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ソリッドなモノクロームの世界

リチャード・セラ写真集
『Te Tuhirangi Contour』

ニュージーランドに「ギブス・ファーム」という牧草地がある。ここは野外彫刻公園でもあって、アニッシュ・カプーアの赤い膣のようなラッパ型作品や、ダニエル・ビュランのトレードマークの縞模様作品が設置されている(これは3キロ以上にわたって続く)。
リチャード・セラの巨大彫刻作品も見ることができる。それは「等高線(Contour)」というなの作品で、赤く錆びた鉄板が、地形に沿って埋め込まれている。鉄板の高さは6メートル、長さは257メートル。真上からの見ると、巨大な蛇が脱皮した跡に見える。

それをモノクロで撮り下ろした写真集。サイズとしては中判で、A4よりもひとまわり小さい。この写真集、見ていくと、終始心地よい静謐さが続く。

ジャケットと言いたくなるような美しいカヴァーに惹かれる。牧草地の丘を横断する黒い鉄板。その上の空は、雲が重なり翳っている。カバーを開けた本体は、真っ黒な布地に白い文字でタイトルがある。中面も写真の配置やセレクトが完璧で、この彫刻作品とともに、散策している気分になる。

”よくできている”と思ったら、セラと写真家がブック・デザインを担当していた。そして印刷は、Steidl社。この写真集も、”世界一美しい写真集を作る男”の仕事だった。

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