見出し画像

保安球、安らかに保って

ある会社の面接から帰って来た。

5ヶ月ぶりに面接を受けて、以前から何も自分が変わっていないことのやるせなさに不貞腐れて、ベッドでゴロゴロしている。前も数人の大人を前に泣きそうになってしまった。恥ずかしい。

こう書いたら有利とか、こう言ったら有利とか考えたくなくて正直に何もかも対応してしまう。これが私の幼いところだ。新卒でなぜその道に行かなかったのか、と必ず暗に聞かれて毎回声が上ずりギリ泣いていない目で答える。

あと週1日のバイト以外の働いていない日は何をしているの?と半笑いで聞かれた。なんかすごい傷ついた。弱すぎて嫌だ。どうやったらライターになれるか案をくれたから多分落ちる。まあいいんだ。応募しないで後悔することが嫌なだけだから。浮気している人が罪悪感で自ら告白してしまうような、独りよがりで、結局お前の事しか考えていない系の問題だから。

前のバイトを辞めたときは絶対に映画・音楽ライターになるための布石の仕事をしようと思っていた。でもまずは自分の心を強くしないといけないのかなあ。働きながらできると思ったけど、まずそこのスタートに立てないかもと不安だ。

何もかもやり直したい気持ちもある。ここを離れて、大好きな映画館の仕事も辞めて。それを妄想するとサヨナラCOLORが頭に流れる。でも一生に1度出会えるかも分からない好きな仕事を手放す負担はでかい。私の何かが壊れそうな気がしている。瓦解だね。


大学4年のときに自動車学校に通い始めた。就活を諦めた夏の終わり頃。全然車に興味ない私が通い出したから、迎えに来てくれた母親が「急にどうした?」と聞いてきた。卒業したらどっか他県に行って働こうかなと思って、と正直に話した。運転席で母が泣き出した。私がいないと父と2人暮らしになるかららしい。正直驚いた。母がこんなに私に依存していたことに。

まったく嬉しくはなかった。むしろ怖かった。孤独(母と父はあまりコミュニケーションがうまくとれない)はそんなに、急に涙が出るほどなのか。でも上京した子どもを持つ親御さんたちはクリアしている問題なわけで、母の幼さが怖かったのかもしれない。孤独は幼い人だけの感情ではもちろんないが、そのときはそう思ってしまった。孤独を問題にされたらこっちだって立ち行かない。そうして家にいていいと甘えて26年になる。お互いがお互いを縛って生きている。

そもそもうちの一家はみな田舎から出て来た人たちだ。母も父もおばさんも。だから田舎の悪さを口々に聞かせて私を引き留めた。

映画「PERFECT DAYS」を観たとき、サブカルじじいなどと平山は言われていたが私は他人事じゃなかった。独身サブカルじじいは東京でしか生きれないのかもしれないと思ったから。歩いたら人がいて、音楽で繋がることもある東京。どこにも行けないという個人的な絶望感で謎に落ち込んだ。

それでも反対を押し切ってここから飛び出せたらかっこよかったのだろう。別にかっこよくなりたいわけじゃないけど。だから私は上京して一人暮らししている人を尊敬する。それだけでえらい。


これまでの話とうっすら関係する映画「ちひろさん」の話でもしましょう~!

基本優しさはあったかい。だから悪く言っているわけじゃないが人に親切すぎて怖い。ホームレスのおじさんにお弁当をあげるのは優しいで済むけど、自宅に呼んでお風呂に入れてしかも洗ってあげるのは怖いよ。これを見て包容力!とか母性!とか思う人に有村架純さんの狂信者が現れないかと思うくらいハラハラした。

途中からちひろさんの孤独が描かれる。街の寅さんみたいなんだけど、特定のつるむ人間を作ることは決してない。ちひろさんの変人さに釣られて高校生と小学生は懐くけど。そこでちひろさんの歪さが少し垣間見える。ただのいい人とは少し違うんだなと分かる。

自分が孤独だから人に優しくしていると言いたいわけではない。別に損ばかりしている人じゃないから。結構好き勝手やっている。そこが見ていて気持ちいいかも。「マコトはそういうやつ」がいい。

ちひろさんは孤独を探している。孤独だけがよりどころみたいな人なのかもしれない。そうじゃなきゃあの街にずっといる。

私が今泉監督の映画が好きになる前に、監督の作品に抱く所感を思い出すような作品だった。リアルとフィクションのバランス。

よく監督の作品のキャラクターはリアルと言われる気がする。でも人は一人として同じではないので、リアルだな~って感想に私は違和感がある。会話がリアルとかは意味分かるけど。作中の話題に上る違う星の人・同じ星の人の話かも。


「ハッチング」というホラー映画を夜中に観始めて、真っ暗な中観るのは怖いから保安球にした。そこから保安球で寝ることにハマっている。家にいすぎると変なことにハマるね。眠る前に最後に見るのは、オレンジの光の中で死んでいる虫だ。


ここ数日は保安球の光で好きなバンドのライブを観て寝ている。音楽が好きでよかった。頼んだぞ、音楽。

生きるのムズイですね。一人で生きられればいいのに。何とかしたい、けど逃げたくもない。でも逃げるんだろうな。また自分が信用できなくなるのは嫌だな。

少なくとも愛を大切にします。

稲きれい。もう少ししたら重さで頭垂れるのかな。散歩してみようかな。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集