【音楽】アウトフレージング講座 (3) - モチーフのリズム展開1
こんにちは。ピアニスト塚本です。
ジャズのアドリブ、あるいは、作曲や編曲において、どうやったら予想外で刺激的な展開を作れるか、ということをテーマに少しずつ進めています。
前回までのおさらい
アウトとは期待・予定調和から外れることであり、外れる・外れないいずれにせよ期待値を形成することが大切です。
前回(二回目)では、期待のベースを構築する上で、モチーフを抽出して曲中でそれを反復するということをやってみました。またモチーフを反復する際にコード進行に対してどのように響くのかをイメージする上で、メロディの度数を意識することが大切ということをお話ししました。
今回のテーマも反復
さて今回のテーマも「反復」ですが、同じモチーフを反復するのではなく、リズム的に変形させていく方法をお話ししたいと思います。
今回の参考音源は、ウィントン・マルサリスの『スタンダードタイム vol.1』です。このアルバムは「Caravan」や「枯葉」などごく一般的なジャズスタンダードを取り上げているのですが、テーマの歌いまわし、リズムトリックをはじめ、各奏者のソロ、奏者間のインタープレイ(即興でのやりとりやしかけ)がすさまじいです。
ここでこのアルバムの細かい話はするつもりはないのですが、「リズム」に着目すると、普通に演奏する符割りやタイミングとは違う、あるいは、聴いていてだまされてしまうような感覚に陥るかと思います。リズムといってもドラムやベースだけでなく、トランペットのメロディライン、ピアノのコンピングやソロ、すべてです。期待を良い意味で裏切ってきます。
反復するモチーフを決める
さてウィントン・マルサリス達の高度なプレイは一旦忘れて(笑)、前回取り上げた「酒とバラの日々」のモチーフを再び使います。
今回はこれを反復して、リズム的に変形させていきます。
開始位置を変える
モチーフの形はそのままで、小節における開始位置を変えていきます。
モチーフの開始タイミングを0.5拍ずつ変えています。開始場所を変えるだけでも、同じモチーフがかなり違う聞こえ方をします。
長さを変える
今度はモチーフの構成音の長さを変えてみます。二音あるうちの最初の音を長くする(≒二音目を遅らせる)ような変形をしてみます。
開始タイミングを変えるのと同様に、予想より早く音が現れたり、逆に遅くに現れたりしています。
だから何なのか?
先ほどのウィントン・マルサリスの「Caravan」のソロの一節を1:53から聞いてみると、
同じフレーズを繰り返しつつも、リズムが微妙に変わっていくのがわかるかと思います。開始位置や伸ばす位置が変わっています。
このようなフレーズ展開の導出の仕方は様々です。ボキャブラリやパターン的なところであったり、ポリリズム・変拍子・数字遊び的に機械的に導くケースもあるでしょう。いろいろな人の音楽・演奏に触れて、着想を得るしかないと思います。
まとめ
今回はモチーフを反復する際の変形の要素としてリズムに着目し、開始をずらしたり、モチーフの構成音を伸ばしたりすることを紹介しました。
次回のテーマも同じくリズムで、ポリリズムかチェンジアップ/ダウン的な話を取り上げたいと思います。(了)