Long May You Run 歌詞と対訳
楽曲について
Long May You Run / written by Neil Young
ニール・ヤング作。盟友スティーヴン・スティルスと一時的に結成した「スティルス=ヤング・バンド」名義で、1976年に発表した唯一のスタジオ・アルバムのタイトル曲。ですが曲自体はもっと以前に書いていたようで、CSN&Yの1974年のコンサートで既に歌われているのを確認できます。
個性的な二人がぶつかり合う同バンドは、ほどなく瓦解、ですがこの曲はニールのお気に入りなのか、その後のソロ活動等でもコンサートで歌い続け、ファンの間でもキャリア屈指の名曲として評価されています。
ニルス・ロフグレン(ニール・ヤング&クレイジー・ホースに一時期ギタリストとして参加)、エミルー・ハリスなどが良質なカヴァーを残していますが、筆者は日本のアコースティック・ユニット「テキーラサーキット」がデビューアルバム1曲目に収録したバージョンが大のお気に入り。彼らのライブや音源を通じてアメリカン・ミュージックの魅力に目覚めたという点で、筆者にとって非常に思い入れのある曲です。
曲を聴く前にイメージしたいこと
苦楽を共にした初めての愛車。でも故障をきっかけに手放し、カナダからアメリカ西海岸の次のオーナーの元へ。きっと今頃サーフボードを乗せて波打ち際を走ってるんだろうなあ。これからも末永く元気でいてくれよ!とかつての相棒にエールを送る、そんな内容です。車の擬人化という面白いアプローチは、普遍的な人生の応援歌のようなテイストをこの曲にもたらします。
筆者が音楽武者修行のため渡米を決意した2010年2月。勢いで8年間勤めた会社に辞表を提出したものの、先行きの不安からそれが本当に正しい決断だったのか迷い続ける日々でした。
そんな時ふとテレビに目をやると、バンクーバー冬季オリンピックの閉会式で、ギター1本でこの曲を歌うニール・ヤングの姿が!なんだか彼から個人的に応援されて背中を押されたような気がして、吹っ切れました。その時のアメリカでの経験を元に、今こうしてsongwritingの魅力を伝えるブログを書いてます。この翻訳が、巡り巡ってまた誰かの応援歌になることを願って……それではどうぞ!
歌詞と対訳
We've been through some things TOGETHER
僕ら一緒に いろんな経験をしてきたね
With trunks of memories still to come
明日のワクワクを トランクに詰め込んで
We found things to do in stormy WEATHER
たとえ嵐でも 行き先を見失うことはなかった
Long may you run
これからも走り続けよう
Long may you run, Long may you RUN
走り続けよう 走り続けよう
Although these changes have come
たとえ 時代が移ろおうとも
With your chrome heart shining in the SUN
太陽の元で輝く その錆びないハートで
Long may you RUN
これからも走り続けよう
Well, it was back in Blind River in 1962
それはブラインド・リバー 1962年のこと
When I last saw you alive
健在な君の姿を見たのは それが最後かな
But we missed that shift on the long decline
減速の時ギアチェンジを誤って 故障させたっけ
Long may you run
今も走り続けていますように
Long may you run, Long may you RUN
走り続けよう 走り続けよう
Although these changes have come
たとえ 時代が移ろおうとも
With your chrome heart shining in the SUN
太陽の元で輝く その錆びないハートで
Long may you RUN
これからも走り続けよう
Maybe The Beach Boys have got you now
今頃 君はビーチ・ボーイズに夢中かな
With those waves singing "Caroline NO"
カーラジオの「キャロライン・ノー」に合わせて 波も歌う
Rolling down that empty ocean ROAD
そんな誰もいない海岸線を 駆け抜けてるんだろう
Getting to the surf on time
サーフィンの時間に 間に合うようにね
Long may you run, Long may you RUN
走り続けよう 走り続けよう
Although these changes have come
たとえ 時代が移ろおうとも
With your chrome heart shining in the SUN
太陽の元で輝く その錆びないハートで
Long may you RUN
これからも走り続けよう
long may 〇〇 は、いわゆる祈願文。本来は「〇〇しますように」という意味合いですが、「僕」と「愛車」の相棒同士のような関係を表現するためにちょっと崩して「走り続けよう」としました。
memories still to come……「これからの思い出」とは、なんだか矛盾してますが一種の言葉遊びなのでしょうかね。これも雰囲気で意訳しました。
chrome……クロムメッキとして用いられる金属のことですが、その特徴は「錆びない」。chrome heartとは信念を持って活動し続ける、実にニール自身を表しているかのような素敵な言葉ですね。
Blind River……地名。カナダ・オンタリオ州ブラインド・リヴァーです。1962年にこの地で、ニールの最初の愛車はトランスミッションが故障。曲中では車は次のオーナーに引き継がれていますが、実際には廃車になったんだそうです。
With those waves singing “Caroline No”……Caroline Noはビーチ・ボーイズ1966年のヒット曲。ここでのwaveは「波」と「周波数」のダブル・ミーニングと解釈して、翻訳に落とし込みました。
ちなみに、この最初の愛車を廃車にしたあとニールが次に乗ったのが、バッファロー・スプリングフィールド結成のきっかけにもなった伝説のポンティアック霊柩車。その奇跡のエピソードは面白いので是非、各自でググってみてください。