【映画感想】【ネタバレあり】シン・ウルトラマン

 今日(2022/05/15)は、シン・ウルトラマンを映画館に見に行ってきました。普段あまり積極的に映画を見ることはしないのだが、話題作であり、かなり見たかったので映画館まで脚を運んだ。ちなみに私自身は、脚本家の庵野秀明さんに思い入れがあるわけでも、生粋のウルトラマンファンでもない(ウルトラマンZを見たくらい)なので、その辺の感想は、期待しないでいただきたい。以下には、いろいろとネタバレや、視聴した他の方の感想についても触れるので、ネタバレが嫌な方は、回れ右でお願いします。


 あと、私自身は、どちらかと言えば、楽しめた側に入ると思う。スクリーンに夢中になることができたし、時間を返せとはならなかった。だからと言って難点がなかったわけではない。なので感想を書くと、どうしてもネガティブな意見を言わずにいられないし、最終的にネガティブな意見で〆てしまう。まあ、そこは私の性格の悪さが問題か(笑)。


 以上を踏まえた上で、それでも私の感想が読みたいという方は、さらにスクロールしてください。


 こ う か い し ま せ ん ね ?


【感想】
 一言で言うなれば、3部作の映画を1本に繋げた作品というイメージ。
 それでいて、その3部作のうち、1作目と2作目が、面白いが、3作目は、釈然としない部分が目立つという具合だろうか。
 1作目は、vs ザラブ、2作目はvsメフィラス、3作目はvsゼットン(ゾフィー)とすることができる。
 1作目と2作目は、かなり面白い。
 ザラブは、政府を狡猾に転がし、ウルトラマンを悪に仕立て上げようとする。が、当のザラブはその悪事を自らの仕事と称し、なんのポリシーも感じないし、無機質すぎて悪意が感じられず不気味で胡散臭いことこの上ない。
 メフィラスはメフィラスで、人間を無意識に見下しており、ベータシステムによる兵器の材料程度にしか考えていない。故にウルトラマンと対立するものの、本人は「私は当たり前のことをしている」という認識のズレが、これまた不気味で胡散臭い。どちらも非常に魅力的な悪役だ。不気味で胡散臭い、というキャラの方向性と政府を手玉に転がして利用するというのが、キャラ被りしているところは気になるが。この映画を仮に3本に分けていたとしたら、1作目と2作目の悪役が似ているという意見が出たかもしれない。ここはむしろ、全部つながった1本の作品になっていることで、同じ手段を使う悪役でも、細かい思惑が違うと見れるようになったのではないか、と思う。
 ただ、問題は3作目の悪役であるゼットン(ゾフィー)である。ゼットンという名前は、ウルトラマンに詳しくない私でも知っていたし、いくつかのシリーズではラスボスを勤め上げた怪獣で、人気も高い。本作でも、ラスボスの立ち位置ではあるのだが、本作のゼットンは怪獣ではなく、”レーザー照射衛星”なのだ。
 どういうことか?は、劇場で確かめていただきたいところではあるが、本作のゼットンは、四肢はあるが、それを動かしてウルトラマンと戦うことはせず、最終的には、大砲のように変形してエネルギー弾をチャージするのみだ。一度は、ウルトラマンと交戦するものも、怪獣と戦っているというより、バリアや防衛システムと戦っている画になっている。最終決戦は、砲身をワンパンしてゼットンを異空間に飛ばすという決着のつけ方で、これがどうも画の盛り上がりに欠ける。というよりスケールが大きすぎてよく分からない、という印象。加えてvsザラブで、ウルトラマンの変身者である神永 新二が拘束を解かれて、一気に優勢になるシーン、vsメフィラスで演説台の前に浮かぶベータシステムを、異空間からウルトラマンの手が現れて奪い取るシーンのような、カタルシスに繋がるものが、vsゼットン(ゾフィー)には薄い。なので鑑賞後の感想としては、どうしても尻すぼみ感が否めないのである。
 悪役だけでなく、ヒロインである浅見 弘子のキャラ造形も尻すぼみ感がある。神永とバディを組むことになるのだが、神永は人づきあいというのが苦手である。それを説明する為に、神永が自分の分のコーヒーだけ淹れて飲んでいる気遣いができない奴と描くシーンがあるのだが、これがオフィスでのお茶汲みという習慣がもう古い今では、浅見の印象を悪くして終わってるだけに思える。それ以降、浅見が神永=ウルトラマンを信用するようになるまでの描き方は、物足りないかもしれないが、不足はない。そこから浅見が、拘束された神永を救い出すところは、浅見のヒロインの好感度が一気に上がったと言える。ただ、尻すぼみと言ったように、浅見のヒロインとしての戦績はここで終わる。vsザラブが最高潮というわけだ。vsメフィラスでは、ベータシステムにより巨人化させられるシーンと、メフィラスとベータシステムの居場所を突き止める手がかりとして神永に匂いを嗅がれるシーンというぐらいしか活躍の場がなく、vsゼットン(ゾフィー)では、神永の生還を病室で待つというシーンが主。しかも、このvsゼットン(ゾフィー)で、脇役の滝 明久、船縁 由美がかなりいい動きを見せているせいで、完全に喰われてしまっているのだ。滝と船縁の方が、しっかりバディしているし、最終決戦でのウルトラマンへの貢献度も高い。この二人は序盤から、キャラとしての好感度も高かったので、猶更、浅見を喰ってしまうわけだ。なのでヒロインの浅見に関しては、vsザラブが終わると、役として余っている感が急に目立つようになってしまった。というのが私の感想。

 では最後に、本作の良かったところ、残念なところを上げて終わりにする。

【良かった点】
・3部作ほどのボリュームを一本に纏め上げる構成力、それぞれのエピソードのつながりも奇麗。
・ザラブ、メフィラスの、人間とは違った思考原理で行動する外成人の不気味さ。それを視聴者に余すことなく伝える役者の怪演。
・最終決戦前の滝の挫折を叱責する船縁。そこから滝の覚醒。
【残念な点】
・ゼットン戦の画としての地味さ。カタルシスの薄さ。
・ヒロインのウルトラマンに対する貢献度が、序盤以降はほとんどない為、最終的にヒロインとしての影が薄い。

 以上が私の正直な感想である。印象の悪い締めくくり方になって済まない。面白いか、面白くないかで言えば、間違いなく面白い作品だと思う。


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