったことはない。
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ジョージ・メイソン大学のタイラー・コーエン教授(経済学)は「ある事柄が長い間起こっていないと、人々はそれについてただ忘れてしまう」と話す。ゲーム理論に通じた同教授は「われわれは簡単に、起こり得ない、起こらない、と思い込み始める。それは意識してのことですらない」と説明した。コーエン教授はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストでもある。
金融市場に懸念の兆候はほとんどなく、エコノミストらは議員らが合意できないかもしれないというリスクを意に介していない。このゲームでは債務上限を引き上げない場合、最終的な結果はどちらの側にとっても耐えがたいはずだと、大多数の人が考えている。
Xデー
しかし、いわゆるXデー、つまり米政府が支払いをできなくなる日はわずか数カ月後に迫っている。そして、政治色の濃い今回の交渉はこれまでの何回かに比べ危険なものになりつつある。
米国民は既に高金利に苦労しているが、政府がデフォルトすれば住宅ローンからクレジットカードローン、自動車ローンなど全ての金利が上昇する。既に打撃を受けている確定拠出年金401kのポートフォリオに一段のダメージが及ぶ恐れもある。
11年の債務上限を巡る党派対立は譲歩で決着しデフォルトは回避されたが、S&P500種株価指数はそれでも17%下落した。今年の争いも少なくとも同じくらい紛糾しそうだ。
ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、トレーシー・チェン氏は「市場はひどく油断している。投資家は用心すべきだ」とし、「今回の債務上限問題は並外れて難しく今年の最も激しい論争になるだろう」と話した。
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連邦債務の上限は、議会が定めた額を超える借り入れを政府に禁じるものだ。米債務は既に1月に上限に達しているが、これまでのところ財務省は特別な会計手法を駆使して支払いを続けることができている。
連邦政府が支払い不履行に陥れば、米金融システムにとってリーマン・ブラザーズ破綻以来の大きな衝撃となるだろう。リーマン破綻は大恐慌以降で最悪の景気低迷をもたらした。
トレーダーと規制当局は債務上限問題がデフォルトの数日前まで解決しなかった11年の経験から幾つかの教訓を学んでいるものの、準備されている手順が本当に、システミックな金融メルトダウンを防ぐのに十分かどうかは誰にも分からない。
未知数
Xデーが実際に訪れた場合、米財務省が最初に決定しなければならないのは一部の支払い義務を他に対して優先するかどうかだろう。一部の専門家は支払先を選ぶことはできないと指摘するが、元当局者らは財務省が、投資家が保有している24兆ドル(約3300兆円)の政府証券についての支払いを続けるとみている。
米国債利回りは住宅ローンや自動車ローン、他国の国債など世界中の借り入れコストの指標だ。米国債は短期金融市場での数兆ドルの短期貸し付けの担保でもある。世界経済の基本的な血流システムにあまりに深く組み込まれているため、米国債デフォルトの影響は想像するのも難しい。
業界団体、米証券業金融市場協会(SIFMA)のマネジングディレクター、ロバート・トゥーミー氏は「机上の演習はしているが、実際に試したことはない」とし、米政府デフォルトの「市場への影響は未知数だ。トレーディング環境において当該証券がどのように取引されるか、価格はどうなるか、最終的にどんな影響が残るかなどは分からない」と語った。
現実に起こってほしいことではないとし、「われわれの第一の前提は、米政府への絶対の信頼が傷つくことがあってはならないということだ。債務上限を引き上げるべきだ。それ以外の答えはない」と述べた。
米国債の支払いを優先することは政治的な困難を伴う。債券を保有する裕福な投資家や中国政府などへの支払いを実施する一方で、数百万人の連邦職員や業者、軍人、社会保険給付受給者などへの支払いを無期限に遅らせることになるからだ。しかし支払い遅延は米国の信用力にも影響する。米国債の値下がりを引き起こし、本格的な国債デフォルトと同様の問題につながる可能性もある。
緊急対策
米国債の支払いを遅らせることが必要になったらどうなるのか。主要な市場参加者は数年をかけて緊急対策を練ってきた。満期日に償還する資金がない場合、1日の終わりに米国債をロールオーバーして償還期限を1日ずつ先送りするという案だ。つまり元本の支払いを遅らせるということだ。しかし、例えば8月9日が償還期限で同日に支払いが行われるべきだった証券について、同月10日に全てのシステムが取引を処理できるかどうかは未知数だ。
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は2月、債務上限についての「行動の遅れの結果から、金融当局が経済を守ることを期待するべきではない」とくぎを刺した。
前回の債務上限危機の際にFRB理事だったパウエル氏が指摘した主要なリスクの一つは、投資家が不安になり米国債入札が消化できなくなることだ。「本物のリスクはいかなる価格でも市場にアクセスできなくなる、入札の失敗だ」とパウエル氏は当時述べていた。当局者協議についてのFRBの資料が示している。
米国債の入札が失敗した場合、財務省は満期になった証券を償還する資金を得ることができず、問題は連鎖していく。「その場合、デフォルトの確率は確実に上がり、資本市場の金融環境に膨大な影響をもたらすだろう」と11年の対立の際に当時ニューヨーク連銀総裁だったウィリアム・ダドリー氏が述べている。
今年の物語がそんな結末になるかどうかは政治家次第だが、まだ行動する時間はある。ゴールドマン・サックス・グループはXデーは8月上旬か半ばだと見積もる。しかし法的手順の複雑さと米上下両院での両党派の拮抗(きっこう)は、議会が合意に達する助けにはならない。
下院議長
これまでの債務上限を巡る論争と同様に、共和党は債務上限引き上げの見返りに歳出削減を民主党の大統領に求めている。今回の緊張を高めているのは、共和党のマッカーシー下院議長が、妥協しないとを決意している共和党議員の強硬派グループに対して弱い影響力しか持たないことだ。
一方、バイデン大統領と民主党議員は31兆4000億ドルの債務上限の引き上げを拒む共和党が、過激で不安定をもたらす勢力だということを国民に見せつけたがっている。
マッカーシー氏が1月に議長に就任するまでの紆余(うよ)曲折は現在の米議会の不安定な状態を浮き彫りにする。同氏は14回の投票で十分な票が得られず15回目でやっと議長に選出された。
この過程で受け入れた譲歩の一つが、議長を解任する緊急投票の実施を議員1人でも求めることができるというものだ。これにより、少数の共和党強硬派が議長のポストを人質に債務上限引き上げ法案の修正などを迫ることが可能だ。そのような脅迫を抜きにしても、マッカーシー氏はたった5人の共和党議員が党の路線に「反対」の票を投じれば敗れる立場だ。
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保守派にとって、債務上限問題は24年の選挙を控え浪費癖のある民主党の政府支出がインフレをもたらしていると示す絶好の機会だ。2月のギャラップ世論調査で連邦債務や財政赤字が最も差し迫った問題だとの回答は3%と11年の17%に比べわずかだった。
これを踏まえると、何か劇的な展開が必要かもしれない。共和党保守強硬派の下院議員連盟「フリーダム・コーカス」の幹部、スコット・ペリー議員は「認識を高める好機だ。国家が破綻するのを防ぐ変化をもたらすために、今の機会を捉えて行動する必要がある」と話した。
ペリー議員の盟友たちからは、小さな政府の実現に向けたチャンスに舌なめずりしている様子がうかがえる。エンジニアで保守強硬派のトーマス・マッシー下院議員はスーツのポケットから取り出した手作りの「債務時計」を見せながら、うれしそうに議場を去った。「もう20人もの議員からこれを作ってくれと頼まれた」という。
「ロシアンルーレット」
ホワイトハウスではバイデン大統領が11年の債務上限騒動のお手本に沿って行動しようとしている。多くの民主党議員は、当時の最終合意が世界金融危機からの米経済回復の支障になったと考えている。このため、今回の債務上限問題で交渉することに後ろ向きだ。
民主党議員から見ると、国家の信用力を賭けてチキンゲームを繰り広げることを辞さない共和党のやり方は、同党をトランプ前大統領と足並みをそろえる不安定な過激派と印象付ける取り組みに役立つ。
バイデン陣営の世論調査専門家、ジョン・アンザローン氏は共和党について「米経済を賭けてロシアンルーレットをしている。米国民はそれについて彼らを罰するだろう」と述べた。
バイデン氏と共和党の間の大規模な財政合意の可能性は、現時点で低そうだ。それ以外の法制化案としては、多数の共和党穏健派が下院少数派の民主党と協力して条件を付けない「クリーン」な債務上限引き上げ法案を成立させることが考えられる。
しかし、これは複雑なプロセスで時間がかかるため不可能かもしれない。上院も厳しい情勢だ。24人の共和党議員が「構造的」財政改革がなければ債務上限を引き上げないとバイデン氏に警告している。
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最後の瞬間の政治的解決というシナリオも緊張をはらむ。「何かがうまくいかなくなるリスクがある」とダドリー氏が13年の金融当局の協議で述べている。
米財務省がデフォルトするという最悪のシナリオとなった場合、「米経済への負担が消えるまでに何年もかかるだろう」と、1970年代からの債券市場ウオッチャーで現在は金融安定センター(CFS)の特別相談役を務めるジャック・マルベイ氏は言う。
「連鎖反応が引きこされるだろう。デフォルトという状況は前例がない」とブルームバーグ・エコノミクスの米経済調査担当ディレクター、デービッド・ウィルコックス氏はリポートで指摘。債券保有者への利払いにせよ連邦職員の給料にせよ社会保険給付受給者への給付にせよ、財務省からの支払いが短期間でも停止すれば「迅速かつ潜在的に壊滅的な市場の反応を引き起こすだろう」と予想した。
GDP15%減
米国債の利払いと元本償還が行われたとしても、数百万人の連邦職員と給付金受給者への支払いが止まれば経済は直ちにリセッション(景気後退)入りするだろう。
バークレイズのアナリストが最近行ったシミュレーションによると、米政府の借り入れニーズが2021年8月と同じだと仮定した場合、財務省は今年8月に支出を約2000億ドル減らさなければならない。
政府が支出を再開し遅れた支払いを実施するまでに数週間かかれば、国内総生産(GDP)は最大で年率15%「急減するだろう」と、アジェイ・ラジャディアクシャ氏率いる同行チームがリポートで試算を示した。
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議会に行動を促すには、何らかの市場混乱が必要かもしれない。08年の金融危機時はそうだった。下院は9月下旬に7000億ドル規模の救済案を否決したが、相場急落を受けて数日後にわずかに修正したバージョンを可決した。
現時点では懸念の兆候は限定的だ。米国がデフォルトするリスクは10%未満と低く、政治家が最終的に債務上限引き上げに連動した何らかの財政合意に達するとブルームバーグが調査したエコノミストらは考えている。
米国債のデフォルトに備えるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保証料は上昇したものの、問題解決の明確な期限がないことが投資家の危機感の欠如を生んでいる。
リスクは、そうした楽観的な見通しが合意の妨げになることだ。最悪の事態になると誰も思わなければ、いつまでもチキンゲームに興じようとするかもしれない。
コーエン教授は、これまでと同様今回も「大丈夫だろう」と考えている。しかしながら、張り詰めたプロセスを繰り返すことは危険性を高めると同教授は警告。「何回も実験を繰り返しているうちに、大丈夫でなくなる」と述べた。
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原題:The Debt Ceiling Is the Risk Wall Street Doesn’t Want to Ponder (1)(抜粋)
イエレン長官、利回り「永久に」高くなる-債務上限引き上げなければ
Christopher Condon
2023年2月15日 9:15 JST
「解決策はシンプル」、議会は債務上限の引き上げまたは停止可決を
議会は「無条件で行うべきで、ぎりぎりまで待つべきではない」
イエレン米財務長官は14日、「経済および金融の大惨事」を回避するため米議会は連邦債務の法定上限を引き上げる必要があるとあらためて警告した。
イエレン長官はワシントンでの会議で講演し、「解決策はシンプルだ。議会が債務上限の引き上げまたは停止を可決する必要がある。それは無条件で行うべきで、ぎりぎりまで待つべきではない」と語った。
また、「長期的には、デフォルト(債務不履行)が借り入れコストを永久に高めるだろう。公共投資を含め将来の投資は実質的に一段とコストがかさむものになるだろう」と発言。投資家が米国債購入でより高い対価を要求し米国を罰することを示唆した。
下院の主導権を握る共和党は、民主党が今後の歳出削減に同意しない限り債務上限引き上げを見合わせると警告。バイデン大統領はこの問題に関する交渉を拒否している。
関連記事:
原題:Yellen Sees Higher Yields ‘In Perpetuity’ If No Debt-Limit Hike(抜粋)
参考文献・参考資料
【世界大恐慌再び!?】2024年の金融大暴落「グレートリセット」が全世界にリーマン・ショックの10倍のショックをもたらす理由 (msn.com)
ECB総裁、米政府デフォルト「想像もできない」-債務上限巡り発言 (msn.com)
マッカーシー米下院議長、1年間の債務上限適用停止案を準備-関係者 - Bloomberg
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