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2022年のクラウド市場概況

2021年のクラウド市場概況」同様、今年も昨年後半以降に出たSynergyグループのプレスリリースから、クラウド市場のシェアについておさらい。サマリとしてはこんな感じでしょうか。

  • クラウドインフラ(≒Iaas/PaaS+ホステッドプライベートクラウド)市場は年間1,950億ドル(+29%成長)

  • Amazon、Microsoft、Googleのトップ3がさらにシェアを伸長

  • Next 20企業群やそれ以降のロングテール企業群も、シェア低下の一方で市場成長に支えられ売上総額は拡大

  • 日本国内シェアではAmazon、Microsoftに富士通、NTTが続き、Google

  • クラウドエコシステム市場全体(インフラ、SaaS、ソフトウェア&ハードウェア、データセンター)は年間5,440億ドル(+21%成長)


クラウドインフラ市場

クラウドインフラ(IaaS&PaaS、ホステッドプライベートクラウド)はQ1では前年同期比34%増の530億ドル弱Q3では24%増の570億ドルでした。Q1に比べてQ3で失速した理由としては為替レートの不安定と中国市場が挙げられています。

シェアを見ると、Q3前年比ではAmazon、Microsoft、Googleはそれぞれ1ポイント以上シェアを伸ばしており、合計66%で前年の同種調査に比べて5ポイント増加。3大サービスへのシェア集中が続いていると言えます。一方でグラフからはシェアを落としたNext 20 CompaniesとOtherも売上自体は伸ばしており、売上の奪い合いではなく市場全体が成長する中で3社の成長率が他より大きいという構図も見えてきます。

Q3 Cloud Spending Up Over $11 Billion from 2021 Despite Major Headwinds; Google Increases its Market Share | Synergy Research Group

クラウドインフラ市場のシェア推移

クラウドインフラ市場のシェアの推移では、2021年Q4についてはMicrosoftがAmazonの背後に迫ってきたと報じられたものの、Q2にはAmazonがシェアを拡大と報じられました。ただ'21Q4、Q2、そして上のグラフに現れたQ3とMicrosoftのシェアは一貫して21%ですので、あくまで各四半期ごとに前年比で見た短報でシェアを失ったというわけでもなさそうです。Amazonも33%で一貫していて、この間にシェアを伸ばしていったのはGoogleとなるようです。

Q2 Cloud Market Grows by 29% Despite Strong Currency Headwinds; Amazon Increases its Share | Synergy Research Group

アジア太平洋地域のクラウドインフラ市場シェア

同じクラウドインフラ市場でも、APAC(アジア太平洋)地域では世界全体とはまた違った傾向が見られがちですが、2021年Q4時点では下表のシェアになっていたようです。日本ではAmazon、Microsoftの二強に富士通とNTTが続き、Googleより上に国内二社が入っていました。中国ではAlibabaが強く、APAC全体でもMicrosoftを抑えて2番手に入っています。

AWS, Alibaba and Microsoft Lead the APAC Cloud Market; Tencent, Google and Baidu are in the Chasing Pack | Synergy Research Group

クラウドエコシステム市場全体

SaaSやCDN、それらを支えるデータセンターなどを含めたパブリッククラウドエコシステム市場全体では2021 年から21%増加し、5,440億ドルに達しました。最も成長が大きかったのはIaaS&PaaSの領域で、29%増の1,950億ドルを超えました。Q1の26%増加からすれば鈍化したものの、記事が指摘する「逆風」の中で大きな成長を維持したと言えそうです。

リーダー企業を見ると、IaaS&PaaSではAmazon、Microsoft、Googleとおなじみの顔ぶれ。しかしマネージド(ホステッド)プライベートクラウドではAmazonに次いでIBMが二番手、エンタープライズSaaSではMicrosoft、Salesforce、Adobeが顔を並べます。前年には、インフラ市場に限るとAmazonが揺るがぬトップランナーだがSaaSを加えるとMicrosoftがリードするといった姿がありましたが、このグラフを見る限りおそらく今年も変わらないでしょう。プレイヤーそれぞれに強みがあることを感じさせます。

Total Public Cloud Revenues Jumped 21% in 2022 Surpassing $500 Billion Despite Economic Headwinds | Synergy Research Group

終わりに

概況を眺めてきたところで今年の予測、と言いたいところですが、それが難しいのがIT分野です。かわりに一つの視点を提示してみたいと思います。1月末に、2021年Q4のシェア推移の記事を元に、次のようにまとめた記事が話題になっていました。

GCPは緩やかにシェアは伸びているものの、Azureの急激なシェアの伸び方と比べると一段将来性は落ちる印象です。(略)今のAzureのシェアの伸び率が続けば、数年以内にAWSとAzureのシェア逆転現象が起きるので…

# 3大クラウド(AWS,Azure,GCP)をそれぞれプロダクションで実運用した感想(その1 シェア、将来性) - Qiita

この可能性を考えることは、クラウド市場の将来を占ううえで興味を惹かれるところです。Microsoftがシェアを伸ばしたこの2021年Q4を別の角度で見てみましょう。シェアが逆転するということは、売上が逆転するということです。2020Q4と2021Q4を比較した時、売上はどうだったのでしょう。

2020年Q4は全体の売上げが370 億ドル強でAmazonは122億ドル(シェア33%)、Microsoftは74億ドル(同20%)、売上げの差は48億ドルになります。2021年Q4は前述のとおり全体が505 億ドルで、Amazonは167億ドル(同33%)、Microsoftは106億ドル(21%)、売上の差は62億ドルになります。実はAmazonとMicrosoftのIaaS&PaaS市場での売上は、差が縮まるどころか開いているのです。現在のところ、IaaS&PaaS分野の売上げでMicrosoftがAmazonに追いつく兆しは見えていないように思います。

Microsoftが売上げで追いつくためには、これまで以上に小規模なクラウドプロバイダーの満たしてきたニッチニーズにこたえてその売上げを丸ごと飲み込む泥臭い非効率な道か、Amazonから売上げを奪うイバラの道か。前者にはその非効率を何とかするイノベーションが必要でしょうし、後者はまず市場が縮小傾向になり既存のパイを奪い合う局面が必要でしょう。どちらも巨大なディスラプトの瞬間で、だからこそクラウドに携わる身としては、シェアが逆転する瞬間に興味を惹かれずにはいられません。

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