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新事業の5メソッド


■新規事業の5メソッド
なぜ、今新規事業が求められるのか?なにが難しいのか?

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菅原大志@ライフビジョンコーチです。
私の本業の一つが新事業創出コーチ・コンサルタントです。
本日より、私が提唱している
”新規事業の5メソッド”
を7回に分けて紹介していきます。
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本日の内容
 1-1. 社会環境の急激な変化、既存事業だけで生き残れるのか?
 1-2. 新規事業を阻む3つの壁とは?
 1-3. 新規事業は“問題児”を取り扱う
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【1-1】
社会環境の急激な変化、既存事業だけで生き残れるのか?



この件について、3つの側面から考えてみたいと思います。
1つ目は製品・サービス寿命の短命化

「もし、企業が既存事業だけやっていたらどうなるでしょうか?」

多くの企業は売上・利益が減少し、いずれ運用する事が難しく
なりますよね。
これは、いかなる事業にも“寿命”が存在するためです。
事業は、導入期→成長期→成熟期→衰退期のサイクルをたどります。
一番儲かるのは、成熟期
この後、衰退期が確実にやって来るのですが、
多くの企業は気づかず、或いは気づいても組織保身のために、
多くの口実を用意して既存事業拡大を更に目指しがちではないでしょうか。

これも一定の効果があるのですが、変化が激しい今の時代は、
製品・サービスのライフサイクルは非常に早まっています。
今の認識のまま既存事業の拡大・延命を目指すと、
気づけば既存事業は衰退期。
新規事業を急いで立ち上げようとしても、
十分な「投資」の余裕がないってことないでしょうか?

製品・サービス寿命が短命化している今の時代、既存事業が手詰まりになる前に、次の一手である新規事業の確率は間違いなく必要だと思いませんか?

2つ目は日本の人口推移予測

みなさんもご存じの通り、日本は人口減少局面です。
総務省が平成23年に出した日本の人口予測はご存じでしょうか?
それによると、2100年の人口予測は約4,800万人!
そして高齢化率は約40%!
衝撃的なデータではないでしょうか。

日本の人口は明治維新(1868年)で約3,300万人、
その後急激な右肩上がりで人口は増加、ピーク時は2004年の約1億2,800万人です。
人口推移予測からみると、日本の人口は明治維新以降の急激な右肩上がりと同じ角度で今後は右肩下がりで人口が減少することとなります!!

日本は人口減少からみると皮肉にも世界の最先端です。。
世界中の誰も経験していない人口減の時代を、今から我々は過ごすことになります。

果たしてこんな人口減少局面の中、既存事業だけで大丈夫でしょうか?
みなさんの事業いかがですか?

もちろん、世界の人口は増加します。
世界市場でも十分戦える企業は、世界で勝負することは十分想定できます。
しかし、多くの企業は日本の売上をベースにしていると思います。
この急激な人口減少の中、新規事業を創出して明るい未来を作りませんか?

3つ目はトヨタの話
今までの2項目は一般論でもありましたので、具体的な企業の例として
日本一の企業トヨタを例にして考えたいと思います。

いま、自動車業界ではこんな事が言われています。
「100年に一度の大変革」
皆さんも一度は聞いた事があるのではないでしょうか。
今、自動車業界を語る上で2つのキーワードがあります。
それは「CASE」「MaaS」

まずCASEですが
C:Connected(つながる・コネクティッド)
A:Autonomous(自動運転)
S:Shared(シェアリング)
E:Electric(電動化 EV化)

つながる・自動運転の部分はソフトウエアの部分が大きな割合を占めます。
この領域は、グーグル・ウーバー・中国企業が圧倒的な投資力で
先行しているといわれています。
トヨタは危機感を強め、自前主義を捨てソフトバンク社と共同出資会社
Monet Technologies社を設立しました。

また、シェアリングが広がることにより、自動車産業の産業構造が
大きく変化する事が予測されています。
ここはMaaSの部分で詳しくお話したいと思います。

そして電動化
電動化が進む事により、部品点数が圧倒的に少なくてすみます。
1/2-1/3とも。。
将来的には、各モジュール事に製品化され、だれでも簡単に車を組み立てられる時代もくるでしょう。
また、日本の自動車業界は、エンジン(内燃機関)に競争力を
もっています。
よく、すり合わせの技術といわれる象徴の部品ですね。
しかしEV化される事で、エンジンはモーターに置き換えられ、
日本の競争力が失われる事も予測されています。
つまり、電動化により日本企業の競争力は失われ、そして部品点数が激減することにより、自動車産業を支える企業群(系列企業群)は
大打撃をうける事が予測されています。

そしてMaaS(Mobility as a service)
日本語にすると「サービスとしての移動」となります。個々人の移動を最適化するために様々な移動手段を活用し、利用者の利便性を高めるものです。
日本でもMaaS関連実証実験は各地が始まっていて、将来確実にMaaSの時代が来ると言われています。
*シェアリングはMasS概念のひとつ

ではMaaSの時代になるとトヨタを筆頭とする自動車会社はどうなるか?
今の自動車産業のヒエラルキー構造のTOPは自動車会社であり、
自動車産業全体の約41%の利益をとっているといわれています。
しかし、MaaSの時代になると、当然ながら産業構造が変わり、
MasS提供会社がヒエラルキーのTOPとなり、事業全体の約30%の利益を得るとの試算もあります。
つまり、自動車会社はMaaS提供会社の下請けの位置づけとなり、利益率低下が予想されます。
もちろん、トヨタをはじめ自動車会社がMaaS会社になる事も想定され、
実際それに向けた動きも出始めていますが、まだどこの会社が主導権を握るかは見えてません。。

また、MasSになれば移動手段やサービスの質が問われ、今みたいな車のデザイン性・性能への拘りはなくなり、ハード面の差別化が一層難しくなる事が予想されます。
*飛行機に乗る時、機体よりも座席の質が差別化ポイントになるイメージ
自動車会社の差別化は一層難しくなり、利益率もさがることになります。

この様に、今の自動車業界は堅調に見えてますが、近い将来大変革が差し迫っています。
当然、各社この変革に対して様々な新規事業検討を開始しています。
日本一の企業のトヨタでさえ、新規事業を創出していかないと、将来は生き残れないのが今の時代です。
みなさんの業界・会社はどうですか??

【1-2】新規事業を阻む3つの壁とは?

「新規事業が必要だ!」
みなさんも、そう感じて頂けましたでしょうか。
じゃ、すぐ始めよう。。。

その前に、知ってほしい事があります。
まずは、新規事業を阻む3つの壁です。

まず1つ目の壁 「気づきの壁」

みなさん、新規事業のネタを探せ!と言われたらどうですか?
結構、難しくないですか?
そんな時、チャンスは目の前に転がっている!と言われたら、
ムカつきませんか?
でも、これは意外に的を得ているのです。。

例えば、シェアリングエコノミーの雄「Uber」
日本では「Uber Eats」の方が有名かもしれませんね。
Uber Eatsを使った人に聞くと、非常に便利で満足度も高いですね。
Uber Eatsの仕組みは簡単
・自宅で飲食したい人
・飲食を提供して売上を伸ばしたい企業や個人
・自由に時間を選べて、働きたい時だけ働きたい人
この3者をマッチングするサービスです。

・・・でもこのアイデアって、革新的ですか?
いま考えたら、だれでも発想しそうなアイデアに見えませんか??
昔からある出前をアレンジしただけだ!!という人がいても良さそう
なビジネスモデルですよね。
でも誰もやってなかった。。
そして今、町中にUberEatsが走ってる!!

みなさんの業界ではどうでしょうか。
本当に新規事業のネタは目の前に転がってませんか?
自分達では当たり前すぎて、見逃しているアイデアはないでしょうか。

新規事業を考えるとき、先ずは自分の目の前のチャンスに気づけない
「気づきの壁」があるという事をしっておくことは重要ですね。

2つ目の壁 「ノウハウの壁」

新規事業の必要性を理解できたとしても、
・今までやってこなかった
・小規模でしかやってなくて大規模で実施するノウハウがない
そして、新規事業のネタ探しで顧客にヒアリングしても
・すでに一般化した情報だけしか入手できない
・顧客要望に応えると、大きな投資が必要となる
こんな話、よく耳にします。

例えば新規事業用の評価軸を用意する必要が出てきます。
新規事業は、失敗の確率は既存事業と比較して圧倒的に高いです。
既存事業のままの軸で社員評価をした場合、こんな事が起きえます。
・新規事業をやりたい人間がいなくなる
・新規事業担当者のモチベーションが下がる
・将来を見据えた新規事業を発案するはずが、
 安全な無難なアイデアしかでない・・・・・
こんな状況では、新規事業を創出するのは難しくありませんか?

また、顧客ヒアリングにおいても同様で、既存ビジネスをベースにした
ヒアリングでは、顧客の潜在需要を聞き出す事は難しいですよね?
新規事業の具体アイデアを顧客と協議しながら
ブラッシュアップする必要性も出てくるのではないでしょうか。

新規事業を創出する場合、体系的にノウハウを取得する
必要性があるのですが、そのノウハウがない。
ノウハウの壁がある事の認識、必要だと思います。

そして3つ目の壁:組織の壁

これは結構根深い問題があると思います。
まず、新規事業創出活動は投資活動であるとの認識が必要ですよね。
「当たり前だろ!」
そんな声が聞こえてきそうです。
その通りですね、当たり前なんです。
しかし、企業は利益を追求する組織体です。
失敗の確率が高い新規事業に投資するのは、組織体としても難しい課題となるのです。

企業によっては社内調整が非常に難しい可能性があります。
現在の組織体は、既存事業組織が力を持っているケースが多いと思います。
「俺たちが稼いでいる」意識が強いために、投資対象となる新規事業に
対してはどうしても否定的になってしまう!
私の実感としては、この感覚は年を追うごとに減少して新規事業の必要性が認識され始めていると感じますが、まだ既存事業優先の空気はあるのではないでしょうか。

また、イノベーションのジレンマもよく言われますね。
既存事業、そしてそれを守る組織は、自分たちのビジネスを否定することができず、破壊的イノベーションによりその地位を失う。

みなさんの業界・会社によって様々な状況があると思いますが、
企業規模の大小にかかわらず、新規事業の創出には組織の壁があり、
そこを乗り越えることが必要になってくることは認識すべきと思います。

【1-3】新規事業は“問題児”を取り扱う


みなさん、PPM分析をご存じでしょうか。
米大手コンサルティング企業のボストン・コンサルティング・グループが
発案したフレームワークで、見たり聞いたりした方も多いと思います。

◆花形(スター)
市場成長率、市場占有率ともに高い事業は「花形(スター)」に分類。
花形(スター)となる事業は、投資を継続することで、
「金のなる木」に移行していく事業であり、将来的に安定的な収益軸となる魅力的な事業(花形商品)です。
一方で、競争が激しいため、積極的に経営資源を投入し、適切な成長戦略を
描かなければなりません。

◆金のなる木
市場成長率が低く、市場占有率が高い事業は「金のなる木」
に分類されます。
金のなる木となる事業は、積極的な投資は控え、事業で生み出した利益を
他の成長産業に分配することが望ましいでしょう。
成長率が低く、新規参入も少ないことから安定した利益を生み出せます。

◆負け犬
市場成長率、市場占有率ともに低い事業は「負け犬」に分類されます。
短期的、長期的な利益が見込めない撤退すべき事業です。
経営者には事業の解体や売却を行い、余剰となった経営資源を
他の事業分野に投資するといった判断が求められます。

◆新規事業は、問題児
市場成長率が高く、市場占有率が低い事業
「問題児」となる事業は、競争が激しいにも関わらず、利益が出ず
多くの場合は収益はマイナスとなるが、市場占有率を高めることで、
将来的に「花形(スター)」や「金のなる木」になる可能性が高い事業でもあり、積極的な投資が求められます。

新規事業は、文字通り「問題児」なのです。
問題児を扱わないと、次世代スター・金のなる木の事業はできないのですが、収益は赤字の事業領域です。
そして、常に失敗のリスクがつきまとう厳しい事業領域でもあります。

この問題児と、どううまく付き合うのか?
変化の激しい今の時代、一層その舵取りが重要性を増しています。
ただ、間違いないのは、この「問題児」を取り扱わないと
「未来」はないということです。

*企業買収
 企業が大きくなると、企業買収をやることがありますね。
 見方を変えると、「大企業病」となり革新的アイデアが出しずらくなり、
 問題児・或いは花形事業を買収しているとも見れます。
 この様に、外部から新規事業を取り込む方法もあります。

新規事業を始める前に、新規事業特有の難しさもあることは、
最初に知っておいた方がよいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
少し長くなってので、本日のまとめ。

◆――――――――――――――――――――――――――――◆
・変化の激しい今の時代、新規事業の創出が必要
・新規事業創出には、3つの壁がある。
 それぞれの壁を認識した上で、しっかり対応していく必要がある。
・新規事業は「問題児」
 しっかりと付き合う方法を考えることが重要
◆――――――――――――――――――――――――――――◆

次回は、新規事業の失敗について
事業戦略・戦術ではなく関係性の構築がカギだ!というお話です。
ここは、盲点になっている部分で、非常に重要な内容になります。

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