【橋本ゆき×十束おとは】対談企画!~アイドルのセカンドキャリアの支援の未来~vol.2
こんにちは、株式会社ツギステの桜のどかです。
ツギステでは、アイドルを卒業された方の就職支援を行っております!
今回は、2024年8月よりツギステの「キャリアコンサルティングパートナー」に就任していただいた十束おとはさんと、代表の橋本ゆきの対談企画です。
vol.1では、アイドルのセカンドキャリアの支援の実態をお届けいたしました。
今回のvol.2では、キャリア支援で今後必要なことについて徹底的に深掘り!
ぜひ最後までご覧ください。
キャリアを考える前に必要な心構え
十束:人間だれしも感情の波はありますしストレスもかかりますが、まずは日常生活を健やかに、そしてできるだけフラットに物事を感じられる状態が大切だと考えています。
橋本:キャリアを考える上で、自己分析は最も大事になってくるものですが、同時に結構辛いものですよね。その段階で悩んでしまう人も多いです。
十束:確かに自分と向き合うことは大切ではありますが、大変で辛いこともありますよね。
橋本:生活や心が整っていないと自己評価が過小になってしまい、「自分は何もできない」と思ってしまうことがありますね。
十束:そうですね。自己分析が辛いと感じる方は就活生にも多いかと思います。本来であれば自分の良いところを見つける作業のはずが、見つからずに落ち込んでしまう。しかし客観的に見れば、たくさん良いところがあるはずなのでその点においても面談をしたり第三者に話すことは大切だと感じています。ありがたいことに面談終わりに「自信が持てました」と言ってくださる方もいらっしゃいますよ。
橋本:私も、現役の時に心が健康であることが、次のキャリアのスタートを切るために非常に重要だと感じています。アイドルの仕事は人前に出てストレスがかかり、プレッシャーも多いので難しいですが、心が健康でいるためには何が必要か、また今の課題は何だと思いますか?
十束:そうですね。まず思うのは、第三者に心の内をさらけ出せたり、公平な助言をもらえる場があることの重要性です。「先生だから言いますけど…」という形で話してくれたり、すっきりして「これで明日からも頑張れます!」とフラットな気持ちで帰っていただくこともあります。モヤモヤが生まれた時点で活動もストレスフルになり、将来のことも考えられなくなるので、気軽に相談できる場所が必要だと思います。よく「活動の労働環境を変えるべき」と言う方もいますが、多様な運営が存在する中で、それは簡単なことではないでしょうね。
橋本:しかも、それを言ってしまうと、アプローチしづらくなるというか、シャッターが閉まってしまい、運営側との連携がさらに難しくなるように感じます。
十束:そうですね。社会にもいろいろな会社があるように、アイドル業界でもブラックな部分があるところもあります。そうした環境をなくすのは難しいかもしれませんが、気軽に相談できる場所や、「助けてください」と言える場所があるだけでも、大きな意味があるのではないかと思います。
橋本:キャリアコンサルタントとしてのご相談の際は、現役アイドルの方が具体的に辞めることを決めていなくても、漠然とした不安を抱えて相談に来ることもあるんですよね?
十束:はい、あります。また、私自身もメンタルヘルスのケアに関する資格を取得しましたので、「そういうことも相談して大丈夫ですよ」というスタンスで対応しています。多くの方は、日々の活動の中で感じるモヤモヤをまず晴らしたいという気持ちを持っていて、その後で未来のことを考えたいという順序になるので、まず目の前の問題に対応することが重要だと感じています。
橋本:相談できる人が本当にいないですよね。メンバーには内部のことだから言えないし、友達に話しても理解してもらえないことが多いですし、親に言ったら心配されて「辞めなさい」と言われるかもしれない。そうなると、本当に話せる場所がないと感じます。だからこそ、アイドルのお母さんのような存在で、さまざまな資格を持ち、多角的なアプローチで助言できる立場の人がいることは非常に心強いですし、私たちもそうありたいと強く思います。
十束:すでにそうなっていると思いますよ!
橋本:ありがとうございます。私たちも「キャリア」という文脈で相談窓口を作っていますが、現役のアイドルの方が就職を具体的に考えていなくても、漠然とした不安や現在のストレスについて話せる「第3の居場所」のような存在になれれば良いなと思っています。そのためにも、おとはさんのお力を借りながら、気軽に相談できる場所を作っていけたらと考えています。
十束:ぜひ、そうしましょう。
キャリア課題の解決に向けて
橋本:最後に、アイドルが卒業後に困ってしまう理由として、先ほどもお話ししたように、現役の時に将来のことを考えていないため、突然アイドルとしての活動が終わると困ってしまうということや、これまで自分がやってきたことを言語化できないといった問題があると思います。それ以外に、アイドルがキャリアに困る原因や構造的な問題については、どのようにお考えですか?
十束:大学を卒業しているアイドルの方も多いですが、思春期をすべてアイドル活動に捧げている子たちは中卒や高卒であることも多く、学歴で応募できる仕事が限られているというのが問題の一つです。また、職業訓練や助成金などのさまざまな支援があるものの、それを知る機会が少ないというのも問題の一つだと思います。さらに、アイドルの子たちは主に歌って踊ることが仕事なので「自分のスキルは一体社会においてどんなことに役にたつのだろう」と悩んでしまうことも多いと思います。しっかりお仕事に向き合っていたし対人関係のスキルも高いのに、どの仕事に応募してもうまく自己PRができないという問題もありますね。そもそも小学校や中学校でキャリアについて継続的に学べる機会があれば良いのかな、とも思いますが現状では難しいですよね。
橋本:そうですね、たくさんありますね。アイドルの方たちが自信を持てないというところもそうですし、自分の経験を言語化できないという問題や、支援の機会がないというのは大きな問題だと思います。たとえば、東京都が行っている若者向けの仕事支援などもありますが、そうした行政の施策が自分に向けたものであるとは思わない、あるいは存在すら知らないということが多いのです。広告で見たとしても、自分向けだと思えないという課題があると感じています。その意味で、「アイドル専門」という言葉をつけることで、自分が対象だと感じてもらえるようになり、必要な人に必要なサポートを届けることができるのは非常に重要なことだと考えています。
橋本:また、おとはさんが先ほどおっしゃった「教育の部分」についても大きな課題だと感じています。教育の中でキャリア教育や、「どのようにキャリアを積んでいくのか」といった知識をしっかり提供することが必要だと思います。しかし、一般的な教育の場でもそのような機会は少ないです。これはアイドルに限らず、学校というコミュニティから外れてしまうと、自分と同じ年齢層の人々やさまざまなキャリアを持つ人々と接する機会がなくなるため、「これしかない」と思い込んでしまいやすくなるのではないかと感じています。そうした部分は、会社でも政治家として何とか変えていきたいと思っているところです。一般的な学校の道筋、すなわち中学、高校、大学と進んでいく過程を歩まないと、なかなか視野が広がらないという現状があると思います。
十束:そうですね。でも、私は大学生時代働くということを当事者意識をもって考えられておらず視野も狭かったんですよね。そうした自分の経験から、小学校や中学校でもキャリア教育をもっと取り入れるべきだと考えていて、私の人生の中で取り組んでいきたいことの1つです。たとえ中学生でアイドルになったとしても、そのような視野が身についていれば、セカンドキャリアを考えるときにより多くの選択肢や考えが浮かぶのではないかと思います。もっとキャリアというか自分の人生について考える力が養われれば、身近に感じてもらえると感じています。
橋本:そうですね。一本の道を貫くことが美しいという価値観がありますよね。私も「これ一本でやってきます」というのが素晴らしいとされる風潮があり、ファンからもそう求められることがあると思います。そのため、「アイドルをやりながらセカンドキャリアについて考えましょう」と言っても、なかなか受け入れられない。しかし、中学や高校でキャリア教育が普通に行われていれば、「自分がどのようにキャリアを積んでいくか」を考える土台ができて、自然と考えるようになるでしょうね。
十束:そう思います。アイドルに限らず、すべての人がそのような思考を持っていれば、就職活動ももっと楽しく前向きに取り組めると思います。今のように、「勉強を頑張ってきたのに、いきなり就活をしろと言われる」という状況も変えていきたいですね。
橋本:本当にその通りですね。大学についても、「何のために行っているのか」といったことにも繋がってくる話だと思います。ただ何となくやっていることが、実は「自分がどうなるためにやっているのか」といった視点で考えることが、とても大事だったりします。
十束:そうですね。
橋本:このあたりの話は、アイドルに限らず、日本社会全体に訴えていきたいところですよね。
十束:私たちのように口に出している者が、実際に行動を起こさなければならないと強く感じています。
橋本:そうですね。学校の外部講師としてキャリア教育の講演を広げていくような活動もしていきたいですね。
十束:「ツギステ」という形で、パッケージ化してさまざまな場所に展開するのも良いですよね!
橋本:それこそ、学校によってはそういったことに力を入れていて、呼びたいという声も増えてきているので、そういった事例を増やしていくのも面白いですね。例えば、「アイドルが教えるキャリアとは」といったテーマであれば、とても楽しいと思います。話が教育や社会全般に広がってしまいましたが、最後にキャリアコンサルタントとしてのおとはさんの今後の展望についてお聞きしたいです。
十束:「キャリア」と言われても、自分自身も最初はピンと来ていませんでしたし、この文章を読んでいる方も「キャリアって何だろう?」と漠然と感じている方も多いのではないかと思います。かたく考えられがちですが、もっと気軽に相談できたり、各々がラフに考えられるような環境作りをしていきたいです。
橋本:「キャリア、キャリア」と言っているのは、意識が高くて打算的な人のイメージがありますよね。
十束:そうなんです。
橋本:でも、そうではないんですよね。
十束:はい。キャリアとは「生きる道」で、自分の相棒のようなものだと思います。気軽に人とカフェでお茶をするように相談できるようにしたいと思っていますし、「一度辞めたらやり直しは難しい」「最低3年は働くべき」といった考え方も未だ根深くありますが、自分の人生の航路を楽しく臨機応変に変えていけるようにしたいと思っています。そのためのお手伝いができたらと思っていますし、自分の人生でも体現していきたいですね。
橋本:そうですね。キャリアとは「どう生きるか」ということですし、正解がない分、その人自身がどう生きたいかということに尽きると思います。その中で後悔したり、「どうせ無理だ」と諦めたりすることをなくしていきたい。年齢を重ねるごとに選択肢が狭まっていくのではなく、自分の人生を思い描いて、キャリアを重ねながら選択肢を広げていけるような社会を作りたいと思っています。私たちもアイドルの方々だけでなく、さまざまな方のセカンドキャリアを支援し、横展開していきたいと考えています。さまざまなユニークな経歴を持った人が、その個性を活かして可能性を広げていく社会を目指したいと思っています。これからも同じ志を持つ者同士として、引き続きよろしくお願いします。
十束:こちらこそ、よろしくお願いいたします。
最後に
今回の対談では、ツギステ代表の橋本ゆきとキャリアコンサルティングパートナーの十束おとはさんが、アイドルのセカンドキャリア支援における課題や今後の必要性について対談を行いました。
特に、アイドルがキャリアを考える上で、心の健康を保つことや、気軽に相談できる場所が重要です。また自己分析や将来を考えることの難しさ、そしてその過程で孤立しないためのサポートの重要性も浮き彫りになりました。
さらに、適切なキャリア支援にアクセスできる機会の少なさも課題として挙げられましたが、これはアイドルに限った話ではなく、他の職業でも共通する問題です。キャリア教育の不足が、若い世代全体に広がる課題であり、より多くの人々に適切な支援を届けることが必要と考えております。
今回の対談を通して見えてきたのは、セカンドキャリアの選択肢を広げるためには、「キャリア」という言葉をもっと柔軟で身近なものとして捉え、自分の人生をどう楽しむかを考えることが重要だということです。アイドル業界だけでなく、すべての人々にとって、自分の可能性を信じ、自由に進んでいける社会を作っていきたいと改めて感じました。
ツギステは、アイドルだけでなく、さまざまな経歴を持つ人々が次のステップへ進むための支援を今後も強化していきます!
・ツギステについて
ツギステは、アイドルのキャリアの多様性を広げ、彼女たちが自分の可能性に気づき、社会で活躍できるよう全力で支援します。
アイドルのセカンドキャリアを通じて、誰もが安心して挑戦できる社会を実現するために、私たちはこれからも邁進してまいります。
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