小泉今日子は楽しくて、賢くて、時にちょっと暗めで、かわいくて、胆が据わっていて、かっこいい
Kyon2との出会いは、1987年頃(大学1年頃)。直接のきっかけは覚えていない。1982年にデビューしてからアイドルとしてヒットを飛ばしていたKyo2だけど、その頃はとくに興味を持っていなかった。
大学に入ってから、急速に歌手・小泉今日子の魅力に目覚めた。自分の学生時代とシンクロする90年前後のKyon2は、いま振り返っても、アイドルとしての絶頂期を超えて表現者として様々な可能性を模索・展開し始めた最も活力あふれる時期だった。
まず、アルバム「Phantasien」(1987年7月)の独特の世界観と歌唱、ミュージックビデオの表現力に唸らされ、映画「怪盗ルビイ」(1988年)の超キュートな演技にメロメロになり、ライブビデオ「BEAT TICK CAMP TOUR '88 Vol.1, Vol.2」(1988年9月)で歌手・小泉の実力に瞠目させられ、「KOIZUMI IN THE HOUSE」(1989年5月)の刺激的でかっこいい展開にはまり込み、一転してバラードの名曲カバー「グッバイ・マイ・ラブ」(1990年7月発売「No 17」所収)のしっとりとした表現力豊かなボーカルに感嘆させられ、という具合に、目まぐるしく多方面で才能を開花させ続ける小泉ワールドに引き込まれていった。
「Phantasien」の頃から、Kyon2はこれら歌手・俳優としての活動と並行して作詞にチャレンジしている。90年代にリリースした曲の多くは自身が作詞しているが、なかでもドラマ「パパとなっちゃん」の主題歌「あなたに会えてよかった」(1991年)はミリオン・セラーとなり、Kyon2は日本レコード大賞の作詞賞をもらっている。
21世紀になるとKyon2は著述家として才能を発揮するが、その前に実は作詞家として数々の名作を残していた。
90年代以降現在に至るまで、俳優として、文章家として、舞台のプロデューサーとして、さらに活動の場を広げて今日に至る。「小泉今日子書評集」(2015年)、「黄色いマンション 黒い猫」(2016年)、「小泉放談」(2017年)などの著作において、揺らぎながらも自身のとるべきものの見方や立ち位置を探る姿勢とそれを絶妙なバランスの中で表現する様が潔くて凄い、と思う。
(元)アイドルとして徹底的に陽性である一方、ありようや活動のなかに確実に内省的な面が存在し、つねに自分に向き合って表現・発信しているところが他と一線を画しているのだろう。
Kyon2は80年代からアイドルとしてキャリア自立していた稀有な存在であり、表現の幅をどん欲に広げながら、しなやかな感性・知性を磨いてきた。楽しくて、賢くて、時にちょっと暗めで、かわいくて、胆が据わっていて、かっこいい。
そんな人としての魅力に裏付けられた表現活動は、これからもますます楽しみだ。