【鳥と恋の饗宴2022・春】橘鶫賞
はじめに
まず初めに、私どものような俳句初心者の企画を馬鹿にすることなく、真摯に詠んだ句を投句してくださった参加者の皆様に心より御礼申し上げます。
私はまだ俳句を初めて半年という初心者です。そんな私がこのような企画に関わったのは、決して俳句を軽んじているわけではなく、俳句と、それから個人的には「鳥」という存在を大切に思っているからであることが、この企画全体を通して皆様に伝わっていればさいわいです。
主催者のひとりと言いながらこれまであまり表に出て参りませんでしたので、この場を借りてご挨拶させていただきます。
投票してくださった方、応援してくださった皆様も有難うございました。
橘鶫賞発表
さて、いつもの口調に戻って早速発表へ。
この賞は、皆様による投票とは別に、私、橘鶫個人が”個人の好み”で選んだ賞である。俳句鑑賞の眼もまだそれほど養われていないと思うけれども、私なりの基準で選ばせていただいた。私の”好み”とは、句に物語が感じられるか。そして鳥が生きているか、である。順番は投句順。拙い講評はあたたかい目で見ていただければ。
大声の呼び捨てバレンタインデー
「鳥が生きているか」と言いつつ一句目から鳥ではない。恋の句だ。もうこれには自分自身が驚いた。まさか数ある鳥句を押しのけて三句に入ってこようとは。けれど、そのくらい素晴らしかった。
「大声」「呼び捨て」「バレンタインデー」。この句を構成しているのはほぼこの三つの単語だけだ。間には「の」という助詞ひとつ。しかしこれも「の」でなくてはならない。「大声で」では駄目なのだ。
こんなにシンプルなのに完璧で、これほどまでに強く物語を喚起することができるなんて、俳句ってなんて凄いのだ、と改めて思わせてくれた一句である。
私は、鳥は間違いなく大好きだけれど、物語も大好きなのだ。アポロン、素敵な17音の物語を有難う。
囀りのすきまに置くのチョコレート
実は今回、私も「囀」という季語で一句詠んだ。しかし、ひろ生さんのこの句を拝見した時、やられたと思った。気持ちが良いほどの完敗である。
ちなみに鳥の鳴き声には大きく分けて「囀り」と「地鳴き」がある。囀りは地鳴きよりも長いことが多く、主にオスがメスの気を引くために使われていると考えられていることから春の季語になっている。
私がこの句を拝見して思い浮かべた場面は、男の子の方が何やら話している合間に「はいっ。」とチョコレートを差し出す女の子。そして男の子絶句…のような場面だ。いや別に、本当の鳥の囀りの隙間でも良いのだけれど。そのくらい想像の広がる句だったのだ。
元々お互い好意があったのだろうな。お互いの淡い好意を感じながらいつも通り話していたところへのチョコレート。「置くの」の「の」に女の子の性格まで出ている気がする。
ひろ生さん、爽やかな物語に完敗です。有難うございました。
雉鳴きて今日は眼鏡と決めにけり
こうきさんの句を私が講評するなんておこがましい気もするのだが、勇気を出して。
私は未だに季語に近いところを詠み過ぎて類想の波に溺れたり、類想を恐れるあまり季語から離れすぎて独りよがりになったり、を繰り返していると思う。この句のように、絶妙な季語と取り合わせの距離感みたいなものが掴めないでいる。このような句を拝見すれば「ああすごいな」とは思うのに、自分ではそういうのが出てこない。
雉の鳴き声は、切ない中に何処か覚悟というか固い決意のようなものが感じられる声だ。「今日は眼鏡と決めにけり」これはおそらく眼鏡に決めただけではないのだ。その向こうに主人公のもっと大きな気持ちがある。雉という季語がすべてを語っている。仄かに切ないのだけれど前向き。詠んでいる内容も大好きだ。
いつかこんな鳥の句が詠めるようになりたい。そう思わせてくれた憧れの一句である。
こうきさん、企画に寄せて素晴らしい句を詠んでくださり有難うございました。これからも沢山学ばせてください。
『悠久』-高麗雉(Ring-necked Pheasant)
☆Special Thanks☆
To:はじめさん
そもそも「鳥恋」を思いついてくれてありがとうございます。その後もずっと素晴らしい相方で居ていただき感謝。
もうひとつの主催者賞、中岡はじめ賞はこちら▼
To:ラベンダーさん
いつも企画を手伝ってくださり有難うございます。
ラベさんの企画も応援してます▼
To:紫乃さん
私を俳句の世界に誘ってくださり有難うございます。今回はご参加くださったばかりかお手伝いもいただきました▼
To:アポロン
参加してくれて、応援してくれて、鳥恋企画のために参加賞を寄せてくれて、本当にありがとう!
最後にもう一度、関わってくださったすべての皆様に心からの感謝を。
参加賞、貰っていない方は上のリンクからどうぞ。