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マリーンズ吉井監督の「機嫌のいいチームづくり」を見守りたい

千葉ロッテマリーンズ吉井監督の最新の著書は、「機嫌のいいチームをつくる」(2024年7月発売)である。
ビジネスの世界も意識して書かれた組織マネジメントに関する書籍で、内容・分量とも相応に読みごたえがある。現役時代はやんちゃで鳴らした吉井監督だが、引退後は筑波大学などで学びながら、理論を踏まえて自身の経験や考えを言語化する作業を継続している。
本書が6冊目の著書のようである。

同書では、吉井さん流のワーディングである「機嫌のいいチーム」とは何か、なぜそれを目指すのか、どうしたらそうなるのか、マネージャーとしては何をするべきかなどについて持論が展開されている。

本書全体の核となるいちばん大切なことが、第1章の冒頭に記されている。該当箇所を引用する。

常々思っていたのは、主体性と自主性には違いがあるということだ。それぞれの言葉の意味を見ると、次のように説明されている。
主体性:自分自身の意思や判断に基づいて行動を決定する様子
自主性:当然になすべきことを、他人から指図されたり、他人の力を借りたりせずに、自分から進んでやろうとする様子
このように、主体性と自主性は明確に意味が違う。主体性には自分の意思や判断が含まれているが、自主性には含まれていない。

吉井理人「機嫌のいいチームをつくる」p 17

吉井さんは、「主体的思考ができるかどうか。それが強いチームと弱いチームの分かれ道だ」と言い切っている。

会社組織などでも「主体性」と「自主性」の違いを意識することは大切である(あまり意識されないことが多い)。
組織統制を重視するのであれば、メンバーの「自主性」発揮を促して、つねに上司の考えていることを先回りして動くことを求めることになる。
一方、組織活性化を重視するのであれば、メンバーの「主体性」発揮を促して、組織の中での自分の役割を自分で考えて動くことを求めることになる。

両者は本質的に相反する部分が多いので、両方を同時に同程度で求めると必ず混乱が生じる。めざしたい組織やメンバーのタイプを見ながら、どちらを重視するべきかを判断して、組織運営することが重要になる。
後者の考え方をとる組織は、シェアード・リーダーシップ(全員がリーダーシップを発揮している状態)を目指す組織で、組織目標を全員が共有したうえで、各々が各々の持ち場で主体的にやるべきことを考える。
メンバーに求められることは高度になり、組織マネジメントの難易度も高くなる(自分は、この考え方に立脚した組織づくりに失敗してきた自覚がある)。

吉井さんは、本当に強いチーム=メンバーが機嫌よく野球をやれるチームと考え、それを作るために、メンバーの「主体性」発揮を促し、そのための環境づくりを心掛けねばならないと主張している。そして、やはりプロ野球のチームにおいては、全員がリーダーになるべきで、キャプテンはいらないと明言しておられる(但し、2025年のマリーンズは諸事情からキャプテンを復活させたらしい。この辺りの柔軟性は吉井さんの持ち味と言える!)。

3年目の吉井監督、果たして高度な組織マネジメントに成功して、「機嫌のいいチーム」を作り上げてくれるかどうか。
マリーンズファンの私としては、期待して見守りたい。

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