【橋本ゆき×十束おとは】対談企画!~アイドルのセカンドキャリアの支援の現在~vol.1
こんにちは、株式会社ツギステの桜のどかです。
ツギステでは、アイドルを卒業された方の就職支援を行っております!
今回は、2024年8月よりツギステの「キャリアコンサルティングパートナー」に就任していただいた十束おとはさんと、代表の橋本ゆきの対談企画です。
vol.1では、アイドルのセカンドキャリアの支援の実態をお届けいたします。vol.2では、キャリア支援で今後必要なことについて徹底的に深掘りいたしました。vol.2はこちらから!
キャリア支援を始めたきっかけ
橋本:おとはさんが、ツギステのキャリアコンサルティングパートナーになっていただいたことで、相場効果で高め合っていけるよう、本日対談をさせていただきます。よろしくお願いします!
まず、キャリアという分野に、足を踏み入れたきっかけを聞かせていただけますか?
十束:一時期、大学生の就職活動をテーマにしたラジオ番組にレギュラー出演しており、その時初めて「キャリアコンサルタント」という仕事があることを知りました。思い返せば、大学4年生のとき就職活動でつまずいてしまい就職したものの辞めてしまった苦い経験がありましたし、アイドルのセカンドキャリアについて漠然と考えることもありました。そんなとき、番組のリスナーの方々とお便りを通じて会話をしているうちに、「私もこの資格を取ったら、もっと多くの人々や自分自身にも、さまざまなキャリアの選択肢を提示できるのではないか、役に立てるのではないか」と思うようになったんです。そして、キャリアコンサルタントの資格を取得し、活かしてみたいと考えるようになったのがきっかけだったと記憶しています。
橋本:実は私も、政治家としての仕事に就くきっかけは、政治系の番組にインテリアイドル枠でコメンテーターとして出演したことでした。お仕事を通じて興味の幅が広がったという点では、おとはさんと私の経験はとても似ていると感じます。
現在、私自身が「キャリア」というテーマを選んでいる背景も、原体験としての就活の経験なんです。私は大学時代、東京大学に在籍していたのですが、アイドルを卒業したとしても就職活動では「無双できる」という驕った気持ちがありました…(笑)
しかし、実際に就職活動をしてみると、書類選考には通過するのですが、面接になると「学生時代に力を入れたこと」、いわゆる「ガクチカ」でアイドルとしての経験をいくらPRしても、二次面接で落とされてしまうんです。自己PRが理由で落とされたとは限りませんが、当時は「人と違うことに全力で取り組み、ユニークな経験を積んだはずなのに、それが評価されないのはどうしてだろう」と悩みました。その後もアイドルを続けることができたので、最終的には「就職できない」ということにはなりませんでしたが、一般社会では自分の経験が全く評価されていないという挫折感を、私も就職活動の中で強く感じた経験があります。
十束:同じですね!
アイドルを卒業して感じたこと
橋本:本当に、同じような経験をされていますよね。おそらく最初のきっかけはそのようなものであったと思うのですが、実際にキャリアを目指すことになり、アイドルを卒業してキャリアに関わる仕事をする際に、何かつまずいたことや困ったことはありましたか?
十束:つまずいたこととしては、純粋に勉強時間の確保が難しかった点が挙げられます。アイドルを卒業して約10日後に会社に入社したのですが、ほぼ同時期にキャリアコンサルタントの学校に通い始めることも決めました。したがって、社会人として会社に馴染むことと、学校で勉強することを両立する必要があったんです。また、実技試験に向けて同級生と時間を合わせて練習するのも大変でしたね。
橋本:実技ですか!?キャリアコンサルタントに実技試験とは、どのようなものですか?
十束:面談の最初15分間を切り取ったような形でクライアントさんのご相談内容に沿って進めていく、ロールプレイングです。学科試験だけでなく、論述・実技の試験も合格することでキャリアコンサルタントとして活動できる資格を得ることができるんですよ。
充実した日々ではありましたが、変化も多く最初は戸惑いもあったなと今お話ししていて色々思い出しました。
橋本:アイドル時代の環境と、企業での環境というのは、働き方も含めて全く異なるものでしょうね。そのような環境の違いによる負担や、日常的に何か困難に感じたことはどういった点ですか?
十束:会議が予想以上にたくさんあったり、同じ時間に同じ場所に出勤したりなどの環境の違いは新鮮でしたが、慣れるまでは大変でもありました。初めのうちは議事録を取るのも一苦労でしたし「企画書を作ってみて」と言われても、経験豊富な先輩方がいらっしゃる中で、お粗末な企画書しか提出できない自分に対してもやもやした気持ちを抱くこともありました。最初はいかに心を折らずにやっていくかを考えていた気がしますが、慣れてくると楽しさややりがいも多く楽しかったです。
橋本:毎日異なる現場で、同じ日が一日もないといった感じですよね。
十束:全てが変わると言っても過言ではないほど環境が変わったので、アイドルや芸能活動をしていた人が社会に適応するのは、非常に大変なことだと身をもって感じました。
橋本:そういった苦手な部分もあるとはいえ、やはりアイドル活動をしてきた中で、会社の中で役立った部分もあると思います。おとはさんは、ご自身のアイドルとしての経験が今の仕事に生かされていると感じる点はどこですか?
十束:今は本当にすべての経験が生きていると心から感じています!
橋本:すべてですよね!本当に全部!
アイドルのキャリア支援の課題
十束:対人関係のスキルや、新しい環境でも臆することなく自分を表現できる能力は、紛れもないスキルですよね。また、根性があったり地道な努力を続けることができるという点もアイドルの素晴らしさだと思います。ただ、それらはデータとして見える形で示すことができない場合も多く、日々難しさを感じています。
橋本:セカンドステージへつまづく要因の一番は、良さが伝わらないことですよね。
十束:こうして話しているとたくさん素敵なところが思い浮かびますが、いざ採用フェーズになり評価される段階になると難しいものです。
魅力がうまく伝わるよう、私たちがこれから変えていかなければならないところの1つだと日々感じています。
橋本:まさにその通りです。やはりタフネスや努力を続ける力、対人能力といった点も魅力的ですし、握手会では多くのファンと接し、「様々な人がいるのだな」というような経験をたくさん積んできています。さまざまなバックボーンを持つ人々が集まるアイドルグループの中で活動してきたことで、多様性を受け入れる感覚が身についていると思います。
しかし、こうした能力を言語化することが難しく、その結果として伝わらないことが多いんです。私自身もそうであったように、「これだけ頑張ってきた」「こういう能力がある」といったことを企業に魅力的に伝えられないというミスマッチが、アイドル出身の人たちの抱えるもどかしさだと感じています。私の会社では、そのような翻訳作業を通じて、アイドル経験者が持つ魅力を企業に伝わる言葉に変換するという役割を担っています。その結果、内定率も非常に高く、適切に伝えられれば彼女たちが魅力的な人材であることが証明されると、このサービスを開始して1年以上経過した今、確信に至っています。
橋本:おとはさんのキャリアコンサルタントとしての支援の中で、特にアイドル人材が魅力的であると感じる部分について、どのようにお考えでしょうか?
十束:アイドルと一言で言っても、多様な個性を持った人々がいるという点がまず素晴らしいと感じています。そう感じるのは、自己プロデュース力を活動の中で各々磨いてきたからなのかもしれません。また、個人差はあると思いますが人当たりが良く、頑張り屋の方が多い印象です。
橋本:私たちも支援をしている中で、やはりさまざまなタイプの人がいることを強く感じます。アイドルグループには「〇〇担当」や「〇〇系」というように、グループ内でもそれぞれメンバーの個性が違ったりするので、当然といえば当然ですが、その多様性に気づかされることも多いです。カウンセリングやお話を通じて、その子の適性や良い部分を見つけ出すことが、支援の醍醐味ですよね。
キャリア支援で必要な問いとは
十束:キャリアコンサルタントの分野で「気づきを促す」という言葉があります。日々の活動の中で、無意識のうちに本当の気持ちを押し込めてしまっている子もいるかもしれません。お話をする中で、「私はこういうことがしたかったのか」とか、「こんな挑戦をしてみたい」といった瞬間に気づいてもらえると、この仕事をしていてよかったなと思います。
橋本:ツギステに相談に来てくださるアイドルの方々も、思い込みで「営業って飛び込みしたりして怖そう」とか、向いている仕事がわからないので事務職希望ですという方も少なくありません。弊社に相談に来るアイドルの方は、職種への理解不足も多くの原因だなと感じている一方で、キャリアコンサルタントとしては、直接提案するというよりも、話をして気づきを促し、モチベーションを上げるという感じですか?
十束:もちろん、助言や提案をすることも大切です。しかし、まずは「今までの自分」や「今後どのように生きていきたいか」など対話をしていくことでじっくり内省し向き合う時間が大切だと考えています。アイドル活動で日々頑張り続けてきた結果、自分の人生について考える時間がなく、自分の可能性ややりたいことについて深く考えるきっかけがなかった子もいると思います。そのため、一度「自分の人生の棚卸し」をしてもらい内省を促すことを大切にしながら日々関わっています。
橋本:ツギステでは就職支援の際に、自己分析シートを記入してもらっております。先ほどのお話に関連しますが、キャリアとは人生そのものであり、自分のやりたいことを実現するための手段です。まず、自分の価値観や、人生で何を大切にしたいのかを決めていただき、それをヒアリングすることから始めています。例えば、将来的に結婚を見据えて、家庭生活を優先できる職場が良いのか、あるいはしばらくの間は営業職で成果を上げて、高給を望むのか、そういった希望を聞き出しています。その過程で、どのように生きたいのかを自覚してもらうための問いかけが大切だと思うのですが、その人が気づきを得たり、変わっていくために、キャリアコンサルタントの立場として、どういった問いが効果的と考えていらっしゃいますか?
十束:まずお話を伺ったり、質問をする際には「受容」「共感」「自己一致」の基本原則を大切にしています。キャリアコンサルタントの基本として自分の主観で返答したり態度を変えたりしてはいけませんし、「共感」と「同感」は異なるものだと知っておく必要があります。たとえば「私はあまり食べません」と言われた時に、「痩せていますもんね」と答えるのは、自己の主観による判断です。このような主観的な判断はキャリアにおいても無意識に行われることが多いので、そのような問いや対応はしないよう心がけています。
橋本:「アメフトをしていました」と聞いて、「じゃあ体育会系なので営業に向いていますね」と言ってしまうような。
十束:もちろん向いている場合もありますが、表面だけ捉えてしまうのは決めつけになってしまいますよね。
例えば、営業に興味があると言われた時には「なぜそう思われたのですか?」と問いかけます。会話を通してクライアントさんが話す中で、大切なキーワードがいくつも出てくるのでそこにフックをかけるように「今おっしゃったことは、どんな時に感じられましたか?」とエピソードを掘り下げていくと、「そういえば、中学時代からそう感じていました」という気づきに至ることがあります。ですので、簡単に次の話題に移らず、1つのテーマをじっくり掘り下げていくことが大切です。
橋本:確かに、シートに理由を書いてもらうと、深掘りすることで新たな気づきが得られることがありますね。
十束:そうですね。結論を急がず、「今、お話ししてみてどういうお気持ちですか?」と気持ちを再確認したりとまずは今と今までを棚卸しして、そこからその方のご希望を伺ったり、「こういう仕事はいかがですか?」と提案や助言に繋げていきます。
橋本:ありがとうございます。イメージと現実が違っていたというケースもありますし、相談者の方がどんな悩みを持っているのか、改めて伺いたいと思います。例えば、自分に向いている仕事がわからない、自信がないという悩みを抱えている方が多いですが、他にもどんな方が多いのか気になっています。
十束:最初は漠然とした悩みが多いと思います。キャリアの相談に来たつもりでも、実際には今の状況に満足できていないといったケースも多いです。そのモヤモヤを一緒に考え、課題を解決していくことも私の役割です。
橋本:自分ではキャリアに悩んでいると思っていても、実際にはやり切っていない自分に悩んでいることがあるのですね。
十束:そうですね。クライアントさんがなぜここに来たのか、その背景を一緒に考えることが、後々のミスマッチを防ぐ手助けになると思います。今すぐ辞めたいというわけではない子も多いので、まずは目の前のことをすっきりさせて前向きに活動に取り組めるようなお手伝いをすることも多いです。
橋本:おとはさんご自身は、アイドル現役時代にキャリアについて悩んだり、考えていらっしゃいましたか?
十束:今後自分のキャリアをどのように、またどの業界で築いていくんだろうという漠然とした思いはありましたが、日々の活動に一生懸命であまり考える時間はありませんでした。私は卒業を決意してから2年という時間があったので、大切なグループのことを次の世代に引継ぎながら自分の人生のことも考える時間が生まれたのですが、もし突然「卒業」することになっていたら考える余裕はなかったなと感じています。
橋本:そうですね、確かに。それはよく分かります。私も実際にはあまり考えていなくて、行き当たりばったりという感じでした。周りから「アイドルをいつまでやるの?」と聞かれても、特に考えていなかったですね。「いつまでも」と思っていましたし、目の前のことしか考えられなかったので。私自身もそうでしたし、ご相談に来られる方も、人生全般で悩んでおられる方が多いですね。「今すぐ就職したい」「働く場所を探している」という方ももちろんいらっしゃいますが、それ以上に「今後の人生をどうすればいいのか」という方が非常に多く、ライフプランについて一緒に考えたり、「10年後の自分がなりたい姿に合った仕事を紹介させてください!」という形で、人生設計を支援することが多いです。人生と仕事は非常に密接に関わっていますね。
十束:そうですね、キャリアというのはまさに人生そのものですから。
橋本:特に女性の場合、キャリアを考える際には、アイドルを卒業する方の多くが20代後半であることが多いので、女性としてのライフステージも関わってくると思います。「将来結婚して子どもが欲しいけれど、今からキャリアを築いても良いのか」とか、逆に「その後でキャリアを構築するのはもっと難しくなるのではないか」といった、複合的なご相談が多いのです。その点について、キャリアコンサルタントとしてはどうお考えですか?これまでの支援の実績や、相談があった際のアプローチ方法について教えていただけますか?
十束:まず女性としてのライフステージを考えるときに、お話を伺ったあと現在の考えを整理するために5年後・10年後といったライフプランを書き出すシートを用意し、それを記入していただくことがあります。可視化できることで今思っていることがクリアになるので、やりたいことや現在抱えている問題、将来の見えない不安など1つずつ一緒に考えていきます。
橋本:そうなんですよね。将来が見えないからこそ、不安になるのですよね。
十束:キャリアコンサルタントの養成学校に通っていた同級生の中にも専業主婦を一度ご経験されてからや定年退職したあとなど様々な年代の方がいらっしゃって、何歳からでもやりたいことが見つかれば人は努力できるし遅すぎるということもないと改めて感じました。「何歳でこういうことをしたい」と考える一方で、「今やりたいことは何か」「10年後にどのような環境で働きたいのか」などを複合的にお話しして、最終的にはご自身でどうするかを決めていただくというのが大まかな流れかと思います。
橋本:企業やサービスとしてのカウンセリングとは異なり、よりその人自身の人生に寄り添ったアプローチをしてくれるのがキャリアコンサルタントだとお話を伺っていて感じました。ただ、私たちが支援していて特に難しいと感じるのが、メンタル面のサポートです。就職に向けてのマインドセットを作る支援はしていますが、専門家のサポートが必要だと感じる方に対しては、キャリアコンサルタントとしてはどのようなケアを行っているのでしょうか?
十束:お話やお悩みを伺って気持ちを和らげることや、メンタルヘルスケアの資格を活かして助言はできても私は医師ではないので、診察や診断はできません。そのため、リファーといって必要に応じて他の分野・領域の専門家の協力を求めることがあります。これはキャリアコンサルタントの倫理綱領第2章第8条にも明記されていることで、ご本人に同意をいただいた上で行います。1人で頑張るのではなく、チームプレーのような形で適切な支援に繋げていくことも大切だと感じています。
橋本:なるほど、私たちのサービスでは、メンタルの専門的なサポートが必要となると、こ介入が難しいという状況でした。しかし、おとはさんとパートナーとして連携させていただくことで、おとはさんから専門的な支援につながる可能性が広がり、非常にありがたいです。これまで十分に対応できなかった部分を補えるという点で、大きな可能性を感じています。
最後に
今回はここまで!vol.1では、実際に支援している立場から、アイドルのキャリア支援の実態をお届けいたしました。
vol.2はこちらからご覧ください!
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