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クラウド利用は企業セグメントを問わない

僕たちが企業のクラウド利用を考える時、よく企業をセグメントに分けて考えます。しかし先日、クラウド利用の積極性を測るのに企業のセグメントわけはあまり意味を持たなくなってきてるかもしれないと思うことがありました。総務省が年次で実施している通信利用動向調査に企業の「クラウド利用状況」が含まれています。これの平成29年度版のデータをグラフ化していて、ふと「特に消極的なセグメント」というのが見あたらないことに気づいたのです。実際にグラフ化したものを見てもらいましょう。

産業分類別のクラウド利用状況

まず産業分類別のクラウド利用状況。かつてクラウドには「Web系企業の使うもの」「個人情報を扱う高いセキュリティが求められる業界では使われない」といったイメージがありました。実際にはどの産業でも「全社的に利用している」が20%以上、「一部で利用」を含めると40%以上、「利用予定がある」まで含めると60%以上の数字を示しています。そして個人情報こそが事業の根幹と言えそうな金融・保険業と不動産業こそ、情報通信業に続いてクラウド利用率が高くなっています。

企業規模別のクラウド利用状況

次に企業規模とクラウド利用状況の関係。企業規模はよく従業員数や資本金などで分けられますが、このうち従業員数とクラウド利用率はあまり関係がありそうに見えません。資本金や固定資産額とクラウド利用率には相関性がありそうです。しかし「全社的に利用」「一部で利用」を合わせた利用状況では、「資本金1000万円未満」が40%をわずかに切るだけで、他は全セグメントで40%を超えています。

事業規模別のクラウド利用状況

さらに売上げ規模、売上げ利益率別のクラウド利用状況。ここでは売上だが利益率はあまり相関性がありそうには見えませんが、年間売上高は相関性がありそうに見えます。またここでも「全社的に利用」「一部で利用」を合わせた利用状況では、「年間売上高5億円未満」が40%をわずかに切るだけで、他は全セグメントで40%を超えています。

地方別のクラウド利用率

最後に地方別のクラウド利用率。「全社的に利用」「一部で利用」を合わせた利用状況では、全セグメントで40%を超えています。

まとめ

平成29年(2017年)の通信利用動向調査結果にある「産業分類別」「従業員数別」「資本金別」「固定資産額別」「年間売上高別」「売上高利益率別」「地方別」の7つのセグメンテーションでのクラウド利用率をご紹介しました。

私が気になったのは、このどのセグメンテーションでも、「全社的に利用」「一部で利用」を合わせた利用企業の割合が、セグメントを問わず40%弱を超えているということでした。おそらくアーリーマジョリティ層にも広く広がっているタイミング、キャズムはとうに超えているタイミングで、すでに「このセグメントの企業にはクラウドは向かない」といったことはないのだと思います。

一方で同じ通信利用動向調査結果の中でも「具体的に利用しているアプリケーション」ではカテゴリごとに大きな隔たりがあり、まだ非常に低い分野もあります。これで連想するのは「デジタルトランスフォーメーション戦略」の一環としてクラウドファーストを打ち出したMUFJ銀行が、その際のQ&Aで以下のように答えていたことです。

勘定系システムがすぐにクラウドに置き換わることはないと考える。まずは、勘定系以外のエリアを中心にクラウドに置き換えていくことになるだろう。

企業セグメントとして「クラウドとは無縁」などということはなく個々の企業の利用する/しないの選択がされていること、特に「業態」ではなく「業務」単位での検討に進んでいることをこの調査結果は示しているように思われます。

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