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【音楽】アウトフレージング講座 (5) - リハーモナイズ

こんにちは。ピアニスト塚本です。
本シリーズでは前回まで、モチーフを決めて、それをリズム的に変形していくことにより、予想外の展開を作る方法を実例を交えて紹介してきました。

今回からはいよいよハーモニーについてです。ハーモニーはなかなかわかりにくいものではありますが、本来の調性やコードから逸脱するときにどういう考え方・方法をとっているのか整理してみます。

今回は「リハーモナイズ」について取り上げます。

リハーモナイズ

このリハーモナイズという言葉は一般的な用語であり、一つのコードを置き替えるというミクロな話から、曲全体を編曲するようなマクロな話までかなり広い範囲を指し示す言葉です。ここでは、一つのコードに着目して、響きを変えたりすることを指し示すことにします。

例えば、Cメジャーのキーの曲であらわれたトニック(C)で、C以外の別の和音を乗せたり、置き換えたりということです。

以下の演奏例は、CメジャーのIIm7 - V7 - I において、ゴールであるCメジャーのコードの部分をリハーモナイズしたもので、元々の素のCメジャーを含めると6つの演奏例が含まれます。

順に説明します。

ルートはCとします。譜面のボイシング(音の積み重ね)は演奏例に準じており、コードシンボルの表記と厳密には対応していないので注意ください。

Ex-1 : I△ (普通のトニック)

これは省略します。

Ex-2 : II△ / I

トニックでII△を弾いたり、スケール的にLydianスケールを弾いたりします。
つまり、D△やC Lydianスケールです。
本来の調C Majorから離れて、若干明るいようなふわふわしたような雰囲気になる気がします。
セッションなどでも結構使っている方はいるように思います。

Ex-3 : III△ / I

Cの上でE△を弾きます。一般的にはEx-2より使われる頻度は低いかもしれません。
E△の3度G#の音がCの平行短調であるAmを示唆するので、Amのトニックマイナーとして考えたりもできます。つまり、A Melodic Minorを使ったりします。Cを起点とするとC Lydian Augment、Eを起点とするとE Mixolydian b6となります。

Ex-4 : I dim

これは一般的に「トニックディミニッシュ」として知られ、よく使われています。
もっともそれっぽく響くトライアドはVII、つまり、CならばB△となります。

Ex-5 : VIb△ / I

これは元のキーからするとサブドミナントマイナーであり、もはやトニックではないです。Ab Lydianを弾いたりします。

Ex-6 : IVm / I

これもEx-5同様、サブドミナントマイナーですが、Fmをトニックマイナーに見立てて、F Melodic MinorやC Mixolydian b6を弾いたりします。元々のCはFmに対するドミナント的な位置づけで響きます。

実際の演奏例

自分がどこで使っているか振り返ってみて、抜粋してみました。

例1 : II△ / I

例2 : トニックディミニッシュ

意外に使ってますね!
参考)フルの演奏はこちらのマガジンから参照できます。

どうやってハーモニーを選択するのか?

リアルタイムな即興においては、

  1. メロディから和音を割り当てる

  2. 和音の響きをイメージし、そこにもっていくようにメロディを作る、修正する

という2パターンがある気がします。

例えば(1)は、メロディが#11ならII△やI dim、#5ならIII△やIVm、7ならI dimなどと選択肢があり、これらから選ぶわけです。
(2)は、II△に持っていきたいから#11に解決するようにフレーズの終わりの音を変えたり、ということが考えられます。

こういったことを実践するには、

  • トライアドやスケールを機械的に覚えるではなく、どういう響きなのかというのを自分なりに味わい、整理する

  • 弾いている音がルートに対して何度なのかを意識する (第2回参照)

ということが必要になります。

まとめ

今回、リハーモナイズの例を紹介しました。今回紹介したのは、メジャートニックを置き換えるというもので、あくまでものの見方の一例として受け取っていただければと思います。「マイナーや他の機能のコードはどうするの?」など疑問はあると思いますが、これを参考に考えてみていただくのもよいかなと思います。
また和音を選ぶのはよいとして、その上でどうやってフレーズをくみ上げたらよいのかという疑問もありそうです。コードの分散和音やスケールをただなぞればよい、というわけではないのでやはりモチーフが重要になってくるのですが、この辺はあらためてアイデアを共有したいと思います。

次回予告

次回もハーモニーを題材にします。インサイドとアウトサイドを行ったりきたりするための「一時的転調」についてお話します。
(了)

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