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刺激的な雰囲気

モデルをしながら大学に通う18歳
界隈では少し名の知れた学生モデルである

男女とも友人は多い
中には所謂お近付きになろうとしてくる人もいる
それでも拒む理由さえなければ関係を続ける

彼の名はハルチカ
努力を怠らない真面目な青年である
周囲からすれば人生イージーモードのようで
学業とモデル業とプライベートのどれも
手を抜かずに熟しているのだ

そんなハルチカ
最近は新しい読者モデルも増えたのか
モデルのオファーも落ち着いている

サークルや部活動をするかアルバイトをするか
暫くの間考えていた

モデルのオファーが来るかもしれないと思うと
サークルか部活動
お金も稼げて経験も積めるのはアルバイト

大学の友人にも訊いてみる
どっちもやればいい
交遊関係が広まるからサークルか部活動
案外周りにはアルバイト派はいなかった

家族仲もいいので休日には家族で出掛ける
アルバイトをするか迷っていることを忘れて
飲食店の募集広告をスルーし続けた

気になった雑貨屋に入り商品を物色
買うまでには至らず退店しようとした時
隣のアパレルショップの求人の文字が目に入る

直感でココだと思った

証明写真を撮り履歴書を買って帰る
数時間かけて渾身の一枚を書き上げた
以前に買ったこともあるショップ
なんとなく自信もあった

履歴書を送り面接をする
サークルや部活動ではできない経験
面接を終えて退店する時にふと視線が合った
背の低めなツリ目の青年

すぐに反らされたけれど

一瞬ゾクッとした

面接が通りアルバイトを始めることになった
一人ひとりに挨拶をしていき見つけた
アノ人

彼は成田さん
このショップではメンズだけでなく
オールマイティに接客ができるらしい

ハルチカはまた彼を見つめてしまった

成田さんはノリもよく冗談をよく言う
他のバイトからも好かれている社員スタッフ
背の低さと目つきの悪さを気にしているが
周りからすれば愛嬌のようなもの

シフトが被るたびに見つめてしまう
ハルチカの無意識下で

ある時頼まれた業務を熟すべく
ハルチカは成田さんに訊きにいった

その時またアノ
ゾクッとした感覚が

どうしても成田さんから目が離せない
バレていないのか気付かない彼を見つめ
教わった内容もまばらに何度も訊き返した

もしかしたら既に変な奴と思われているかも

それでもハルチカは彼に目がいってしまう

可能性として
自分が同性を好きになっているのかもしれないと
大学の友人に話してみる

偏見はないし
ちょっと可愛らしさを感じるのも事実で

茶化されることなく聞いてはくれたが
解決にはならなかった

モデルのオファーがありバイトのない時期に入る
よく考えればファッション業界には
そうしたセクシャリティの人も少なくないと聞く

色んな現場で少し話題にしてみると
やはり話せる人がいるようで

どうしても目が離せず
ゾクッとした感覚もするのだと伝えると

やはり好意を抱いているかもしれないと
その内に二人きりで一緒にいたいだとか
触れたいだとかの欲求が生まれる可能性もあると

話してみてよかったと思いながら
今度は次のシフトが楽しみになってきた

他人に嫌われることのない人生
同等の好意でなくとも嫌がられはしないだろう

軽い気持ちでいた

いざシフトが被るとやはり目がいってしまう
自分が恋しているかもしれないと思うと尚更

在庫整理をしている成田さんを手伝うつもりで
彼が籠もっている倉庫に行くと
言われた欲求が顔を出した気がして

ゾクッとする感覚

あぁ これが触れたいという

無意識に手を伸ばしていた
肌に触れた感触に思わず力が入る

ハルチカは一点を見つめていた
ただ何を見ているかを自覚することなく

遠く微かに声が聞こえる
自分の名前を呼ぶ声
息苦しそうな制止の言葉

振り絞るように叫ばれた自分の名前に
目の前の光景が鮮明に映った

同時に手の力は抜けて震えが止まらない

ハルチカは成田さんの首を掴んでいた
触れたい欲求だなんて勘違いをして

恋心なんてかわいいものじゃない
得体の知れない黒い欲求

震える手を握り締めて
ひたすら謝り続ける

二人きりになんてなるんじゃなかった
あらゆることが後悔でしかない
今は少しも彼を見ることができない

荒い呼吸を整えた成田さんは
知り合って間もなく酷いことをしたハルチカを
一切責めることはなかった

それどころか彼は笑って
ずっと見てくると思えば
首の寸法でも計りたかったのかと

こんな状況でよく冗談が言えたものだ

震える手に差し伸べられた手も
少し震えていたが

手伝いにきたのだろうと声をかけられれば
ハルチカはまたその目に彼を映す

泣きたいのは成田さんなのに
泣いているのはハルチカだけだった

それから暫くはシフトに入っても気まずくて
見つめてしまうのは変わらないが
見ないように努力した

こういう時に限ってモデルのオファーもない

次のシフトを出さずに辞めてしまおうか
なんて思っていると

彼は臆することなく声をかけてくれる
むしろストレスでも溜めていないかと気遣って

大学やモデルの話題を出して
会話の機会を与えてくれる

今でもあの黒い欲求の正体はわからない
また欲求に呑まれるかもしれない

それでも彼が優しくしてくれるものだから
まだアルバイトを続けようと思うのだ

そしてこの気持ちの何たるかを
知っていこうではないか

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