Ventura Highway 歌詞と対訳
楽曲について
Ventura Highway / written by Dewey Bunnell
「名前のない馬(A Horse With No Name)」や「金色の髪の少女(Sister Golden Hair)」など、数々のヒット曲で70年代に人気を博したイギリス出身の3人組、アメリカ。
1972年発表、彼らの2ndアルバム「Homecoming」の1曲目に収録されたのがこの楽曲。シングルカットもされ全米チャートでは8位が最上位ですが、アコースティック・ギターによるイントロ/リフと、美しい三声ハーモニーが印象的な、彼らのバンドサウンドを象徴するような曲です。作者はバンドの中心メンバーであるデューイ・バネル。
曲を聴く前にイメージしたいこと
60年代末のヒッピー・ムーブメントの喧騒を経た70年代、自然回帰を志向した多くの若者が夢中になったサーフィン。カリフォルニア州ベンチュラはLAの北に位置する全米屈指のサーフスポットで、自然志向の若者が集まる街を象徴するように、かのパタゴニアが本社を置いています。
そんなベンチュラに向けて、遥か離れた雪深いネブラスカ州オマハから憧憬の念を抱く少年ジョーと、彼を見守る大人とのやりとり。作者デューイの証言などを元に、筆者はそう解釈しています。実際にはヴェンチュラ・ハイウェイなる高速道路は存在しないそうで、ジョーが夢見るファンタジーの中にあるハイウェイ、ということにしておきましょう。
ジョーは作者デューイ自身で、わかりづらい内輪ネタが多く当時若干20歳の若者が背伸びして書いた感が否めない未完成度ですが、それが逆に若々しい魅力を醸し出し、さらに1978年の映画「ビッグ・ウェンズデー」に象徴されるような自然回帰の70年代の風潮にマッチしたのでしょう。我が青春プレイバックとばかりに(2024年現在の)60代後半あたりのイケオジ達にやたら人気がある曲です……それではどうぞ!
歌詞と対訳
Chewing on a piece of grass, walking down the ROAD
葉っぱ1本 口に咥えて 道を歩む
Tell me, how long you gonna stay here, JOE?
なあジョー いつまでここにいるつもりだ
Some people say this town don't look good in SNOW
この街の雪景色はイマイチだって言う奴もいるが
You don't care, I KNOW
まあ お前は気にしてないんだろう
Ventura Highway in the SUNSHINE
日差しの元で輝く ヴェンチュラ・ハイウェイ
Where the days are longer the nights are stronger than MOONSHINE
太陽は遥か高く 夜は「月明かり」より強烈
You're gonna go, I know
そこが お前が目指す場所 そうだろ?
'Cause the free wind is blowing through your HAIR
自由の風が 髪をなびかせる場所
And the days surround your daylight THERE
一日中 まばゆい陽射しに囲まれる場所
Seasons crying no DESPAIR
絶望するヒマも無く 季節がめぐる場所
Alligator lizards in the air, in the AIR
ほら、ワニかトカゲか? ヘンテコな雲が舞ってる
Wishing on a falling star, waiting for the early TRAIN
流れ星に願いごとをして 始発を待っているのかい
Sorry boy, but I've been hit by purple RAIN
すまないが 俺は「紫の雨」に打たれてしまった
Aw, come on, Joe, you can always change your NAME
まあ、ジョー 行き詰まったら名前を変えてやり直せばいい
Thanks a lot, son, just the SAME
とにもかくにも達者でな 坊や!
Ventura Highway in the SUNSHINE
日差しの元で輝く ヴェンチュラ・ハイウェイ
Where the days are longer the nights are stronger than MOONSHINE
太陽は遥か高く 夜は「月明かり」より強烈
You're gonna go, I know
そこが お前が目指す場所 そうだろ?
'Cause the free wind is blowing through your HAIR
自由の風が 髪をなびかせる場所
And the days surround your daylight THERE
一日中 まばゆい陽射しに囲まれる場所
Seasons crying no DESPAIR
絶望するヒマも無く 季節がめぐる場所
Alligator lizards in the air, in the AIR
ほら、ワニかトカゲか? ヘンテコな雲が舞ってる
chewing on a piece of grass……草を口に加えるというのは日本人にとってはドカベンの岩鬼くらいしか思いつきませんが、アメリカ人にとっては田舎のカウボーイを連想させるメタファーのようです(草笛にする)。
the days are longer……「日照時間が長い」ですが、直訳だと詩的につまらないので少々色付けしました。筆者が初めてカリフォルニアを訪れた際に、20時くらいでも日が煌々としていてビックリしたのを覚えています(思い返せば、単にサマータイムだっただけですが)。
moonshineは文字通り「月明かり」ですが、「密造酒」という別の意味もあります。クラフトビール醸造所が多いベンチュラのダウンタウンを表現しているのでしょう。同じダブルミーニングを巧みに用いていることで有名なのがジョン・デンバーの「Take Me Home, Country Roads」。これも後日改めて翻訳します。
sunshine と daylight。意味がほぼ同じ言葉を別の単語で書き分けていることに倣い、翻訳も「日差し」「陽射し」と漢字表記を分けました。それにしても、漢字表記が2種類あるとは!日本語の勉強になります。
alligator lizards in the air……これは作者デューイが少年時代、家族でカリフォルニアをドライブをした時の実体験に基づきます。道中でパンクしてパパは路上で修理中。そんな時、デューイ少年が空を見あげると、ワニやトカゲを想起させる変わった形の雲が流れていたんだそうな。
purple rainは意味不明。そのことについて英語版wikipedia によると、メンバーのジェリー・ベックリー曰く「You got me(さあね)」とのこと(笑)。ライミング優先で適当に選んだだけだと思いますが、このフレーズにインスパイアされたプリンスが後に「Purple Rain」を書いたとか。名曲が名曲を生む!