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クラウドのコスパを分けるのはスキルかも知れない。

TAC社の「IT人材育成セミナー」を聴講しました。CompTIAの板見谷氏が特別講演の中で「総務省『平成24年通信利用動向調査の結果』」を紹介した部分は興味深かったです。

同調査結果では、ポイント資料概要資料で触れていませんが、データとしては「企40表 問5(4)クラウドサービスを利用している理由」と「企42表 問5(6)クラウドサービスを利用しない理由」が両方公開されています。板見谷氏は両者をグラフ化したもので比較し、「導入する理由」と「導入しない理由」に同じ分野で以下のように反対の意見が並んでいる、と指摘していました。

・セキュリティが高くなる/セキュリティに不安がある
・既存システムよりコストが安い/既存システム改修コストが大きい
・安定運用、可用性が高くなる/ネットワークの安定性に不安がある

両者を分けるのは、活用スキルの差ではないかというのが板見谷氏の指摘でした。同じものを使って真逆の結果が出るなら、それは使い方の違いというのは、説得力のある理屈だと思います。

たぶん、クラウドコンピューティングというのは「技術が飛躍的に進化した」のではなくて「技術が新しい体系にスイッチした」変化なのです。今までのやり方で今までより堅牢なシステムができるとか、今までより高性能になるとか、そういう「進化」ではない。むしろいろんなことを諦めなければいけない「トレードオフだらけの別手段」なのです。

・専用サーバのようなスケールアップはできない。でもスケールアウトとスケールイン(シュリンク)が容易。
・イントラネット、システム内ネットワークのような通信品質はない。でもどこからでもどのデバイスからでもつながる。
・ノンストップサーバのような平均故障間隔の長さは期待できない。でも平均復旧時間は分単位。

クラウドコンピューティングをベースにしながら、スケールアップシステムや、システムの寿命に等しいぐらいの平均故障間隔を実現しようとすると、すごく大変です。「既存システム改修コストが大きい」です。でも既存システムと同じ要件をクラウドベースで満たすだけなら、「既存システムよりコストが安い」可能性もあります。「1日に500件受注オーダを処理できればいいんだよね、じゃあ分散処理で」とか「可用性99.999%ならいいんだよね、じゃあ年間故障5回まで×自動復旧1分以内で」とか。

クラウドコンピューティングは「今までよりもっと...」という変化ではなくて、「今までのこれはできない、でも...」という別物への変化、トレードオフだらけの方法論なのです。部品はこれまでと同じものですが、だからといって「今まで通り」で使おうとすれば「これはできない」側ばっかりを踏んで、無理を通せばコストパフォーマンス最悪になりそうです。一方で「じゃあこれからは」とゼロベース、あるいはクラウドベースで発想できれば、「でもこれができる」側だけを取り込んでコストパフォーマンスを最高にできるかもしれません。

こう考えてみるとクラウドサービスを利用する理由と利用しない理由、正反対に振れた結果があるのは「企業の違い」「環境の違い」「対象システムの違い」とかだけではなく、「クラウドスキルの有無」による部分も結構ありそうな気がしてきませんか?

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