No.29 決して薄れ消えぬ様にと【俄か流 音楽のすゝめ】
俄か流 音楽のすヽめ
沖縄在住のアラサーサラリーマンが自分の人生を振り返って、心に残った音楽を楽曲単位で紹介していこうと思います。
楽器も出来なければ、楽譜も読めませんし、音楽理論もちんぷんかんぷんです。しかも、特定のジャンルに精通しているわけでもなく、広く、そして浅く色々な音楽を聴くいわゆる「俄か音楽ファン」です。
ただ、昔から音楽を聴くことが好きで、私の日常は音楽と共にあると思います。
思い入れがある楽曲を紹介して、誰かと共鳴できれば嬉しいです。
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Aqua Timez、大塚愛、ケツメイシ、SEAMO、kinkikids、EXILE、aiko、Every Little Thing、修二と彰、湘南乃風、絢香、、、
中学2年生の時、生まれて初めて自分の携帯をゲットした僕は色々なJ-POPに触れた。
あの頃、ドラマの主題歌やテレビのコマーシャルを見ては、翌日学校で気になる音楽をみんなで話をして、TSUTAYAで買ったCDを貸し借りしたり、放課後はみんなで携帯音楽を流しながら(今考えると迷惑極まりないが)帰って、カラオケに行ってはみんなで声が枯れるほど流行りの曲を歌い、確実に僕らの青春には「J-POP」がそばにいた。
今みたいにサブスクやYouTubeもない中で、限られた情報を便りにみんなで「J-POP」を共有していた。
僕の地元には祭りがある。
それは羽衣を纏った天女が降臨した事にちなんだ「はごろも祭り」と呼ばれ、むかし沖縄が琉球だった頃の王様である「察度王(さっとおう)」が生まれ育った町として毎年地元民を中心に盛り上がりをみせている。
屋台の食べ物や、くじ引き、ゲームは会場を彩り、祭りの中心で行われるカチャーシー(祭りや祝事にする手踊り)大会は場を盛り上げ、そして何よりプログラムの最後で打ち上げられる花火がなんとも綺麗で、僕も地元の人間として毎年毎年楽しみにしていた。
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そんな中学3年生の夏、僕は人生で初めて彼女が出来た。
サンエーで買った安物の甚平を着て、浴衣姿の彼女と行ったはじめてのデートは「はごろも祭り」だった。
舞い上がっていた僕は、夜から始まる祭りにもかかわらず昼から待ち合わせして、会場までの道のりを1時間ほど歩いて向かった。
道中では若さからか、目に映る全てのものが面白おかしく見えた。
今となっては何の話をしていたか微塵も覚えていないが、くだらない事で二人で笑い合っている内に、気づけば会場に着いていた。
いざ会場に繰り出すと、地元だからこそ沢山の知り合いと会う。
中学生の頃の僕は、恥ずかしさもあり逃げるように屋台を彷徨う。
焼き鳥、焼きそば、たこ焼きにお好み焼き、色んなものを食べても全然味がしなかった事を覚えている。
このように、終始落ち着きのなかった僕が彼女とゆっくり過ごせたのは、祭りの最後、並んで花火を見ている時だけだった。
海沿いの町ということもあり、「はごろも祭り」では、海に浮かぶ舟から花火が打ち上げられる。
テトラポッドに腰掛けて見上げた花火はとても美しく、隣にいる彼女を時より優しく照らしてくれていた。
何十発も打ち上げられる花火は、次第に大きくなりクライマックスへと向かう。
それは興奮すると同時に祭りの終わりを感じさせた。
ーいつまでも、いつまでも同じ夏の空見上げたい。
そこには鮮やかに咲く花火、まるで二人だけ照らす光。
最後に大きな音を鳴らし、一番綺麗な花火が起こった後に会場は拍手で包まれた。
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その後何ヶ月かして僕は振られ、彼女と別れる事となった。
何故振られたかはあんまり覚えていない。
ただ、未練とかはなくその後は友だちとして付き合っていくこととなる。
その後、僕は色々な恋愛を経て、今では最愛の女性と結婚する事が出来た。
繰り返すが、昔の彼女に対して未練は全くない。
ただ、モノや思い出に罪がないように、当時一緒に過ごした時間もまた僕にとっては「かけがえのないもの」かもしれない。
ー心ときめせた季節があった事をこの先何度も振り返るのかも。
ただ今ある全てを胸に焼きつけよう。決して薄れ消えぬ様にと。
年を重ねるごとに薄れゆく記憶を、僕は当時聞いていたJ-POPに触れる事で思い出すことが出来るのだ。
音楽にはそのような力があるのだと、僕はそう思う。
夏や、祭りについてのJ-POPはたくさん溢れかえっていて、色んな世代の人が、それぞれ自分の想う一曲があるだろう。
当時、中学生の僕にとってはMEGARYUの『夜空に咲く花』が何よりも夏を彩る曲だった。
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この回を書くにあたって調べてみたところ、2014年にMEGARYUは活動停止をしていたらしい。
思い返してみると、『夜空に咲く花』だけでなく、『Day by Day』『DEAR』『ひとりじゃない』『SUNSHINE』『STAR』『懐メロ』など中学生の頃に聞いていたMEGARYUの楽曲は沢山あった。
人生で一番「多感」な時期に聞いていたこの音楽たち。
ネットワークがどんどん発達し、今やストリーミングで数多の音楽を浴びる様に聴くことが出来る現代。
「流行りの曲」や「今の感性で好きな曲」だけでなく、こういった当時を思い返せる音楽に触れることも意外と大事なことなのかもしれない。
そして数年後、昔のようにピュアな気持ちは薄れてきているかもしれないが、僕はまた今こうして聞いている音楽を懐かしむことになるだろう。
ーそうして大人になるんだろうか。
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