Johnny B. Goode 歌詞と対訳
楽曲について
Johnny B. Goode / written by Chuck Berry
ロックンロール創始者の1人とされるチャック・ベリーの代表曲。発表は1958年ですが、その特徴的なイントロは全てのギター小僧が一度はコピーを試みるエレキギターのスタンダード。特に筆者の世代にとっては、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(1985年)劇中における主人公マーティ・マクフライによるパフォーマンスの影響が大きいと思われます。
そんなギター・テクニックやダック・ウォークなどの派手なパフォーマンスに隠れがちですが、この人の本質は songwriter。数々のヒット曲:「ロール・オーバー・ベートーヴェン」「ユー・キャント・キャッチ・ミー」「ロック・アンド・ロール・ミュージック」「スウィート・リトル・シックスティーン」…etc。実は全て、チャック・ベリー自身が書いています。
曲を聴く前にイメージしたいこと
学は無いけどギターを弾かせれば誰もが振り向く凄いヤツ、その名もジョニー・B・グッド。チャック自身が1972年のローリング・ストーン誌のインタビューで語るところによると、主人公ジョニーのモデルは概ねチャック自身とのこと。しかしながらこの曲で描かれるキャラクターはチャックとは多少異なる部分があります。
ジョニーがアメリカ南部、ニューオーリンズ近郊出身なのに対し、チャック自身はミズーリ州セントルイス出身(Goodeという名前はチャックが少年時代を過ごした Goode Avenue から取っている)。読み書きができないとするジョニーと異なり、チャック自身は理美容の学校を卒業しており高い教養を備えていたようです。セントルイスで美容師をしていた1955年にマディ・ウォーターズに見出されシカゴのチェス・レコードとの契約に至った彼が、シカゴとは真逆のディープ・サウスへの憧れを元に創造した自らの分身、それがジョニー・B・グッドなのかもしれません。
ギター偏重の楽曲と思われがちですが、歌詞に注目するとまさにsongwritingのお手本!貨物列車の車輪に合わせて刻むロックンロール・リフとシンクロするように、ビシバシ決まるライミングは痛快そのもの。全体の言葉遣いもリズミカルです。
まさに言葉そのものが音楽を生み出す典型。サビ部分はあえて翻訳しません。まあ訳すまでもないんですが(笑)、拙noteの主旨……英語詞による songwriting はライミングを中心とする修辞技法が生み出す「言葉の音楽」を楽しむことが本質で、日本語訳はそれを理解する手助けとして設けているにすぎない、ということを知って頂くための好例だと思った次第。
ビートルズやローリング・ストーンズをも魅了したのはギター・テクニックや派手なパフォーマンスだけじゃない。何よりも注目すべき「歌人:チャック・ベリー」を堪能してみてください……それではどうぞ!
歌詞と対訳
Deep down in Louisiana close to NEW ORLEANS
ルイジアナの奥深く ニューオーリンズの程近く
Way back up in the woods among the EVERGREENS
一年中枯れ果てない 緑の森に ずっとそこにいる
There stood a log cabin made of earth and WOOD
土と木で 丸太小屋を建てて 住んでるんだ
Where lived a country boy named Johnny B. GOODE
生粋のカントリー・ボーイ その名もジョニー・B・グッド
Who never ever learned to read or write so WELL
読み書きなんて まともに習ったことも無いが
But he could play a guitar just like a ringin' a BELL
目が覚めるようなギターを 見事に弾いてみせる
[Chorus]
Go, go
Go, Johnny, go, go, Go, Johnny, go, go
Go, Johnny, go, go, Go, Johnny, go, go
Johnny B. Goode
[Verse 2]
He used to carry his guitar in a gunny SACK
彼はギターを 麻袋に入れて持ち運び
Go sit beneath the tree by the railroad TRACK
線路そばの樹の下に 腰掛けるんだ
Oh, the engineers would see him sitting in the SHADE
そして機関士は見た 木陰に座った彼が
Strummin' with the rhythm that the drivers MADE
車輪のリズムに合わせて ギターをかき鳴らす姿を
People passing by, they would stop and SAY
すると通りすがりの人々が 立ち止まってこう言うのさ
"Oh, my, but that little country boy could PLAY"
なんてこった!この田舎小僧、良いプレイをしやがる
[Chorus]
Go, go
Go, Johnny, go, go, Go, Johnny, go, go
Go, Johnny, go, go, Go, Johnny, go, go
Johnny B. Goode
[Verse 3]
His mother told him, "Someday you will be a MAN
彼の母は言ったんだ いつの日かお前は大物になる
And you will be the leader of a big ol' BAND
ビッグ・バンドの リーダーになれるね、と
Many people coming from miles AROUND
遠方からも たくさんの客がやってきて
To hear you play your music when the sun go DOWN
日が暮れるまで お前の奏でる音楽を聴くだろう
Maybe someday your name will be in LIGHTS
きっといつか お前の名前は脚光をあびるから
Sayin' 'Johnny B. Goode TONIGHT'"
しっかり言っておけ 今夜の演奏はジョニー・B・グッドだ!
[Chorus]
Go, go
Go, Johnny, go, go, Go, Johnny, go, go
Go, Johnny, go, go, Go, Johnny, go, go
Johnny B. Goode
前述のインタビューによると、元々「colored boy」にしていた箇所を、それではラジオで放送できないということで「country boy」に変えたそうです。北部でも南部でもない大都会セントルイス出身で、音楽的にはカントリーっぽく黒人でありながらブルース然としていないチャック。アイデンティティの危機もあったことでしょうが、逆にそのユニークさが独自のロックンロールを生み出し、白人にも黒人にもリスペクトされる存在になったのでは。
ring a bell……直訳すると「ベルを鳴らす」ですが、転じて「見覚えがある」「心当たりがある」「ピンと来る」というふうに、記憶や心にスパイクが刺さるような心象を描く慣用句のようです。筆者は目覚まし時計のベルが鳴るイメージで翻訳しました。
the rhythm that the drivers made……the engineers=機関士、じゃあ driverは運転手?と思いがちですが、ここでは動力の伝達機構としてのdriversと理解し、そこから「車輪」と意訳しました。確かにチャックの刻むロックンロール・リフは、列車が進むように力強いですよね。