フォトブック紹介
オンライン写真部に入部してから、これまでに1冊のフォトブックを作り、今回2冊目のフォトブックを作った。
2冊目のコンセプトは素材を撮る前から決めていて、「1冊目と対になるもの」とした。
2冊目が完成したので、両方を比較しながらフォトブックに込めた想いをご紹介します。
vol.1 『I’m 』
1冊目は、オンライン写真部1期の期間に撮影した写真を組んで一冊にしたブック。
素材を集めながら自分の「好き」ってなんだっけを考え、最終的には趣味全開で作った(子ども受けしない、大人向け…っていうか私向けの写真集にした)。
梅雨から夏の終わりまでの蒸し暑い時期の写真ばかりで、海や花火や食べ物や植物で季節感を出し、家族で楽しんだ夏の思い出を間に挟んだ。
ブック作成にあたり、参考にしたのは、写真家である上田義彦氏の写真集「Home」。
妻の桐島かれんさんとお子さんたちを撮った家族写真で構成されていて、私はそんなイメージで作ってみたくて、私なりに我が家の家族写真を集めた(わざわざ夫と子どもを誘って鳥取砂丘に写真を撮りに行ったのもこの時)。
個々の写真配置はphotoback のテンプレートから選び、全体の流れはバラードの曲構成をイメージした。
見せたい写真をサビ(見開き)で使い、前奏や間奏部分は余白を多く、サビ前の一呼吸するタイミングで白黒写真を挟んでテンポを作り、全体で見た時に「ゆっくりと静かな音楽を聴いているような」雰囲気を作ろうと思った。
そして、ブックのタイトルを『I’m 』にした理由は二つある。
①このブックの写真自体が自分の自己紹介であり、作者名に繋げて「私は〇〇です」としたかった
②最初のページの「quiet, beautiful, and free from world.」に繋げ、「静かで、美しく、世間から離れている」自分を表現したかった
vol.2 『我是』
2冊目のタイトルは、中国語で「私は〇〇です」を意味する「我是」。
タイトルに込めた想いは1冊目から引き継ぎ、中国語にすることで1冊目と対比するイメージとした。
表紙はモノクロ。混沌、陰、ざらつき、未処理の感情、記憶、深化が今回のコンセプトで、前回に比べてよりディープな内容になっている。
曲構成に沿った構成はせず、現在と過去の記憶が交錯するような不規則なテンポで構成。
全体の枚数も前回より増やしたが、詰め込むところと息継ぎをするところを作っている。
写真はPENTAXKP、GRⅢ、写ルンですで撮ったものを使用。
デジタル写真はアンダーなレタッチやモノクロが多く、荒くインスタントな写りのフィルム写真に加え、時々ブラックミストを使用した写真もあり「曖昧な記憶」を演出している。
前回は「キレイな写真」を集めたが、今回は割り切れない感情をひっくるめて自分自身の記憶を記録することに向き合った。
(今の生活だけでなく、実家や今は亡き祖父母の家で撮った写真もある)
そう遠くないうちに、子どもは成長し、両親は老い、祖母の家はなくなる。
そして私の実家もいずれ、住む人がいなくなって朽ちていく。
祖母が辿り、母が辿る未来は、私が辿る未来でもある。
その無常や繰り返す歴史の中で、「撮らなきゃ」と思ったものを着飾らず、未処理の感情のまま配置した。
だからこれは、私の過去の記憶であり、現在の生活であり、そう遠くない未来なのだと思う。
おわりに
今回のフォトブックは、前回以上に誰に見せるでもないブックとなった。と同時に、私の写真への欲求は、ブックの完成を境に霧散してしまった。
自分でも不思議なことに、有給を取って自力で往復100kmを運転して祖父母の家に行ったというエピソードが撮影の裏にあるのだけど、おそらくそれは、突然脳梗塞で倒れて亡くなった祖父や晩年の祖母に会えなかった後悔があったからだろう。
この写真集は、私から祖父母への鎮魂歌である。
喪失や死にまつわる匂いと、それに対比して感じる今の生活の儚さや尊さを、風化する前に一冊に残せたことを感慨深く(何かに導かれたように)思う。
『I’m』
https://www.photoback.jp/Friend/Photoback/PBER-3657452010210003150/V3MNWP6A
『我是』
https://www.photoback.jp/Friend/Photoback/PBER-3657452103212121570/V3MNWP6A