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『劇画・絵恋ちゃん』と『キャビネット・タウンへようこそ』の感想

『劇画・絵恋ちゃん』の感想をTwitterに書こうとしたら長くなっちゃいそうだったので、こちらにメモ。

リアルタイム配信時にはあまりちゃんと見られず、再配信のタイミングでしっかりと見られたので、遅くなってしまった。

劇画・オバQ

この作品を作るに当たって、一番直接的にインスピレーションを受けたのは、明言されているように『劇画・オバQ』なんだろうな。

リアルタイムでの配信時、冒頭15分くらい見逃したから、『劇画・絵恋ちゃん』という真のタイトルを知らずに見てたんだけど、話の展開と、あとこの写真を見て、『劇画・オバQ』みがあるな、と思ってたら、最後に『劇画・絵恋ちゃん』というタイトルが出て驚いた。やっぱりそうだった。

と言っても、『劇画・オバQ』をちゃんと読んだことはなく、それがどういう内容か、どういうテーマが扱われているのかを聞いたことがあった程度なので、細かい描写がどこまで『劇画・絵恋ちゃん』に採り入れられてるかは不明。

シン・ゴジラ

『シン・ゴジラ』のキャッチコピーは「現実(ニッポン)対 虚構(ゴジラ)」だった。

『劇画・絵恋ちゃん』にキャッチコピーをつけるとしたら、「現実(ニッポン)対 虚構(絵恋ちゃん)」なんてどうかな。

作中、やたらと「絵恋ちゃんの活動」は「現実」と対比させて描かれる。

社会人になって、毎日いっぱいいっぱいだけど、なんとか生きている、老けてすっかりキモいおじさんとなった主人公のオタク。

コロナ禍で動員が減ってしまい、アイドルをやめてしまう、るなっち☆ほし。

結婚に向け、現実的な話をする彼女(姫乃たま)。

そんな「現実」と向き合う人たちに対して、
「ちっとも変わらず、あの頃と同じ」で、今も「14歳」を続けている絵恋ちゃんは、「虚構」を象徴する存在になっている。

きょ‐こう【虚構】 の解説

1 事実ではないことを事実らしくつくり上げること。つくりごと。

2 文芸作品などで、作者の想像力によって、人物・出来事・場面などを現実であるかのように組み立てること。フィクション。仮構。

中盤のオフ会のシーン。
つらく厳しい「現実」と「虚構(オタク活動)」の狭間で悩むオタクたちに対して、絵恋ちゃんは楽しそうに「えれ婚」の話をする。

絵恋ちゃんの活動の中でも、「32名のオタクと結婚式を挙げる」というのは、とびきりに虚構性が高い企みだったと思うし、同時に絵恋ちゃんの「ずっと、虚構の中で絵恋ちゃんとして生き続ける」という強い決意を感じたイベントでもあったので、

あのシーンで、数ある「絵恋ちゃんの思い出」の中から「えれ婚」の話を選んだのは、必然だな、と思った。

虚構がないと、現実を生きていけない。

ぼくはそう。これを読んでくれてる人は、きっとそんな人たちばっかりじゃないかと思う。
虚構がなくても現実を生きられる人は、どうやって生きているんだろう?想像もできないな。

虚構、ありがとね〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!

トイ・ストーリー4

絵恋ちゃんは、以前『トイ・ストーリー4』を観て、「ギャビー・ギャビー」にとても感情移入した、と言っていた。ハロウィンのコスプレイベントで接触した時の会話だったかも。ギャビー・ギャビーのコスプレをするか迷った、って言ってたから。

みんなはもう『トイ・ストーリー4』は観てる?

ギャビー・ギャビーは、アンティークショップのキャビネットの中に住んでいる、女の子の人形のおもちゃで、
内蔵されているボイスボックスが故障しているせいで、なかなか持ち主に巡り合うことができず、いつかこどもに愛されるおもちゃになることを夢見ているキャラクター。

白い襟で、水玉の黄色いワンピースを着ている。

もしかして、この『トイ・ストーリー4』と「ギャビー・ギャビー」にも、インスピレーションを受けたのでは?と思ったのは、この『劇画・絵恋ちゃん』で初披露された新曲『キャビネット・タウンへようこそ』を聞いたとき。

あか しろ ビンゴの   トンネルを くぐれば
しゅわ しゅわ 空から   いびつな 棚がならぶよ

ちなみに、このアンティークショップに、主人公のウッディとボー・ピープが乗り込む直前、二人は移動式遊園地のメリーゴーランドの下に潜り込むのだけど、そのメリーゴーランドのテントは赤と白のストライプですね。きっと、ただの偶然だけど。

キャビネット・タウン    愛されて 愛されて こどくなおもちゃ箱
キャビネット 宝の地図 秘密基地 抜け穴    きみから見えない
キャビネット・タウン うそのまち

こどくなおもちゃ箱


ウッディも、この映画の冒頭で、新しい持ち主に遊んでもらえず、クローゼットの中に残されるシーンがあるよね。トイ・ストーリーシリーズ全体を表してるようにも捉えられるし、アイドルという「虚構」に生きる人たちを表してるようにも捉えられる。

おわらない木目と    まやかしの角砂糖
まるい まるい たまごのめだまは

アンティークショップの店主の孫娘のハーモニーに、いつか愛されるため、ハーモニーの真似をして、ティータイムの練習をするギャビー・ギャビー。このときのハーモニーのセリフには「お砂糖 2つ」とある。

フォーキーもかわいいよー!おめめくりくりで目玉焼きみたいだよー!

キャビネット・タウン    愛されて 愛されて
愛されて 愛されて 100年経っても    大人がいないまち

「大人」とは、ここでは「現実」に向き合っている人のことを指していると思った。

アイドル現場は、「現実」に向き合いきれず、「虚構」に生きる望みを託したオタクやアイドルが集まる、「大人がいないまち」だね。

絵恋ちゃんが劇中で話している「コインロッカー」の話も、このキャビネットのイメージと重なってくるかもな。

「虚構」を摂取して、生き延びるために、「現実」は一旦、ロッカーに預けさせてほしい。

あ、えれナイが始まりそうなので、終わります。

目に映る全てのことは メッセージ

追記 1(2022/04/13 00:50:00)

『キャビネット・タウンへようこそ』の歌詞、絵恋ちゃんはほとんど1日かからず書き上げたらしい。(ソースはえれナイ)

すごー!!!!!!!やばー!!!!!!!!

で、一番大事なことを、言い忘れていた。
この曲の好きなところは、曲のタイトルが『キャビネット・タウン』ではなく、『キャビネット・タウンへようこそ』なところ。

曲調も歌詞も、別に「welcome感」があるわけじゃないんだけど。むしろネガティブなフレーズも少なくないんだけど。だけど「〜へようこそ」と最終的にタイトルで歓迎 or 勧誘しちゃっているところが好き。

「キャビネット・タウン」を、ぼくはここでは「アイドル界」と解釈していて、それは『劇画・絵恋ちゃん』の内容の流れでこの新曲を聴いたからだと思うんだけど、

この「〜へようこそ」の部分に、絵恋ちゃんが「アイドル界への変わらない期待」のようなものを感じてしまって、エモくなる。最終的なアウトプット=タイトルとして、表現が拓けている。

全く曲調は違っているけれど、『ようこそジャパリパークへ』くらい、拓けているムードがある。

『ようこそジャパリパーク』が

けものは居ても のけものは居ない

と歌っているけど、
アイドル現場はもしかしたら

のけもののけものだらけ

なのかもしれない笑

そういえば、小林賢太郎が『ノケモノノケモノ』という作品を作っていたけど、まだ観られてないな。YouTubeで無料公開しているらしい。

あ、あと「〜へようこそ」でもう一つ思い出すのは、『NHKへようこそ』なんだけど、どんな話だったっけ?宗教に勧誘される引きこもりの話だったことは、ぼんやり思い出せるけど、あんまり覚えてないや

見返す時間がなかった。今見たら違って見えて面白いかもな。あの頃のアニメ。

追記 2(2022/04/13 01:40:00)

ちなみに、これは誰の何に対するメッセージでもないので、安心して欲しいんだけど、個人的にはこの記事は考察だとは思ってない側面がある。「とは思っていない。」と言い切るほど、強い主張でもないし、どう捉えてもらっても、いいんだけど。感覚的な話。

「考察」ってなんか、作品の奥に、隠された「真実」みたいなものがあって、それを様々な状況証拠を明らかにしつつ、論理的に組み立てることで、探り当てる、みたいなイメージがある。

ところてんの助みたいになっちゃったね

辞書的な意味というよりは、巷に転がる「考察」の使われ方として、そういう印象がある。

それに対して、自分がやっているのは、「解釈」という認識。「自分」の中にあるものと、「作品」の中にあるものを、引き合わせたり、すり合わせたりするイメージ。

めちゃくちゃ感覚的な話なので、明日には変わってるかもしれんけど。ちょうど間にあるイメージ。

で、今回の『劇画・絵恋ちゃん』は、

と、ここまで書いて、どういうオチにしたかったのか忘れてしまいました…困った…。

どなたか、わたしのオチをどこかで見かけませんでしたか?
2022/04/13 01:50ごろまでは、わたしの前頭葉の近くで、ウロウロしてたはずなんですが、行方不明になってしまいました。形は小さめで、シンプルだけど切れ味が良かったはずです。色は白くて、フワフワで、誰にでも人懐っこい性格です。

見かけた方は私までご連絡ください。

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