Tリーグにおける「マジックナンバー」の試み


 プロ野球に親しみがある方は「Tリーグにおけるマジックナンバーの現状」から、Tリーグを観ている方は「Tリーグにマジックナンバーを導入する」から、スポーツ観戦をあまりしない方やマジックナンバーという概念の認識に不安がある方ははじめから御覧ください。

はじめに

 今シーズンも無事、卓球プロリーグ:nojimaTリーグ2023-2024シーズンが開幕しました。今年から、男子に2チームが新規参入していよいよリーグが熱くなるところです。さて、6チーム制といえば野球のプロリーグ:セ・リーグ、パ・リーグが連想されることと思います。そして、日本プロ野球では盛んに「自力優勝」や「マジックナンバー」という語を聞く機会が多いように思えます。しかし、Tリーグにおいては少なくとも去年から6チーム制だった女子団体において、マジックナンバーという語を聞いた覚えがありません。プロ野球は勝率で順位付けをしているため、マジックナンバーの減り方が単純で優勝カウントダウンとしての側面が強いから盛んに使われていて、Tリーグは勝ち点制のため優勝カウントダウンとしての側面が持ちづらいからだと考えました。
 そこで今回は、Tリーグにこの「マジックナンバー」を取り入れ、その活用方法を模索していきます。

マジックナンバーとは

 そもそもマジックナンバーとは、自チーム以外のすべての自力優勝が消滅したときに、あと何勝すれば優勝できるかを示す数値です。例えば、マジックナンバー20が点灯している場合は、あと20勝すれば優勝できます。しかし、マジックナンバーは点灯しているチームが負けても、最も自力優勝復活に近いチームが負ければ減らすことができます。つまり正確に言えば、マジック点灯チームの勝ち数と自力優勝復活が一番近いチームの負け数の合計が20になればいい、ということです。
 ここでひとつ補足をします。自力優勝というのは、自チームが相手チームの結果に関わらずに優勝できるか、というものです。即ち、相手チームが自チーム以外と対戦する残り試合を全勝しても自チームが全勝すれば優勝できる状態なら自力優勝が可能です。

Tリーグにおけるマジックナンバーの現状

 Tリーグにおいては、現状としてマジックナンバーというものが認知されていません。また、公式からそのような語が使われていることも確認する限りではありません。しかし、マジックナンバーを導入することで勝ち点に関係なくどこが一番優勝に近いのか把握することができます。また、試合消化数が少ないチームがより正確に立ち位置を知る一種の方法になります。

Tリーグにおける勝ち点のシステム

 Tリーグは勝ち点制を導入していることは前述の通りですが、他に勝ち点制を導入しているプロスポーツと比べて仕組みが複雑なため整理します。
 まず、その試合で行われた4試合に全勝、つまりスイープ勝ちした場合です。この場合勝ち点4が入ります。また、この勝ち点4が1試合で獲得できる最高勝ち点数となります。それ以外の方法で勝った場合は勝ち点3が入ります。対して、敗北したチームは基本的に勝ち点は0です。しかし一つ例外があり、その試合で行われた4試合が2勝2敗で決着がつかずに延長線(ビクトリーマッチ)に突入した場合は、負けたチームにも勝ち点1が入ります。

Tリーグにマジックナンバーを導入する

自力優勝ポイント

 実際にマジックナンバーを導入していきます。まず、各チームはそれぞれの対戦チームに対して16の自力優勝ポイントを持っています。このポイントが0を下回る(=負の数になる)と自力優勝が消滅します。この自力優勝ポイントは自チームが対戦相手に対してスイープ勝ち以外で勝利したときや敗北したときに減ります。また、自チームが対戦していないときにも自力優勝ポイントが減ります。以下に記述する計算を試合ごとに行います。
 具体的には、直接対決で対象チームに勝った場合はスイープ勝ちでなければ自力優勝ポイントから1引きます。また、負けた場合はスイープ負けなら8、延長負けなら6、それ以外なら7を引きます。
 加えて、自チームが他のチームと対戦し勝ったときは、スイープ勝ちでなければ自チームの自力優勝ポイントを1引きます。負けた場合、延長なら3、そうでないなら4を自チームの自力優勝ポイントから引きます。
 また、対象チームが他のチームと対戦し勝ったときはスイープ勝ちでなければ自力優勝ポイントが1増えます。対して、対象チームが他のチームと対戦し負けたときは延長負けのときは3、それ以外のときは4増えます。
 では、実際に確認しましょう。2023-2024シーズンにおけるT.T彩たまの琉球アスティーダに対する成績は延長負け1回とスイープ負けが1回です。また、琉球アスティーダ以外のチームに対しては非スイープ勝ち1回非延長負け3回です。加えて、琉球アスティーダは彩たま以外に対して非スイープ勝ちが3回、延長負け1回と非延長の敗北が1回です。上の式に当てはめると、
 彩たまの琉球に対する自力優勝ポイント
   =16-(6+8)-{1+(4*3)}+{(1*3)+(3+4)}=-1<0
となりました。彩たまの琉球に対する自力優勝ポイントが0を下回っているため、この時彩たまは自力優勝が消滅していると言います。

マジック点灯

 ここまで自力優勝の計算方法と消滅の条件についてお話しました。この自力優勝が何をもたらすかというと、前述の自力優勝が自チーム以外全チーム消えるとマジックナンバーが点灯します。このマジックナンバーがプロ野球ではある種の優勝カウントダウンとしての役割を果たしているのです。このマジックナンバーをTリーグに取り入れることでより優勝争いを楽しめるのはないかと、私は思います。
 では、マジックナンバーについて紹介します。マジックナンバーとは、冒頭で述べた通りある種の優勝カウントダウンです。マジックナンバーが点灯し、0まで減らせれば優勝です。0まで減らせずにマジックナンバーが消灯することもあります。また、一度点灯したマジックナンバーが消灯した後に他のチームに点灯し、そのまま逃げ切られるとV逸となります。この数値の算出方法について説明します。
 自チームが絶対優勝できる状況は、言い換えれば相手が絶対にたどり着けない勝ち点に到達するということです。つまり、相手チームが残り試合を全試合スイープ勝ちしたと仮定して、その点数を超えればいいのです。計算式にすると、相手チームの最大勝ち点数-自チームの現在保有勝ち点がマジックナンバーです。野球の場合は勝率で順位付けをしているためマジックナンバーの減り方が単純ですが、Tリーグの場合は勝ち点制の上に勝ち点の増え方が複雑なため、改めてマジックナンバーの減り方を示す必要があります。

マジックナンバーの減り方

 前述のマジックナンバーの計算方法「相手チームの最大勝ち点数-自チームの現在保有勝ち点」のうち、相手チームの最大勝ち点数は相手が非スイープ勝ちするたびに1点減ります。また、相手チームが敗北した場合も延長負けで3点、非延長負けで4点減ります。自チームの現在保有勝ち点は延長負け、非スイープ勝ち、スイープ勝ちでそれぞれの点数が加算されます。つまり、マジックナンバー-自チームの新規勝ち点-相手チームの損失勝ち点となるわけです。しかしここで問題があります。それは、「相手チーム」とは具体的にどのチームなのか、です。
 ここで言う相手チームは、2パターンに分けられます。1つめは、自チームが1位でマジックを点灯させている場合です。このときは2位のチームが「相手チーム」となります。2つめは、自チームが2位以下でマジックを点灯させている場合です。このときは1位のチームが「相手チーム」となります。

まとめ

 ここまで、マジックナンバーについて紹介し、Tリーグの順位算定方法を簡易的に説明し、最後に具体的にどう算出するのか論じてきました。その結果、Tリーグ特有の勝ち点方式を鑑みた計算方法を生み出すことができました。Tリーグはまだ創設から日が経っていない新しいリーグです。この記事によってTリーグ観戦をより楽しめるようになることを願うのみです。


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