2023年のクラウド市場概況
2023年のクラウド市場サマリ
「2022年のクラウド市場概況」同様、昨年後半以降に出たSynergyグループのプレスリリースから、クラウド市場のシェアについておさらい。サマリとしてはこんな感じでしょうか。
クラウドインフラ(≒Iaas/PaaS+ホステッドプライベートクラウド)市場は年間2,700億ドル(+38%成長)
トップ3のシェアはほぼ横ばいで、Amazonが微減、Microsoftが微増
Next 20企業群がシェアを伸ばしており、成長率が大きかったのはHuawei、China Telecom、Snowflake、MongoDB、Oracle、VMware
昨年は2022年はこの他に、アジア太平洋地域(APAC)のクラウドインフラ市場シェアレポート、クラウドインフラにSaaSやCDN、データセンター等を加えたパブリッククラウドエコシステム市場規模とリーダーについてのレポートがありましたが、2023年にはこれらのレポートは出ていませんでした。
クラウドインフラ市場
クラウドインフラ(IaaS&PaaS、ホステッドプライベートクラウド)については、年次比較レポートが2023年Q1に、四半期推移レポートが2022年Q4、2023年Q2、Q3、Q4に出ています。
まず2023年Q1の年次比較レポートを見ましょう。こちらではシェアの推移とともに、市場の成長が見て取れます。Q1の時点では四半期売上は630億ドルで前年同期比+20%(+100億ドル強)でした、これは2022年Q1が四半期売上530億ドル弱で前年同期比が2023年Q1に+34%(+134億ドル)だったことに比べると、成長率が鈍化しているものの、経済情勢の弱さを考慮すれば依然として健全な市場拡大と評価されていました。
2023年は、Q3になって大きく様相を変えます。2023年Q4の四半期推移レポートを見ていきましょう。トップ3ではAmazonがシェアを落としているのに対してGoogleとMicrosoftが伸長、特にMicrosoftが大きく伸びています。またこのレポートでは通年売上にも触れており、2023年は推計2,700億ドル(+38%)となりました。Q1には成長率の鈍化がみられたにもかかわらず、通年では前年の1,950億ドル(+29%)に比べて、成長率も大きく伸長しました。
2023年を牽引した生成AIと今後の展望
2023年が特異だったのは、前年末にOpenAI社がChatGPTをリリースしたのを端緒に、生成AIの利用が急速に立ち上がったことです。レポートには次のように記されています。
レポートでは、Q1の年次比較レポートでも言及した「すでに大きな市場なので成長率は高くならない」ことに言及しつつ、それでも金額ベースで言えば大きな成長が続くと結んでいます。
なお、前述のとおり2023年にAPACについてのレポートは出ませんでしたが、このレポートではAPACについても次のように触れていました。
金額でみるメガクラウド間の競争
昨年の「2022年のクラウド市場概況」は、シェアで見るとAWSを追い上げているMicrosoftが、売上金額でみるとさらに引き離されているという事を指摘して結びました。2023年はどうだったでしょうか。まず2022年と2023年のQ4シェアをまとめてみます。
Amazon … '22年Q4:32% → '23年Q4:31%(-1ポイント)
Microsoft … '22年Q4:23% → '23年Q4:24%(+1ポイント)
シェアで言えば、MicrosoftがAmazonから1ポイントを奪ったようです。ところで、これを売上金額に直すと、以下のようになります。
市場全体 … '22年Q4:616億ドル → '23年Q4:737億ドル
Amazon … '22年Q4:197億ドル → '23年Q4:228億ドル(+31億ドル)
Microsoft … '22年Q4:142億ドル → '23年Q4:177億ドル(+35億ドル)
前年と異なり、2023年は売上金額でもMicrosoftがAmazonとの差を縮めたことが見えてきました。MicrosoftとAmazonのシェア争いは、シェアの逆転=売上の逆転であることを考えれば、見るべきところはシェアの数字ではなく売上の数字です。そこでついに差を縮めたことは、2023年の注目すべき点だと思われます。
Microsoftはもっとも著名な大規模言語モデルGPTなどのOpenAI社の生成AIを、Azure OpenAI Serviceとしていち早くAPI提供し、昨年四月には農水省などの採用を獲得していました。ここが境目になったことは、想像に難くありません。