(You Make Me Feel Like) A Natural Woman 歌詞と対訳

楽曲について

(You Make Me Feel Like) A Natural Woman / written by Gerry Goffin, Carole King, Jerry Wexler
ゴスペルの天才少女と注目されたアレサ・フランクリンですが、ポップ歌手として売り出したコロムビア・レコード時代は泣かず飛ばす。そこに目をつけたアトランティック・レコードのプロデューサー、ジェリー・ウェクスラーが1966年、同社に移籍させます。
移籍後は本来の彼女のゴスペル・フィーリングを前面に打ち出してヒットを連発。そんな勢いに乗った中、'60年代当時吹き荒れるウーマン・リヴの時流に沿った楽曲を企画していたウェクスラーは、ジェリー・ゴフィン/キャロル・キングのソングライターチームに制作を依頼。そうして1967年に発表したこの曲は、思惑どおりヒットしたばかりか、フェミニスト運動のアンセムとして受け継がれ、新しい時代の女性像としてアレサ自身の立場をも引き上げることになりました。
キャロル・キング自身も1971年発表のアルバム「つづれおり(Tapestry)」に収録していて、ダイナミックなアレサ版とはまた違った味わいがあります。

曲を聴く前にイメージしたいこと

一見、凡百のラブソングと変わらないように見えますが、異性に対する歌ではそもそも無く、"LOVE"という単語は一度も出ないのでラブソングですら無いのかもしれません。タイトルは"woman"とありますがその実態はジェンダーを超えて「あなたはありのままでいい」と訴える人間讃歌。それを公民権運動と女性解放運動のさなかに黒人の女性が歌うことで、世の中に強いインパクトを残したのでしょう。
2015年「ケネディ・センター名誉賞」の授賞式で、受賞者のキャロルを讃えるべくサプライズ出演してこの曲を歌ったアレサ。筆者は今回、その時の2人の心境をイメージして翻訳してみました。世の全女性に向けて楽曲を書いたキャロルに、その48年後に内容そっくりそのまま、アレサからの贈り物として返還されるわけですから、そりゃキャロルも取り乱すわけですな。YouTubeに動画がたくさんあるので検索してみて……それではどうぞ!

歌詞と対訳

Looking out on the morning rain
朝から 雨が降っているのを見ると
I used to feel so UNINSPIRED
気持ちが 落ち込んだものだわ
And when I knew I had to face another day
来るべき明日に 向き合わなくちゃと思うと
Lord, it made me feel so TIRED
ああ、疲れているな……って感じた

Before the day I met you, life was so UNKIND
出会うまでは つらい人生だったけど
But you're the key to my peace of MIND
そんな私を 心の安らぎへと導いてくれた人

'Cause you make me feel, you make me feel
あなたのおかげ あなたのおかげよ
You make me feel like a natural woman
私は私 そのままでいいと思えるのは

When my soul was in the lost and found
私の魂が 遺失物取扱所にあると知って
You came along to CLAIM IT
あなたは 受け取りを買って出てくれたわね
I didn't know just what was wrong with me
私の身に起こっている事が 何だか分からずにいる時
'Til your kiss helped me NAME IT
あなたのキスで それが何なのかハッキリした

Now I'm no longer doubtful of what I'm living FOR
もう私は 生きる理由を疑ったりしない
And if I make you happy, I don't need to do MORE
あなたを幸せにできれば それ以上何もいらない

'Cause you make me feel, you make me feel
あなたのおかげ あなたのおかげよ
You make me feel like a natural woman
私は私 そのままでいいと思えるのは

Oh, baby, what you've done to ME?
ああ、あなたは私に何てことをしてくれたの
You made me feel so good inside
あなたのおかげで 私はとても幸せ
And I just wanna BE
そして 私の願いはただ一つ
Close to you, you make me feel so alive
あなたと一緒に 生きていきたい

You make me feel, you make me feel
あなたのおかげ あなたのおかげよ
You make me feel like a natural woman
私は私 そのままでいいと思えるのは
You make me feel, you make me feel
あなたのおかげ あなたのおかげよ
You make me feel like a natural woman
私は私 そのままでいいと思えるのは

  • 結局、"natural woman"をどう訳すかがキモになってくるわけですが、womanを「女性」と訳すと一気に凡庸なラブソングになってしまう気がしていたら、コチラの記事の「ジェンダーを超えたメッセージ性がある」というご意見を目にしまして、全く同調するかたちで自分流に少々アレンジして引用させて頂きました。他の和訳ブログを探しても曲の成り立ちを踏まえているのか「女性」と訳しているのは少数派のようです。

  • The lost and found = 遺失物取扱所。これも前述の方の記事を拝見して、なるほど!と思った次第。Dixie Chickenにおける"on the house"(=店のおごり)とか、Mr. Bojanglesにおける"soft shoe"(=ソフト・シュー。タップダンスの様式のひとつ)とか、単語自体は簡単なのに意味が通じないなあと思っていたら、単語同士をつなげると全く別の意味になる場合があり、意味を調べる際に注意するようにしています。

  • "your kiss helped me"と言ってるから、やはりこの曲は男女関係を歌っているんじゃないの?と訝しむそこのあなた。ケネディ・センターの動画を見てみてください。キャロルとアレサで投げキッスの応酬ですよ(笑)。二人は同じ1942年生まれ、誕生日も2ヶ月も違わないので、同時代を生きた女性として、音楽的パートナーという立場を超えた真のソウル・メイト同士だったのではないかと推測しています。

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