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さいはて

あなたはほんとうのさいわいを探して、あの銀河鉄道に乗って、行ってしまった。

私を残して、行ってしまったんだ。

一、

生まれること、死んでゆくこと、綴ること、想うこと、祈ること、願うこと、変わってゆく時代、変わりゆくひとたち、まわりまわる地球と惑星。

あの星に、手が届きますようにと願った幼子。
はい、間違えないのです。私でした。

水をためたお椀に満月を浮かべ、すくいとってあげようとしたのも、私でした。
あなたは、それをただ穏やかな目でもって見つめておりましたね。

戦線離脱をしましょうよ。
愛しても恋しても、きっときりがない。
やさしさが真綿のように首を締めあげます。

堕落を貪る私は、悲鳴もあげず待っている。
日々が、殺されてゆくのを待っている。

二、

私って、変?

三、

ノラがもどってこないのは、扉を閉めたせいだった。

思い出を振り返ると、後に残るものは何?

四、

誰の真似か、真似て学べとは誰が言ったのか?

五、

曾祖母の秘密を知っている。

恋とはね。
そう、そうらしいの。

六、

あなたが、私を見つめるときは、きっと深淵よりも深刻な悩みがあるのでしょう。
私も、そうだから。

恋愛感情と性欲を切り離せるニュータイプの人類が誕生した事をきっと昔の文豪たちは知らない。

ニュータイプな人類にあうように、新たに言葉を綴り直す必要がありますね。
まるで、サイズの違う服装をそのひと、ひとりひとりにあうように採寸して、裁断して、縫い合わせるように縦と横の糸を通してゆきましょうと微笑むひとは、なんとも楽しげで。

恋とはなんでしょう?
罪深いお遊戯なのでしょう?

七、

体は、いずれ朽ちる。
朽ちて果てれば、いずれ忘れ去られる。

言葉だけは、いつまでもありつづける。
言葉になれば、寄り添える?

それは、浅はかな私の呪いです。

八、

睡眠は、仮死。
走馬灯は、夢。
目覚めて、気がつく。

あ、まだ、呼吸して。
あ、生きてたい。

あなたとの記憶が剥がれないうちに、そっと綴る言葉の数だけ祈ってる。

綴ることは、無償の愛でした。

あ、生きて。
それから、死んでゆく。

あたりまえの事だった。

希死念慮を燃やして、生きてる。

九、

グッド・バイ。なんて、キザだ。
別れたければ、無言で去ればいいのである。
グッド・バイ。だなんて、ヤボだ。
さよならだなんて、したくないんだと素直に言えたらいいんだ。
さよならなんて、大嫌いだと言えばいいんだ。

そんな簡単なことが、どうして言えないんだ。

十、

救急で運ばれた時に、死んだ。
そうして、生まれ変わった。
生まれ変わったから、知らない土地の空気と匂いとをめいいっぱいに吸い込んだ。
冷たい雪国の冷気が、肺を刺すようだった。
生まれ変わったんだろう。

十一、

罪。恥、罰。
娑婆苦、労、四苦八苦。
逃れることは出来ない、生のあることの悩み。

心配するな、最後は皆。
髑髏。

祖父の頭蓋骨は、意外と大きかった、な。

十二、

蛇足

旅を支えてくれた者には、感謝を添えて。
いつか、お礼が出来ればいいのですが……。

2024/02/26
雑記
辻島 治

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