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カンツバキ'獅子頭' 〜冬に咲く素晴らしい常緑の花木〜
冬の庭で綺麗に咲き続けてくれる常緑の花木をお探しなら、私が第一に推すのがカンツバキ'獅子頭'です。
晩秋から冬に咲く耐寒性の常緑の花木と言うだけで世界から絶賛されるのですが、原産国の日本ではあまりにありふれているために粗末に扱われているのがカンツバキ'獅子頭' Camellia hiemalis 'Shishi-gasira' (syn. Camellia sasanqua 'Shishi-gashira' ,Camellia 'Hiemalis') でしょうか。単にカンツバキ(寒椿)と呼ばれることも多い栽培品種です。
紅葉する木々の葉が散りゆく中で、カンツバキ'獅子頭'は光沢のある濃緑の葉の間から紅を含んだ濃い桃色の華麗な半八重咲きの花がつぎつぎと咲いてくれます。
しかも性質が強く、移植に耐え、萌芽力が強くて、枝が密に繁り、枝が横に伸びやすく樹高が低い、日向が良いが耐陰性も持ち合わせており、さらに挿し木繁殖ができると、良いところづくめです。まさにパーフェクト!
無論、ツバキ科の植物ですからチャドクガの魔の手は逃れようがありませんが、私はカンツバキ'獅子頭'での発生例はあまり見たことがありません。
あまりに使いやすいのでデリカシーに欠ける使い方をされているので、庭に植える方は少ないように思いますが素晴らしい植物です。
最近のツバキやサザンカの本では面倒くさいのか愛情に欠けるのか、サザンカの栽培品種にカンツバキ'獅子頭'を含める事が多いのですが、この後に説明するように雑種植物ですからサザンカに混ぜてしまうわけにはいきませんし、サザンカならあるはずの茎の毛がありません。
カンツバキはサザンカ Camellia sasanqua が関わった栽培植物であることには疑いが無いのですが、成立の過程は謎のままです。
カンツバキは独自の遺伝子を持っていて、これがカンツバキを特徴づけているようです。この遺伝子は野生型のサザンカ Camellia sasanqua には無く、ヤブツバキ Camellia japonica にもごく稀なものです。
カンツバキはサザンカやハルサザンカ Camellia vernalis と子孫を作れますから、栽培品種のサザンカやハルサザンカにはカンツバキの血が混じったものがあります。
カンツバキ'獅子頭'の知られている最古の古木は三重県菰野町にある『奥郷 Okugou のカンツバキ'獅子頭'』で推定樹齢200年の木です。
カンツバキ'獅子頭'は普通は高さ1mぐらいですが、この老木は高さ5.5m、幅7.5mにも達している見事なものです。古木は本州の中部地方に多いと言います。
大阪など関西方面で広がり、その後、東京方面で売り出された1933年に『カンツバキ(寒椿)』の流通名が付けられました。栽培品種としての記録は1894年の『日本園藝会雑誌59号 Nihon-Engeikai-zasshi No.59』にあるのが最初です。
あまり大きくならず、性質が強く、花の少ない時期にたくさん咲いてくれる、常緑の花木を求めるなら、このカンツバキ'獅子頭'を勧めます。
DATE:
名前:カンツバキ'獅子頭'
学名:Camellia hiemalis 'Shishi-gasira'
異名:Camellia sasanqua 'Shishi-gashira' 、Camellia 'Hiemalis'
特徴:常緑樹 低木 冬咲き 丈夫 耐陰性あり 耐寒性あり 萌芽力強い 移植力あり
原産地:日本(おそらく本州中部地方から近畿地方)
成立年代:18世紀?
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