#35 DX推進における慣性とエントロピー
札幌でちいさな貿易商社を経営している、ケニー(tsujikenzo)です。noteでは、Tweet以上、技術ブログ未満の、アウトプットを行っています。
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シリーズで「業務効率化の向こう側にあったもの」をお届けしています。第3回目のテーマは、「DX推進における慣性とエントロピー」です。
DX推進とは
DX(デジタルトランスフォーメーション)推進とは、ここでは「デジタル技術を活用し、業務プロセスや職場環境を変革することで、より生産的で柔軟な働き方を実現すること」と定義します。
DXのおさらい
DXには、3段階のステップがあるという理解は、浸透してきたと思います
デジタイゼーション (Digitization)
アナログデータ(紙の書類、音声、画像など)をデジタルデータに変換すること
例: 書類の電子化、音声のデジタル録音、写真のデジタル化
デジタライゼーション (Digitalization)
業務プロセスやサービスをデジタル化し、デジタル技術を活用して効率化すること。デジタルデータやシステムを使った業務フローの改善
例: 電子申請システム導入、クラウドサービス利用
デジタルトランスフォーメーション (Digital Transformation = DX)
デジタル技術を浸透させ、データとデジタル資産を活用することで、従来の価値観や組織文化、ビジネスモデルを抜本的に変革すること
製品/サービス、ビジネスプロセス、組織文化・風土の大きな転換
例: AIを使った新製品開発、顧客起点のデジタルサービス
DX推進、どんどんやっていきたいですよね。
組織の慣性
企業経営においては、組織が状況の変化に適応できない、あるいは適応しようとしない性質を「慣性」と呼びます。改革プログラムに全力に取り組み始めたとしても、大組織が基本のところを変えるまでには、何年も掛かることがあります。その頃には新しい時代になってしまっている可能性もあるでしょう。
組織の慣性には、以下の3つがあります。
業務の慣性・・・一般的に組織の標準的な業務手続きは、古いやり方を守ろうとする方向に作用する。
文化の慣性・・・組織にどっしりと根を下ろした社会的行動や価値観は、変化に強く抵抗する。
委任による慣性・・・「まだ儲かってるからいいじゃないか」論。儲けさせてくれているのは、顧客であるため、「顧客からの委任」という慣性が組織には働いている。
世の中には、色んな組織があるので、主語を大きくしたり、ひとくくりにしたくはありませんが、多くの組織は「みんながやるときにウチもやる」という選択をするのではないでしょうか。また、その選択や、体験事例に基づいた行動を取るのが、組織だと思います。
そのような行動を取る、もう1つの理由が「エントロピー」の存在です。
エントロピーとは
企業経営におけるエントロピー(本来は物理学における熱力学の概念)とは、組織内での無秩序や無駄の蓄積や不確定性を指します。具体的には以下のようなことが考えられます。
重複業務や非効率的な業務プロセスの増加
環境変化への対応の遅れによる陳腐化
情報の共有や伝達の不備による誤解や混乱
意思決定の遅延や停滞
このようなエントロピーが組織内に蓄積していくと、生産性が低下し、変化への対応力が失われます。一時的に社会の変化に対応できた企業(例えば補助金を使って最新の設備投資をした)などであっても、常にエントロピーは増大します。
つまり、「組織を変えよう」という試みは、慣性の法則とエントロピーにより「やってもやってもキリがない」となるため、「みんながやるときにウチもやる」という選択をするのかもしれません。
わたしたちがやらないといけないこと
最後のセクションです。
発想を逆転しましょう。VUCA(ブーカ)のような不確実な時代においては、エントロピーを減らすことに注力する代わりに、エントロピーを活用する方法を考えた方がいいでしょう。業務によっては、エントロピーを逆転させる必要もあるかもしれません。
以下のようなアイディア出しは、ChatGPTなどの生成AIが得意とするところです。
エントロピーを前提とした柔軟な仕組み作り
小さな実験の積み重ね
情報の流れを重視
人材の多様性とエンゲージメントの向上
アジャイル的アプローチの導入
デジタル人材の確保と権限移譲
既存システムとの連携を意識したDX推進
ビジネスアーキテクチャの再構築
このような議論や、社会の変化に対する課題にスポットライトを当てる作業は、組織の慣性に逆らう力を持っていると思います。組織を変えよう変えようと奮闘するのではなく、「組織は変わった方がメリットがある」という仕組みを作ってみませんか?
次回も、「戦略」をお届けします。