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Fargateと掛け捨て保険

JAWS-UG朝会#28であった「Fargateの運用~デプロイ自動化や監視等~」で、まじめにFargateとかフルマネージドサービスの費用ということを考えたいと思った。発表者の熊谷さんが下のようにEC2でコンテナホストした場合とFargateを使った場合のランニングコスト+運用保守費用をまとめられていて、質疑タイムにFargateのSavingsPlanを使ったら費用逆転するのではと指摘されてたので、そこだけはすぐにも押さえておきたいなと。

Savings Plansでの費用試算法

AWS Pricing Caliculatorを使うとEC2をオンデマンド利用した時(最も高い)、3年分前払いでEC2 Instance Servings Plansで利用した時、Fargateをオンデマンド利用した時の料金が計算できる。東京リージョンで、EC2はLinuxのm5.xlargeインスタンス+8GBストレージ、Fargateは4vCPU+16GBメモリで平均期間1日のタスクを1個とした計算結果は以下のようになった。

  • EC2(オンデマンド) … 182 USD/月

  • EC2(EC2 Instance Savings Plans) … 2,444.04 USD/3年 + 0.96USD/月

  •  Fargate(オンデマンド) … 212.25USD/月

Pricing Caliculatorは、Fargateはオンデマンド支払いのみの対応でSavings Plansの見積もりは未対応になっている。

Fargate SpotとCompute Savings PlansはAWS Pricing Caluculator未サポート

しかしCompute Savings Plansが2019年に発表されていて、Fargateに対しても適用できる。

Compute Savings Plansのページに料金表(Caliculator風)があって、リージョン・OS・アーキテクチャ別の料金およびオンデマンドと比較した費用節減(割引率)を確認できる。これによると、東京リージョンのLinuxではX86アーキテクチャで47%、Armアーキテクチャで51%オフになる。単価(利用単位当たりの料金)も出てるのだけど、割引率をPricing Caliculatorの計算結果に掛けた方が計算が楽なので割引率で良しとする。

EC2とFargateの累積費用比較

これらをもとに、熊谷さんと同様に「四半期ごとのEC2のパッチ適用に人件費1万円」を加算して累積費用を計算するとこうなった。

  • EC2(オンデマンド) … 1か月目270USD、36か月目7,348USD

  • EC2(Savings Plans) … 1か月目2,533USD、36か月目3,275USD

  • Fargate(オンデマンド) … 1か月目212USD、36か月目7,641USD

  • Fargate(Savings Plans, x86) … 1か月目4,050USD、36か月目4,050USD

  • Fargate(Savings Plans, Arm) … 1か月目3,744USD、36か月目3,744USD

EC2とFargateの累積費用試算結果

オンデマンド料金の比較ではほとんど差がない。Savings Plansでは3年運用してもEC2の方がはっきり安い。EC2専用のEC2 Instance Savings PlansとFargateにも適用できるCompute Savings Plansの割引率の差が大きそうに思う。

Fargateと掛け捨て保険

ただどちらの場合でも、EC2のメンテナンス費用を「1万円/四半期」という見積りはそもそもずいぶん小さく、トラブル発生時のバッファもなさそうな気がするという作業コストの上振れリスクがうかがえる。また、コンテナの稼働率とリソース要求をFargate見積もりと同等とみなすなら実はコンテナホストOSのオーバーヘッド分だけリソースが不足しそうだし、逆にそれらが低ければリソース余剰ということになる、キャパシティ管理リスクもある。

このあたりは総じて「インスタンスを持つリスク」と言えそうに思える。キャパシティ確保やセキュリティ維持など、インスタンスを持つことに伴う運用リスクだ。Fargateのような「インスタンスを持たない」サービスでは、「インスタンスの運用も持たない」。ここをもう少しブレイクダウンすると、運用コストを手放せることに加えて、運用リスクを手放せることが含まれている。

多分Fargateに限らずフルマネージドとかサーバーレスとか呼ばれるサービスはだいたい「リソースだけを考えればちょっと割高」で、その差額に運用リスクを手放せる価値も含まれている。いわば、リスクに対する掛け捨て保険、その保険料だ。上の試算ではオンデマンドサービス利用時で約300USD、Savings Plans利用時で約500USDないし約800USD。人件費換算したら何時間文化と考えると、けっこうリーズナブルな気もしてくる。

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