When a Man Loves a Woman 歌詞と対訳

楽曲について

When a Man Loves a Woman / written by Calvin Lewis, Andrew Wright
1966年発表、アラバマ出身のソウル・シンガー、パーシー・スレッジのデビュー曲にして最大のヒット曲。1994年公開のアメリカ映画「男が女を愛する時」の主題歌をはじめ、数々の映画タイアップや、ベット・ミドラーやマイケル・ボルトンによるカヴァーでもおなじみです。
ピーター・ギュラルニック著「スウィート・ソウル・ミュージック」の中に、元々パーシー自身が持っていた「Why Did You Leave Me, Baby?」という曲のアイディアを地元ラジオ局のDJ/音楽プロデューサーであるクイン・アイヴィーが偶然耳にし、一緒に歌詞を変えて売り出そうと提案する様子が描かれているので、クレジットは本来なら written by Percy Sledge, Quin Ivy になるところ。
ですがクレジットは何故かカルヴィン・ルイスとアンドリュー・ライトとなっています。彼らはパーシーがデビュー前に在籍したグループ、エクスワイアーズのメンバーで、この曲のアレンジを手伝ってくれたお礼にクレジットを譲ったんだとか。いかにも田舎出身の朴訥な青年・パーシーらしいエピソードです。
クインの制作チーム(ダン・ペンも関わっている)により練りに練られた上でリリースされた楽曲は、ビルボードR&Bチャートのみならず総合チャートも席巻し、マッスル・ショールズ産サザン・ソウルとして歴史上初めてポップ・チャート首位になった楽曲、とされています。

曲を聴く前にイメージしたいこと

「ある男がある女を愛する時……」と、あくまでも社会的良識としての男女論を語るお説教のような導入部分。しかしラインが進むにつれて、それが歌い手自身の心理とクロスフェードしていき、ブリッジ部で「その男とは、すなわち俺だ」と判明(a man → this man に変わるところにご注目!)。このブリッジの4行がまさに魔法で、一途な男と冷酷な女の心理的状況が見事に凝縮されています。「一途なのは女で、騙すのはいつも男だ」というご意見もあるでしょうが、それは一旦置いておきます(笑)。
この曲はパーシーのデビュー曲として完璧に世に送り出すために相当推敲を重ねたようですが、セクション毎に心理描写の解像度が上がっていき、最後の最後で「それでもお前は俺の全てだ!」とぶちかますあたり、思わず拍手喝采を贈らずにいられません。
拙ブログで取り上げる楽曲はカントリーが多いのですが、その対比として意図的に黒人音楽も取り上げています。ストーリーテリングや情景描写を巧みに用いて心理描写を輪郭から形作っていくカントリーに対し、黒人音楽はど真ん中にある「魂」をより直接的に炙り出していく感じで、この楽曲はまさに典型、文字通り完璧なまでの「ソウル・ミュージック」ここにあり!といった印象です……それではどうぞ!

歌詞と対訳

When a man loves a woman, Can't keep his mind on nothin' else
男が女を愛する時 男は他の事など考えられない
He'd change the world for the good thing he's FOUND
世界をも変えてしまうのだ ようやく見つけた愛のためなら
If she is bad, he can't see it, She can do no wrong
たとえ悪い女でも 過ちを犯すはずがないと男は信じている
Turn his back on his best friend if he put her DOWN
もし男の親友が女を貶めようものなら 縁を切ることだろう

When a man loves a woman, He'll spend his very last dime
男が女を愛する時 男は全財産を投げ打つだろう
Tryin' to hold on to what he NEEDS
必要としている人を その手に繋ぎ止めるために
He'd give up all his comforts and sleep out in the rain
心地よい安らぎを捨てて 雨中で眠るのも厭わない
If she said that's the way, It ought to BE
女にそうしろと言われたなら そうすべきだと思っている

Well, this man loves you, woman
女よ ほら、「この男」はお前を愛している
I gave you everything I HAD
こんなにも 俺は全てをお前に捧げたんだぜ
Tryin' to hold on to your heartless love
お前の「冷酷な愛」を 繋ぎ止めるために
Baby, please don't treat me BAD
だからベイビー、そんな酷い仕打ちをしないで

When a man loves a woman down deep in his soul
男は女を 魂の奥底から愛するけれど
She can bring him such MISERY
その女の仕打ちは 男を惨めにするだけ
If she is playin' him for a fool, He's the last one to know
女が体よく騙しているから 男はついに気付かないのだ
Lovin' eyes can never SEE
愛情のこもった眼差しの先には 実は何も無いことに

When a man loves a woman, He can do her no wrong
男が女を愛する時 男は女にひたすら一途で
He can never want some other GIRL
他の女性を求めることなど 絶対に無い
Yes, when a man loves a woman, I know exactly how he feels
そう、男が女を愛する時 俺は男の気持ちがよくわかる 
Cause baby, baby, you're my WORLD
ベイビー、何故って お前は俺の全てだからさ

When a man loves a woman......
男が女を愛する時……

  • He'll spend his very last dime……最後のダイム(10セント硬貨)まで使い切る。公衆電話から電話をかけているのでしょうか?財布の小銭まで全て女につぎ込む、と解釈して意訳しました。

  • play someone for a fool……人をばかにすること、の他にcollinsdictionaryによると「誰かを騙して自分の利益のために利用すること」とあり、後者がしっくりきました。

  • He's the last one to know……直訳すると「彼こそがそれを知る最後の人物」ですが、転じて「彼は最後まで知ることがなかった」という意味で解釈しました。The husband is always the last to know(=知らぬは亭主ばかりなり)といった、ことわざでも使う表現のようです。


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