Me and Bobby McGee 歌詞と対訳
楽曲について
Me and Bobby McGee / written by Kris Kristofferson, Fred Foster
アメリカのカントリー歌手で俳優としても活躍したクリス・クリストファソンと、彼の所属したレコード・レーベルの創業者フレッド・フォスターとの共作による楽曲。
初出は1969年、ロジャー・ミラー(Roger Miller)なる男性カントリー歌手のバージョンで、作者クリスも自身のバージョンを1970年のソロ・デビューアルバム「Kristofferson」に収録。その他カントリー系を中心におびただしいカヴァー・バージョンが存在しますが、一般的に最もよく知られているのは、1971年発表・アルバム「パール(Pearl)」に収録されシングル・カットもされたジャニス・ジョプリンのバージョン。以下、本稿の内容も彼女のバージョンに基づきます。
曲を聴く前にイメージしたいこと
作者クリス曰く、この曲はフェデリコ・フェリーニ監督・1954年の映画「道(La Strada)」にインスパイアされて書いたとのこと。映画になぞらえて原曲はわがまま男と純粋な女の心理描写が主題になっていますが、ジャニスが歌う際は男女関係が逆転。そのことを踏まえた上で筆者は以下のプロットを設定しました。
成り行き任せのヒッチハイクでアメリカ横断を試みるヒッピーの男女。女は男に依存し一緒にいるだけで満たされる。この不安定な幸福感がなんとなく続けばいい……女はそう思っていたが、旅の途中、男が安定を求めていることに気付いた女は、葛藤しつつも男に別れを告げる。
どのバージョンにも存在する終盤の「ラララ~」は、特に翻訳する意味も無いので本稿では割愛していますが、この部分のジャニスの魂のスキャットはまさに葛藤が真に迫ってくる印象!
この曲はジャニスの短いキャリアにおける唯一のビルボードNo.1の曲なのですが、獲得した時ジャニスは既にこの世にはいませんでした。そのことを踏まえると涙無くして聴けませんね……それではどうぞ!
歌詞と対訳
Busted flat in Baton Rouge, waitin' for a TRAIN
バトン・ルージュで金が底をつき 汽車を待っていた
When I was feelin' near as faded as my JEANS
色褪せていくジーンズのように 私の気分は憂鬱
Bobby thumbed a diesel down, just before it RAINED
でも雨の降る直前 ボビーは親指一本でトラックを拾い
That rode us all the way in to New ORLEANS
おかげで私たち ニューオーリンズまで一直線
I pulled my harpoon out of my dirty red bandana
汚れた赤いバンダナの中から ハーモニカを取り出して
I was playin' soft while Bobby sang the BLUES
ボビーが歌うブルースに合わせて 私は優しく吹いた
Windshield wipers slappin' time, I was holdin' Bobby's hand in mine
フロントワイパーがメトロノーム 私はボビーの手を固く握って
We sang every song that driver KNEW
私たちは 運転手のリクエストに全部応えた
Freedom's just another word for nothin' left to LOSE
自由とは 言い換えれば 失うものが何も無いってこと
Nothin', don't mean nothin', honey, if it ain't FREE
無くて上等 だって自由じゃなければ 意味が無いもの
Feelin' good was easy, Lord, when he sang the BLUES
彼がブルースを歌いさえすれば ほら、気分は上々
You know feelin' good was good enough for ME
心地好ければ それだけで私は充分だった
Good enough for me and my Bobby MCGEE
私とボビー・マギーにとっては それだけで充分だった
From the Kentucky coal mine to the California SUN
ケンタッキーの炭鉱から 太陽の輝くカリフォルニアへ
Bobby shared the secrets of my SOUL
ボビーは道中 私の秘めた想いをずっと分かち合ってくれた
Through all kinds of weather, through everything we DONE
どんなに酷い天気でも どんなに業にまみれても
Bobby baby kept me from the COLD
愛するボビーと一緒なら 私は寒くなかった
One day up near Salinas, Lord, I let him slip AWAY
サリナスに到着する日 ああ……私は彼とお別れしたの
He's lookin' for that home, and I hope he finds it
彼は安住の地を探していて 私も見つかることを願っていたけど
But I'd trade all of my tomorrows for one single YESTERDAY
その一方で たった一度の過ちを全ての未来と引き換えにする私がいた
To be holdin' Bobby's body next to mine
もう一度 ボビーに抱かれたいために
Freedom's just another word for nothin' left to LOSE
自由とは 言い換えれば 失うものが何も無いってこと
Nothin', and that's all that Bobby left ME
無くて上等 ボビーは去った もう失うものは無いの
Well feelin' good was easy, Lord, when he sang the BLUES
彼がブルースを歌いさえすれば ほら、気分は上々
Hey feelin' good was good enough for ME
心地好ければ それだけで私は充分だった
Good enough for me and my Bobby MCGEE
私とボビー・マギーにとっては それだけで充分だった
La da da la da da… Bobby McGee yeah
La da da la da da… Bobby McGee yeah
La da da la da da… Hey an’ a Bobby lo no Bobby McGee yeah
La da da la da da… Hey an’ a Bobby lo no Bobby McGee yeah
Lord, I called him my lover, called him my MAN
ああ……彼は私の恋人 私の男 そう思っていた
I said I called him my lover, did the best I CAN, come on
私の恋人として 全てを捧げたというのに!
And a Bobby no, and a Bobby McGee yeah
Lo lo lo lo lo lo lo… Hey hey hey Bobby McGee lo
busted flat は当初「タイヤがパンクした」と訳していたのですが、コメント欄にあるとおり Lonesome Cowboy 様よりアドバイスを受けて「金が底をつきた」に変えました。
I pulled my harpoon out of my dirty red bandana……「harpoon(銛)」はハーモニカを示すスラング。他の多くの翻訳ブログ記事が同様の解釈をしていて本稿も一応それに倣っていますが、筆者は「(血管を浮かせて注射しやすくするために)赤いバンダナで縛った腕に刺さっていた注射針を抜いた」という説も捨てきれずにいます……。
The Kentucky coal mine=ケンタッキーの炭鉱は「You’ll Never Leave Harlan Alive」の稿でも触れていますが、朝10時から昼3時までしか日光が差し込まない過酷な環境。太陽が眩しいカリフォルニアとのコントラストを表現する対比として効果的に用いられていますね。
I’d Trade All My Tomorrows……これはエディ・アーノルドやウィリー・ネルソン、マール・ハガードなどが歌ったカントリークラシック「I’d Trade All My Tomorrows (For Just One Yesterday)」のタイトルをそのまんま引用しています。
ボビーのモデルは Barbara “Bobbie” McKee という女性。一般的にボビーは男の子 Robert の愛称ですが、女の子の Roberta や Barbara の愛称としても用いることもあり、男女兼用の愛称として通じるようです。男性ボーカル/女性ボーカルどちらも歌えるということを考えると songwriting に便利な名前ですね。日本語の歌詞だとこうはいかない!