【音楽】アウトって何なの?
ジャズのセッションでご一緒する方々から、たまに「どうやって格好よくアウトするのですか」と聞かれます。我輩は本当に格好いいのか?と懐疑的に思いつつも、その流れでついに今度「アウトフレージング講座」なる、何ともいかついタイトルで講師をやることになってしまいました。何を話したものか。。そのための準備もかねて、自分の考えを言葉として整理していきたいと思います。
アウトって何さ?
そもそも音楽でいう「アウト」て何よ?ってところからだと思うのですが、決して人としての道を踏み外すことではなく、より一般的に言うならば「筋書き・期待と違うけど何か良い」ということかなと思っています。まあ当たり前のことかもしれません。
例えばどんなもの?
多くの方が「ナンチャラコードの上でほにゃららスケールを弾くと、なんかかっこいい」「このコードのときに、この音を使うとなんか違う雰囲気になるぞい」とかそういう本来の調性から逸脱した和声とか音使いのことをアウトと言ってる気がします。
例 : ジャズスタンダードにおけるアドリブ
以下のジャズスタンダード12key challengeの中でも自分はたぶんそういう「アウト」をしているようなので紹介します。
元記事
演奏
まるで苦行のようなこの8分間の演奏を辛抱強く聴いてくれる人がいたら逆に怖い気もしたので、その手?の人が食いつきそうなところを抜粋してツイートしてみました。
これが格好良いかは各人の感覚に判断をお任せしますが、ともかく調子っぱずれで、どっか行ってしまった感じはしますね。「アウト」と言えるでしょう。
言いたいことは
でも、こういうスケールやコードなどは単なる道具に過ぎなくて、それを覚えたからと言って何でもできるわけではないです。アルファベットや文法そのものに意味はなく、言葉を表現したり、分析したりするための道具であることと一緒です。
ここで、もともとの(私による)アウトの定義
に立ち戻りますが、私はこれをアウトとか特別な呼び方をするのではなく、コミュニケーション・表現の基本の一つだと考えています。
つまり、人を驚かせたり、ジョークで人を笑わせたり、ダジャレなど言葉遊びで面白くしたり、映画・ドラマでいうとアッと驚くあるいは引き込まれるストーリ展開みたいなものです。引用、パロディやオマージュなどは具体的なテクニックの例になると思います。
私が音楽(演奏や作曲、編曲)において退屈な状況から刺激を求めて予定調和を避けるときのマインドは、たぶんこれらと同じような感覚なのだと思います。こういうコミュニケーションで大切なのは、聞き手(や自分)の期待値をどう設定し、そこからどうするか、です。
なので、スケールやコードという要素より、この辺の根本的な話・考え方を共有し、具体化していけると、ありがたそうな話になるのではないかなと妄想しております。言語化はこれからだし、そんなにネタはあるのか、というのはありますが。
忘れてはならないこと
「このフレーズ弾けばジャズっぽい」「これであなたもIIm7 - V7マスター」とかそういうYoutube動画が国内外問わずあふれてます。また有難そうなツイートやブログもいっぱい探すことができます。良い悪いはさておき、コンテンツ供給過多の時代なのは事実です。小手先のテクニックや表面的な知識の断片を追っていると、何も得ずに人生を終えることになるのは間違いなさそうです。
例で挙げたスーパーナンチャラスケールの演奏みたいなのを表面的になぞる、つまりスケールを覚えてただそれを弾けるようになるようにがんばる、のはあまりよくないことです。音の響きを理解したり、その背景にどんな考え方があるかが重要です。
一番大切で確かなことは、私の書き物なんぞよりも、先人のやったこと(特に自分が好きなもの)を丁寧に聴き、そして採譜して、自分なりに分析することだと思います。分析の際に必要になったら理論など道具を探しにいくくらいでもいいような気がしてます。
音楽において、本当に重要な一次情報(情報量が最も多い)は音や歌であり、それを解説する言葉ではありません(私見)。
ということを踏まえたうえで、タイトルは「アウトフレージング」といかついですが、「アウトしてびっくりさせる」「変な理論や考え方をひけらかす」ことを目的とせず、より音楽を楽しむためのヒント・考え方を共有する、という観点でコンテンツを考えていきたいと思います。
お読みいただき、ありがとうございました!