実験をしつづけるモンドリアンが好きになる@モンドリアン展
『モンドリアン展ー純粋な絵画をもとめて』
モンドリアンが20世紀前半の社会情勢によって、オランダ国内からパリ、ロンドン、ニューヨークと住処を変えたように、彼の画風は自然主義の具象絵画から、キュビズム作品、そして幾何学的抽象作品へと変遷していく。それは叡智を追求する神智学の感化を受け「純粋な絵画」をもとめた孤高な旅路と言える。(公式図録より)
本展覧会は、いわゆるモンドリアンと言われて思い浮かべるこの作品に
至るまでの変遷を辿る展示になっています。
この記事では、展示や図録を参考に、モンドリアンが遂行した実験をざっくりではありますがまとめてみたいと思います。
目的
普遍的な芸術「純粋な絵画」に到達すること
実験1:風景画(25歳-34歳くらい)
リズム感覚と秩序、一体感やバランスへの希求
・幾何学や図案を歪める
・方向性を持った筆使い
・カンヴァスの端を切り落とす
・ウェット・オン・ウェット(未乾燥の絵具にさらに絵具を重ねる)
・色彩と画面の配置を体系化
・段階的な抽象化
実験2:フォービズム・点描(35歳-39歳くらい)
・点描主義の技法の探求
・構図や色彩の強度を増加
実験3:ゲーテの色彩理論
・補色効果の探求
・知覚の実験(光の過剰、またはほぼ光のない状態を作り出して描く。この絵は非常に暗い場所で描かれた)
実験4:キュビズム(40歳-44歳くらい)
・これまでに取り組んだモティーフをキュビズム風に描く
・曲線や斜線を削除して水平垂直関係や平面色によるダイナミックな形体へ移行
・建物を抽象的に解釈して構成
実験5:中間色(パステルカラー)(45歳-46歳くらい)
・新構造主義の方法論を論じる
原色は、奥行きや立体感をもって描かれたなんらかの形の一部として用いられる場合を除いて、ダイナミックでリズミカルな前後の動きによって独自の奥行きを獲得する。暖色の黄色は前へ突き出し、寒色の青は奥へ引き込み、濃密な赤色は他の2色と相関しどちらにも動く。
・原色を弱めた派生的な色を使用(原色に馴染みのない当時の人々に合わせて)
実験6:モデュール(47歳くらい)
・モデュール(基準となるもの。おそらくこの場合は小さな長方形)を提供
・物理的で生理的な色彩を通じて明色と暗色の変化を主題に求める
実験7:均衡(49歳くらいから)
・黒い四角が最小のモデュール・ユニット(4倍大の目立つ赤い四角に一致)
・ばらばらな諸要素を均等に評価
「均衡とは均一性や同一性を意味しないのと同様に、量的な等価性を意味するものではない」
・形の消失と色の「解放」
色はこれまであれこれの対象物や形に従っていたが、色空間を含む独自資産をもつ「色として」、形なしでやっと自立できるようになった。
実験8:線と平面の関係を再考(65歳)
・自身の初期の戦略の誤りを認める
・平面を破壊するために線を複数にする
・ジャズ音楽に着想を得る
まとめ
「純粋な絵画」を求め、モンドリアンが生涯に渡り実験を重ねていたことがわかります。様々な人から影響を受け、その都度、その思想や技術を探求し、自分の求めるものへの糧にしていったのです。実験家としてのモンドリアンがとても好きになりました。
私にはまだモンドリアンが求めていた「純粋な絵画」が一体なんであったのかを理解しきれていません。この展覧会で私が目で見て得たものは、「純粋な絵画」についてではなく、モンドリアンが求めた絵画への姿勢です。創作をするうえで、見習いたい姿勢でした。