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キャプションも見逃せない@マル秘展

見出し画像は、「作家たちの椅子」というコーナーに展示されていた、面出薫さんデザインの『あかりつきテーブル 自由時間』です。こんなすてきなテーブルとイスでいつか創作したいです...!

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さて、「デザインの解剖展:身近なものから世界を見る方法」展以来の21_21 DESIGN SIGHTになります。とある土曜日の午前中、昼間の東京タワーをみて、「あれ?こんなに東京タワーってスカスカだったっけ......」と少し不安をおぼえつつ、マル秘展へ。

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「めったに見られないデザイナー達の原画」と題されたマル秘展。私はスケッチを見るのが好きですが、自分自身では全く絵を描けないので、どうしても文字に注目してしまいがちです。このマル秘展でもそうでした。そこで今回は、私が展示内で気になったキャプションをご紹介したいと思います。

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無数に描いた ひたすら自分の中に釣り糸を垂れていた
原研哉|グラフィックデザイナー

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東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムのスケッチ
ここにあるものは一部。この大きさのものを無数に描いた。人の輪からマグマのようなものへとイメージが移行している。

俳句も「多作多捨」が大切なのだそう。私は生み出すのがノロノロなので、なかなか無数に...ということができずにいます。でもそれは言い訳で、生み出そうとしていないだけなのだと反省。

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アートポスターのためのスケッチ
竹馬のペーパーショウのポスターは自分のデザインの原点。初期のポスターは、ひたすら自分の中に釣り糸を垂れていた。

"ひたすら自分の中に釣り糸を垂れていた" という表現がまるで詩のようだと思いました。この言葉をみて思い出したのは、松本隆さんのおっしゃっていた「星雲」です。

(詞を)書くのは速いのね、僕ね
2時間くらい...
速く書けちゃう。
そこに、その世界に到達するまでに
長いと半年位かかるし。

何書こうってんじゃなくて、
なんか、星雲みたいなものがあってさ、
モヤモヤっとしたものがあって
じっと見てるとそれが凝縮してって、
だんだんクリアになってくるわけ。
余計なものが取り除かれてって
で、残ったものを言葉にしてあげるって感じ。
                    (情熱大陸 2009年放送)

星雲というのは、宇宙の塵や星間ガスの塊で成り立っているそうですが、私も創作にあたり、星雲になりうる塵やガスを日々あつめ、そこに釣り糸を垂らす、ということを意識したいと思いました。表現者や創作者に関わらず、何かを生み出す人というのは、探偵であり、探索家であり、採掘者であると考えていましたが、ここに釣り人も追加しようと思います。

あ、「釣り」で、松本隆さんと羽海野チカさんの対談を思い出しました。

羽海野 子供の頃は、兄が聞いているものを隣の部屋で聴く、という感じだったんです。それで兄の部屋に勝手に入ってレコードの歌詞カードをみると、松本さんの歌詞のものが多くて。最初聴いた時は、松田聖子さんのものが多かったので、「かわいい」と思ったんです。でも歌詞をあらためて読むと、心に引っかかるものが多くて。つるっと入ってくるのに、引っかかってでていかなくなっちゃうから、「ああ、すごい!」と思って。

松本
 釣り針みたいだね。

羽海野
 釣り針みたいに、飲み込みやすいんだけどちっちゃい棘がいっぱいあって。モグっと食べた後に、出ないことに気づく。しかもそれがどんどん残っていってしまうんです。 
             『風街茶房2005-2015 羽海野チカ×松本隆』

まず制作者の心の中に釣り糸が垂らされて、まだ形になっていないideaを釣りあげる。そして、それによって生み出された成果物が今度は釣り針になって、受け取る人の心へ投げ込まれる。すてきだ!!

なんでもないもの 折々のスケッチ
三谷龍二|木工作家

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なんでもないもの 
明確な「必要性」に応えるのは大切。でも、目的も持たず、おぼろげな雰囲気をピン留めするようなものも、同じように大切である。

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折々のスケッチ
生活デザインはマッチョなものではなく、暮らしの中のちいさな欠片のようなものが、形になることが多い。

この「なんでもないもの」や「暮らしの中のちいさな欠片」が、先ほど書いた星雲になる大切な要素なのではないかと思っています。

山折り谷折り 隅研吾|建築家

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折り紙でのスタディ
軽くて柔らかいものに構造的な強度を与え、単体で自立しブロックのように積み上がる案、山折り谷折りの連続で表面積を増やす案を模索した。

「山折り谷折り」という言葉に魅かれました。折り紙の折り方でしか聞かない言葉のように思います。小さい頃は折り紙が苦手でした。ぴったり合わせて折るのが下手で、どうしてもズレてしまうんです。でも大人になって、紙を折るだけで何かができるってすてきだな、と急に折り紙が気になりだしました。昨年は、折り紙を折っている歌詞も書かせていただきました。

均一になっていません 柴田文江|プロダクトデザイナー

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柴田さんがおっしゃっている「均一になっていない」「影が出ている」というのが具体的に何を指しているのか、素人の私には分かりません。でも、こういう小さな点を見逃さず、ひとつひとつ丁寧に詰めていかれている姿勢を拝見して、何事も真剣に取り組むことは間違いじゃない、と強く思うことができました。ただ私は、こだわりが執着になってしまうことがあるので、そこは気をつけないといけないと自分に言い聞かせています...。

たどり着きたい場所があるのならば、そこに向かってジタバタして、真剣に取り組むべきだということを、本日公開初日の『劇場版 SHIROBAKO』を観て改めて思いました。

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異なる時期のメモが出会う 鈴木康広|アーティスト 

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メモのスクラップブック
大学時代、スケッチを見返すために始めたメモのスクラップ。隣り合ったイメージが思わぬアイデアを誘発する。ページを半分に折ると、異なる時期のメモが出会う仕組みを編み出した。

この仕組みを拝見して、オクシモロン(撞着語法)を思い浮かべました。この語法の名前をしったのは、「OXYMORON」というカレー屋さんのメニューを読んでいたときです。

オクシモロン
反対の意味の語を組み合わせることにより、奥行きのある印象を生み出す語法のこと。例として「永遠の一瞬」、「公然の秘密」など。「真剣な遊び心」や「寛容なこだわり」をそなえたものの見方を忘れないように、また、いろいろな個性を生かして一層深い味を引き出すことができますように。そんな意味を込めています。  OXYMORONメニューより

少し違いますが、こういうことが言葉だけでなく、スケッチやメモでも起こりうることが発見でした。

キャプションにばかり注目してしまい、そのスケッチをたまに撮っていないというポンコツであったことに、記事を書きながら気がつきました。

私はデザイナーではありませんが、創作する者として、26名のデザイナーの方々から色々な姿勢や意識を学ぶことができたマル秘展でした。



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