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アンナー・ビルスマ 「神が自分で音楽を楽しもうとする時は、ボッケリーニを選ぶ」


録音:1999年 東京・ルーテル教会(ライブ)

これはチェロ奏者、アンナー・ビルスマの来日ライブ演奏の記録。古楽器奏者と知られる彼のチェロには、ガット弦(羊の腸)が張られている。彼は、フォルテ・ピアノとのデュオで、自分で選んだ好きな曲を、伸び伸びと演奏している。

通常、クラシック音楽のCDを聴く時、曲目と演奏を聴く。しかしビルスマの場合、彼のチェロが鳴っているというだけで満足してしまう。彼のチェロの響き、音色に包まれていることで充足する。

かつてビルスマは、こんなことを言っている。
「チェリストを審査するコンクールで、1音だけを弾いてもらって、それを審査するというものがあればいいと思います」

ビルスマは1959年にカザルス・コンクールに優勝し、世界的な演奏家となると、多忙なスケジュールに追われ、音楽家というよりはパフォーマーという形になった自分に納得でき無くなった。そこで”もう音楽をやめて、医師になろうか”と思ったという。そこで古楽と出会い、古学派の演奏家たちとの交流が始まる。このことが彼の音楽への情熱と興味を刷新し、再び演奏家の道へ戻ることになった。

ビルスマの演奏の最大の特徴は、自由なファンタジーにあり、どんな曲であっても、2度と同じ演奏をすることがなかったという。コンサート前の練習で、うまく合わない箇所があったとしても、細かなことは一切言わない。「言葉にするとそれはもう音楽ではなくなってしまう」が彼の口癖。

アルバムの1曲目は、ボッケリーニ。
ビルスマは、この作曲家について、よくこの言葉を使う。
「神が、音楽を通じて人に何かを語りかけようとする時は、ハイドンの交響曲を選ぶだろう。しかし神自身が音楽を楽しもうとする時、彼が選ぶのはボッケリーニだ」

白黒のアルバム・ジャケット(Tokyoの文字だけがゴールド)が素晴らしい。ビルスマ・ファンとしては、買わずにいられない。

#アンナー・ビルスマ #チェロ #ボッケリーニ


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