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ゴルソンのアレンジで気持ちよく歌う、アビー・リンカーン
Abbey Lincoln 『It's magic』
録音:1958年7月・8月 NY
編曲:ベニー・ゴルソン
1957年に制作した『ザッツ・ヒム!』に続く、アビー・リンカーンの3rdアルバム。前作でソニー・ロリンズ、ウィントン・ケリー、ポール・チェンバースらと共演し、運命の人・マックス・ローチとも出会ったアビーが、さらに一歩進んで吹き込んだ意欲作。
ここでは、ケニー・ドーハム、アート・ファーマー、カーティス・フラー、ベニー・ゴルソンといった名手たちによる4管のホーン・アンサンブルが目を惹く。それに加えて、ウィントン・ケリー、ポール・チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズという鉄壁のマイルス・バンドのリズム・セクションが参加するという豪華な布陣。
彼女は、この最高に安定したバンド・サウンドに、自分の歌を楽しそうに乗せる。社会派の側面も強く持つリンカーンだが、ここではご機嫌にジャズの世界を楽しんでいる。間奏になると体を揺らして踊る彼女の姿が浮かんでくる。
アビーのジャズ・ライフは、紆余曲折を経たものにはなるが、80年代、90年代、2000年以降もアルバムを発表し続ける。音源を出すだけではなく、サウンドのコンセプトを決め、アレンジも行うなど、音楽的能力の高さを発揮する(生命を燃やし尽くす前のスタン・ゲッツに声をかけて、共演アルバムを作ってもいる)。
ジャズ・ボーカリストとしては珍しいこういうパフォーマンスは、彼女のデビューまもない50年代から行われていたのだろう。”ただ歌うだけじゃなく、ジャズがよくわかっているシンガー”。これだと現場も楽しくなる。だから若手の意欲的なミュージシャンたちが彼女のまわりに集まった。
ベニー・ゴルソンのおしゃれでツボを抑えた、”こなれたアレンジ”も魅力。ゴルソンはこの録音直後の10月、アート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーの「復興請負人」としてフロントに立ち、見事にバンドを立て直す。そして大ヒット作『モーニン’』を制作する。
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#アビー・リンカーン #ベニー・ゴルソン #ジャズ・ボーカル #女性ボーカル