明るく上質なライブがドルビー・サラウンドで堪能できる劇場版「歌会 vol.1」
三連休、時間ができたので、映画館に足を運んで中島みゆきの劇場版「歌会 vol.1」をみた。
2020年1月に幕を開けた2020ラストツアー「結果オーライ」(日本全国を回るツアー形式のコンサートは最後とされていた)は、始まったばかりの2月末、コロナ禍による突然の中断を余儀なくされた。
4年が経った2024年1月から5月までの期間、4年ぶりのコンサート「歌会 VOL.1」が東京と大阪で開催された(全16公演)。
今回の映画は、2024年5月8日と10日の東京国際フォーラムでの公演の映像記録である。
やはり映画館で見ると、音の迫力がすごい(ドルビー・サラウンド)。これからブルーレイが出るとしても、映画館で見る価値はあると改めて思った。
コンサートの内容については、多くの方がnote等で記事にされているとおり、上質でよく練られたステージで素晴らしかった。ご健在をこの目と耳で確認することができて、うれしかった。
以下、1オールド・ファンの心に留まった雑感を点描してみたい(末尾セットリスト参照)。
その1。約50年前の曲「06.店の名はライフ」を余裕の表情で楽しそうに歌っているのが印象的だった。アンニュイに歌う当時の歌唱とはまったく違う世界観を示してくれていて、おもしろかった。
その2。曲の冒頭でバッキング・ボーカルの三人(石田匠、杉本和代、宮下文一)が順番にアカペラでリードをとる「08.愛だけを残せ」。三人三様の技と魅力をダイレクトに味わえたのは贅沢だった。
コンサート・ツアー「明日を撃て」(1984年)あたりから継続してバック・コーラスを務めてきた“カズちゃん”が今もメンバーにいるのは大変喜ばしい。
その3。「夜会」コーナー(09 ミラージュ・ホテル~13 リトル・トーキョー)も贅沢な時間だった。この5曲、みゆきさんは1曲ずつ衣装替えをしながら、アクティブに連続して歌い上げた。
「夜会」コーナーの各曲を懐かしく聴きながら、今の中島みゆきからは、20~30年前の創作意欲が迸っていた時代の自身や「夜会」作品群は、どのように映るのだろうかと思った。あの熱い“一触即発”の時代を、ご本人はどう振り返るのか、とても興味があります。
私は、40~50歳台の円熟期に、やりたい表現に向けてどん欲に突っ走っている様をリアルタイムで目撃できたことの幸福を改めて噛み締めた。
その4。アンコールの2曲は圧巻だった。コミカルに、フィジカルに、かつキュートに歌いきる「18.野ウサギのように」。圧倒的な歌唱力とバックの演奏力を見せつけられた「19.地上の星」。
今回のライブ全体を通しての印象は、「過去を愛でつつ、現在にもしっかり目を凝らしたうえで、未来に前向きな希望を感じるよう導いてくれる」ものだった。その意味でも、十分に説得力のあるアンコール2曲のパフォーマンスでこのコンサートは締めくくられた。
その5。映画のエンドロールが完全に流れ切った後しばらくしてから、「おまけ」映像が流れる。これが必見だ。
リハーサル風景やバックステージなどを記録した5分程度のメイキング映像。とにかく明るい。中島みゆきほかメンバー全員の素敵な笑顔の連続で、感動するくらい明るい気分になれる。見逃す手はありません。
劇場版では、「おたよりコーナー」がカットされていたけど、同コーナーの演出を手がける寺崎要氏(通称ポチ)の満面の笑顔を見ることもできたのも感慨深かった。
劇場版「歌会VOL.1」 上映セットリスト
はじめまして(1984年10月「はじめまして」所収)
歌うことが許されなければ(2020年1月「CONTRALTO」所収)
倶(とも)に(2022年12月)
病院童(2014年11月「問題集」所収)
銀の龍の背に乗って(2003年7月)
店の名はライフ(1977年6月「あ・り・が・と・う」所収)
LADY JANE(2015年11月「組曲(Suite)」所収)
愛だけを残せ(2009年11月)
ミラージュ・ホテル(2004年1月 夜会vol.13「24時発00時着」)
百九番目の除夜の鐘(2008年11月~09年2月 夜会vol.15「~夜物語~元祖・今晩屋」)
紅い河(1995年11~12月 夜会vol.7「2/2」)
命のリレー(2004年1月 夜会vol.13「24時発00時着」)
リトル・トーキョー(2019年1~2月 夜会vol.20「リトル・トーキョー」)
慕情(2017年8月)
体温(2023年3月「世界が違って見える日」所収)
ひまわり“SUNWARD” (1994年10月「LOVE OR NOTHING」所収)
心音(しんおん)(2023年9月)
野ウサギのように(1988年11月「グッバイ ガール」所収)
地上の星(2007年7月)