感じ考えることで...
広瀬菜々子監督の『つつんで、ひらいて』
装幀家、菊池信義さんを追ったドキュメンタリー。
「紙の本。その装幀という仕事を撮りたい。言葉を、目から手へ、そして心にとどける仕事。それを伝えたい。」
という広瀬監督の想いからはじまったこの映画の制作。
菊池さんの、「装幀は自己表現ではない。装幀は本の中身から作られたもの。本の中から外側が生まれる。」
また、「本を、情報としての消費されるものではなく、重さ、手ざわり、色彩...五感を使って感じる読みものにしたい。」
という装幀家として貫いてきたものが、広瀬監督の想いとつながり形になった映画だった。
上映中は、菊池さんの指先に、紙をめくるその音に引き込まれ、引き込まれているうちに菊池さんの言葉が自分のなかにぽつりぽつりと落ちてくる感じがあった。
上映の前のわずかな時間に、広瀬監督のトークショーがあった。そこでの広瀬監督の言葉が保育観につながるように感じたので残しておきたい。
「本を五感を使って感じる読みものにしたい。」という菊池さんの想いに対して、
広瀬監督は、「大きなものに流されやすい世の中で、考えることはやっぱ大事だと思うんです。自分は何を大切にしたいのか、五感を使って考えることをしたい。」と話した。
今、自分の目の前にいる子ども達は、AIなど、今の大人がまだ経験してない最先端技術に囲まれた社会を生きていく。この子達が大人になった時、助けになるものは何か。様々なものが溢れ、流れていくなかで、助けになるのはきっと、五感を通じて自分は何を大切にしたいのかを感じ、考えられることではないか。
だったら保育士は今、なにができるのだろうか。
それはたぶん、目の前の子ども達1人ひとりが感じていること、見ている世界が違うことを大切に想うこと。
子ども達1人ひとりの考え、考える経験を一緒になって重ねていくことじゃないか、
と保育修行中の私は思う。
ドキュメンタリー映画『つつんで、ひらいて』、心地よい刺激を感じる内容だった。観終わってすぐにもう一度観たいと思ったドキュメンタリー映画はこの作品が初めてだなあ。