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【SD】2021年ロックアウト突入前補強

先ずは読者の皆様に謝罪をしなければならない。


11月下旬に記したこのツイートで私は大きな間違いを犯してしまった。恥ずかしい限りだ。他でもないエリック・ホズマーのくだりだ。こんな事が正しい筈がない。

「転生話」と書いているが、生まれ変わるのではなく別世界に飛ばされる話なので「異世界転移」が適切だ。謹んでお詫びしたい。

他の部分は大体合っている筈だ。早くも実現してしまった予想もある。メジャーレベルでの選手獲得や異動が禁止される米国12月1日のロックアウト突入直前に行われた、パドレスの補強を見てみよう。

アダム・フレイジャー、マリナーズへ放出

マリナーズへ放出
アダム・フレイジャー(二塁&たまに両翼外野)

マリナーズから獲得
レイ・カー(AA-AAA左腕リリーフ)
コーリー・ロージャー(Low-A中堅手)

Twitterのボイスツイートで話したが、フレイジャーの放出理由は二塁の渋滞解消と来季$7M前半と目される調停年俸の削減だろう。来季は二塁レギュラーのジェイク・クローネンワースに控えのキム・ハソンジュリクソン・プロファーは残留見込みで、加えてシーズン半ばには野手トッププロスペクトのC.J.エイブラムスの昇格が見込まれる。

パイレーツでは.324AVG/.388OBP/.448SLGと好調だったが、移籍後は長打力が皆無なまま打率.260台の低迷。加えて今夏パイレーツからの主な獲得理由がフェルナンド・タティス・ジュニアの一時外野コンバートによりクローネンワースが二塁から遊撃に移る際の穴埋め、もしくはホズマー放出後によりクローネンワースが一塁に移る際の穴埋めだったため、ホズマーの放出に失敗しタティスが遊撃に戻って来た時点で居場所が無くなってしまった。外野も守れるとの触れ込みだったがレフト守備は覚束ない様子で、打順は固定しなかった。そのためか戦力ダウンの不安はほぼ皆無だ。

獲得したカーはドラフト外入団。左腕リリーフながら最速100mph超の4シーム、スライダー、スプリットを投げ、2021年はAAとAAAで13.5SO/9と三振の山を築いた。制球も改善し3.1BB/9。27歳でまだメジャー経験がないが、来季は手薄な左リリーフとして即戦力が期待されるだろう。

22歳のロージャーは今年6月にマリナーズからドラフト入団。12巡指名ながらLow-Aで31試合に出場し.390/.461/.585/3HR/13SBと、プロ初年度を堂々たる成績で終えた。メジャーデビューは2023年後半か24年辺りか。センターも守れるためレギュラーを務められるほど長打力が上がらなくても控え外野手になれる可能性もある。

ホルヘ・アルファーロ、マーリンズから獲得

パドレスはオースティン・ノラビクター・カラティニ、プロスペクトのルイス・キャンプサーノ3人の捕手を40人枠に抱えていたので、このうちの誰かがトレードに出されるのではと噂されていた。

そんな中でまさか4人目の捕手が獲得されるとはだれが予想したであろうか。

マーリンズから獲得
ホルヘ・アルファーロ(捕手)

マーリンズへ放出
金銭または後日発表選手

一部メディアからは後日発表選手で確定との報も流れたが未定のようだ。

アルファーロは2010年、16歳でレンジャースにコロンビア出身アマチュア最高額の契約金$1.6Mでプロ入り。パドレスGM、A.J.プレラーがテキサスのスカウト部門在籍時に獲得した選手である。マイナーでは強肩強打俊足の捕手として期待されMLBプロスペクトランクトップ50位入りするほどだったが、メジャーでは三振の多さと四球の少なさが祟りキャリアwRC+は89。昨年も92試合に出場し.244/.283/.342/4HRとパッとしない。

守備とフレーミングにも難ありで、2020年マーリンズのプレーオフ戦ではマスクを被っていない。そのため時折レフトや一塁守備に就かされるが、外野守備は全くの不慣れぶりを露呈している。

つまるところ長所(打球速度、強肩、スプリント、バレル率)と短所(その他もろもろ)の差が激しい、際立つ身体能力を野球に活かせないままの選手、もっと端的に言うなら粗削りアダルトだ。タイプは異なるが、そういう意味では同じくレンジャース時代のプロスペクトだったプロファーと印象が重なる。上手く嵌るとジョーイ・ギャロの様な選手になるのだろう。

プレラーの元お稚児さんとはいえ、さすがに優勝を狙うパドレスの正捕手は厳しかろう。主に代打、捕手と一塁の控えが妥当。このまま4人捕手を抱えたまま来季開幕を迎えるとは思えないので、おそらく他の3捕手のうち少なくとも一人は放出されるだろう。大物獲得トレードの目玉選手としてキャンプサーノを差し出す準備か。はたまた元内野ユーティリティのノラを捕手兼任のスーパーユーティリティとして起用するかとも考えたが、フレイジャーを放出しなければならない様にパドレスは内野ユーティリティだらけだ。

右リリーバー、ルイス・ガルシアFA獲得

ここからの投手補強3件は、ロックアウト24時間前に明らかになった。

パドレスは同名ながら有名ではない方のルイス・ガルシアを獲得した。アストロズの若手先発投手ではなく、34歳のリリーバーだ。

若くはない方とはいえ良い投手だ。34歳ながら98mph超えのシンカーを、スライダーとスプリットを織り交ぜる。2020年は低迷したが、昨年はカーディナルスで中継ぎとしてシーズン途中から34試合に登板し3.24ERA/0.99WHIP/0.5HR9/2.2BB9/9.2SO9と好成績だ。契約内容は2年$7MMとお手頃価格。

前阪神ロベルト・スアレス獲得

過去2季阪神タイガースで抑えを務めセントラルリーグ最多セーブを記録した右腕リリーフ、ロベルト・スアレスと1年契約を結んだ。ピアース・ジョンソンに次ぐ阪神からの補強。年俸は$7MM程度と目されている。

来季31歳で開幕を迎えるベネズエラ人で、ソフトバンクホークスと契約する前にはメキシカンリーグに居た。その前には母国で清掃員やタクシー運転手で生活費を得ていた苦労人。マイナーも含めアメリカでのプレーは初になる。

100mphに届くシンカーと、スプリット、チェンジアップ、スライダーを投げる。2021年は62試合を投げ1.16ERA/0.77WHIPと圧倒的な成績を収めた。8.4SO9という数字は近年のナショナルリーグでは平均(9.0)以下で一見見栄えがしないが、今年セリーグの平均7.53を超えている。また特筆すべきは1.2BB9と0.0HR9。ホームランを1本も打たれていない。今年のパドレスでHR0に抑えた投手の中で最多イニングを投げたのはマット・ストラムの6.2イニングと、スアレスの1割にしか満たない。

自前のファームで育たないからか、ガルシアとスアレスという速球派リリーバー二人を他球団から確保したが、彼らが7-8回を投げるか、もしくはFA後アリゾナ・ダイヤモンドバックスと2年契約を結んだNL最多セーブ投手マーク・マランソンの後釜として抑えを務めるかはロックアウト後の補強具合によるだろう。

前ソフトバンク、ニック・マルティネスを獲得

さらに福岡ソフトバンクホークスから31歳の先発右腕ニック・マルティネスを獲得。公式発表はロックアウト後だが契約内容は4年$20MMとのこと。4年も囲いながら$5MM/年に収まっている契約は最近ではあまり目に掛からない、どこか懐かしいにおいがしたすみれの花時計だ。

2014年、23歳の若さでドラフト元のレンジャースでメジャーデビュー。ローテーションの一角を担うも4年通算ののERAは4.77、ERA+は91とパッとしなかった。

元々三振を多く奪うタイプではなく、北海道日本ハムファイターズに入団してからも打たせて取るようなピッチングを続けていた。しかし故障明けホークス移籍初年度の今年は4シームと2シームの球速が90mph半ばまで届き、奪三振率、そして制球も改善。21試合140.1回を投げ1.60ERA/0.89WHIP/0.4HR9/2.8BB9/8.8SO9と過去最高の成績。8年ぶりのメジャー登板を目指す。

ここで浮かぶ疑問は、なぜパドレスが先発投手を獲ったのかという点。ダルビッシュ有ジョー・マスグローブブレイク・スネルマイク・クレビンジャークリス・パダック、また来季の起用法は不明だがディネルソン・ラメットライアン・ウェザースも居る。元MLBトップ左腕プロスペクトのマッケンジー・ゴアもメジャーデビューを目指している。

これだけの頭数が揃いながらもマルティネスを獲った理由は、今季終盤大失速を招いたバックアップ先発投手層の改善だ。上記7投手のうち、昨年怪我人リストに一度も名前が記されなかったのはマスグローブだけだ。フォームを崩しアリゾナの練習場で再調整を強いられたゴアを除くAA-AAAの先発投手は非プロスペクトで即戦力に勘定するには至らない。そしてトレード期限後に補強できるのはジェイク・アリエータビンス・ベラスケスの様な他球団戦力外の投手のみだ。

そしてダルビッシュ、スネル、パダックはILでシーズンを終えている。特にパダックはUCL(内側側副靭帯)に部分裂傷が見つかっており、回復度合いは不明だが長期離脱の可能性も考えられる。そしてクレビンジャーはトミージョン手術上がりで2020年プレーオフ以来の登板。シーズン序盤は投球数制限が強いられる。

この様に各投手が不安を抱える中で、イニングを稼げる投手を予め確保しておきたかったのだろう。既存予定の先発5投手にトレード放出や故障が無ければ、マルティネスがシーズン序盤は投球数制限下におかれるクレビンジャーの後ろを投げるなどロングリリーフの一員になる可能性もあるが、先発の機会は多かれ少なかれ回ってくるだろう。

ロックアウト後

今年は補強に投資できる金銭やプロスペクトに乏しいため、静かにロックアウトを迎えるかという一抹の不安もよぎったが、終わってみればラスト24時間で3投手獲得という、我らがA.J.プレラーによる冬の風物詩ラピッドファイア補強を目の当たりにした。アルファーロはともかく、フレイジャー放出トレードも左腕リリーフ、レイ・カーの補強に役立っている。他球団の様な大物FA獲得と異なり派手さはなかったが、ブルペンに厚みが増し先発5番手も得られた堅実な戦力アップといえよう。

しかし、それでもパドレス最大の穴がまだ埋まっていない。その話はまた次回。




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