【音楽雑記】おれは反復記号をやめるぞー
こんにちは、ピアニストの塚本です。
タイトルは「ジョジョの奇妙な冒険」第一部のディオ様のようにテンションMaxで読んでいただけると幸いです。いや、意味はないです。
さて、今日は音楽に関わる雑多な、肩ひじ張らない話であります。
突然ですが、みなさん、こういう記号好きですか? 名前言えますか?
私はとても苦手です。
この記号見てるだけで、脳が疲れます。
初見で演奏するときにこの反復記号どものせいで自分や誰かが間違ったりして、マウントとりあったり、殴り合いの喧嘩してるのを見るのは、すごくつらいし、テンション下がります。
本投稿では、反復記号に関して考察をし、ミスを避け、よりわかりやすくするためにはどうすればいいかについて述べます。
ちなみに、以下のような単純な繰り返し記号は、むしろ可愛いやつなので、ここでは対象外とします。
プログラミングに例えると?
いきなりプログラミング言語の話になりますが、プログラムの構造としてあまりよろしくないもの(トラブルを起こしやすい邪悪なもの)の代表格に"Goto"文というのがあります。「ごとう」じゃなく、Go to(ごーとぅー)です。つまり、プログラムを順に命令を実行していく途中で、条件次第で強制的にどこかの順番に飛ぶのです。
その昔、ゲームブックという、RPGやアドベンチャーゲームを体験できる書籍がありましたが(知ってる人がいたら正直にコメントくださいね)、それはまさにifとGotoだけでしたね。こんな感じです。
1 : 王様「よくぞ来た、勇者よ。
我が国は突如あらわれた魔王に苦しめられて久しい。
その勇者としての力を見込んでそなたに頼みがある。」
(2へ)
2 : 王様「魔王を退治してくれるな?」
はい : Goto 4
いいえ : Goto 3
3 : 王様「最近、齢を食ったせいかよく聞こえぬ・・・。
もう一度聞くぞ。」
Goto 2
4 : 王様「よくぞ決心した。
では旅の資金を与えよう。
そこの宝箱を開けて、ただちに出発するのじゃ!!」
宝箱にはこん棒と布の服、そして金貨3枚が入っていた。
勇者「(原始人のコスプレかよ・・)」
(つづく)
まあ、このくらいならかわいいものなのですが、少し大きめのプログラムでGoto文を使うとこんがらがって大変なことになります。つまり、構造を理解したり、修正しようとするときに多大な苦労を伴うのです。
こういうGoto文は古き良き時代のBASIC言語やアセンブラ、などに現れ、近代的なプログラミング言語には出てきません(例外処理はGoto文に近いけど)。
話を戻すと?
音楽における反復記号はまさにGoto文です。強制的に譜面のある個所からある個所へ飛びます。
これの悪いところは、とにかく間違いやすいということです。
反復記号のルールを覚える必要がある(恥ずかしながら、私はいまだにこれが曖昧)
譜面上、どこに反復記号があるかを記憶する必要がある
何回目の繰り返しなのか(飛ぶ条件を満たすのか、満たさないのか)注意して演奏する必要がある
という感じで脳のリソースを非常に使います。
また構成や意図を理解できなくなるときがあります。
反復記号は、正確に記述できるという役割はありますが、大枠を理解しにくい、全体構成をつかみにくいという点において、非常にGoto文と近いものを感じます。
そもそもなんで反復記号使いたいのかね?
反復記号無しで譜面を書き下すと当然長くなります。手書きする場合、印刷する場合は、いっぱい紙を使います。
でも長くなったって、構成が理解できればいいと思うのです。
ページ数を減らそうと四苦八苦してややこしい譜面を作っている様は、さながら数KByteのROMにゲームを収めようとしている70-80年代のプログラマーです(それはそれで讃えるべき話なのですが)。
今日では、タブレットやスマホで譜面を見る人だっていますし、ペーパーレスは進んでいます。
そもそも、反復記号は音楽の要素ではなく、記譜の手段です。1mmも音楽的でなく、ここに使うリソースは最小化する必要があると思っています。
で、どうしろと?
譜面は曲の内容を伝えるひとつの手段にすぎなく、目的は「曲の内容を伝える、共有する、理解する」であり、それにより演奏等ができるようになることです。
最近、小学生・中学生に音楽や楽器を教えたり、バンドの面倒を見たりする機会があります。
そんな中で、私はこの反復記号を一切使わないし、教えてもいません
(彼らが音楽の授業でいい成績をあげたり、音大に行きたいというのであれば別ですが、そんな人たちはそもそも私のところに来ないので構いません笑)。
どうやって曲を教えたり、アンサンブルさせているかというと、書き下した譜面を渡しています。譜面の小節にはAとかBとか、あるいはA1とかB1とか、セクション名を記載します。
譜面とは別に「構成シート」と勝手に呼んでいる、曲がどのセクションでどのように構成されるのか、を示した資料を渡します。
譜面の例
構成シートの例
このようにすることで、みなで構成の理解を共有できますし、練習時に曲の場所を特定するとき「コーダで飛んだ後の何小節目から」とかではなく、「A2の頭からB1までやりましょう」とか会話できるので、コミュニケーション効率が良いです。
プログラムの例え話に戻ると、これって「モジュール化」ってことなのです。つまり、小節のかたまりを部品とみなし、名前をつけて、固まりとして扱うのです。関数とかクラス・オブジェクトです。難しいものを難しいままのレベル(つまり小節番号や繰り返し回数)で扱わず、その塊に名を付けて、名前で扱います。
どちらが音楽的でしょう?
まとめ
演奏を間違えるとき、その原因は譜面のわかりにくさに起因することが多いです。例えば繰り返しだけでなく、一行が紙面上の理由で4小節ではなく、3小節や5小節になっていたり不規則である場合などもそうですし、わかりにくいコード表記(C Mi, C m, C M とかマイナーなのかメジャーなのかわからん時たまにあります )、メンテされていないメモ書きなどもそうです。
コミュニケーションにおいては、正しいことではなく、わかりやすいことが大切だと思います。
譜面でコミュニケーションをとるとき、つまり相手に演奏をお願いする場合などは、紙面をけちったり、コーダやダルセーニョなどを正確に処理することを相手に要求する前に、どうやったら構成をわかりやすく伝えられるか考えてみるといいかもしれません。(了)