If I Needed You 歌詞と対訳

楽曲について

If I Needed You / written by Townes Van Zandt
アメリカのシンガーソングライター、タウンズ・ヴァン・ザントによる楽曲で、1972年のアルバム「The Late Great Townes Van Zandt」に自身のバージョンを収録。1981年にはエミルー・ハリスとドン・ウィリアムズのデュエットでカヴァーされ、エミルーのアルバム「Cimarron」に収録されシングルとしてもリリース。ビルボードのカントリーチャートで3位、カナダでは1位を獲得しました。
2009年には、同年公開のアメリカ映画「クレイジー・ハート(Crazy Heart)」の劇中に用いられ、サウンドトラック盤にも収録。映画は翌年のアカデミー賞でジェフ・ブリッジズが主演男優賞を受賞するなど、数々の映画賞において非常に高い評価を受けました。

曲を聴く前にイメージしたいこと

心に傷を負った男が、寄り添って苦痛を癒やしてくれるパートナーと出会う。そして希望とともに昇る朝日を毎朝一緒に見続けたいと切に願う……。
タウンズ・ヴァン・ザントは、その楽曲が数々の大物アーティストにカヴァーされるなど脚光を浴びながらも、自身はマイペースな音楽活動を保ち決して表舞台に出ることはありませんでした。その一方で薬物中毒とアルコール中毒に、生涯を通じて悩まされます。
映画「クレイジー・ハート」は、落ち目になりアルコール中毒に悩まされスランプから抜け出せない年老いたカントリー・シンガーが主人公。そんな彼が自分を理解してくれる女性記者と出会い、自分自身を変えるきっかけを得るという物語です。シングルマザーである彼女とその息子との触れ合いのシーンで、この曲は効果的に使われています。
映画の制作者は主人公のキャラクター設定の一部にタウンズをモデルとして、この曲をコンセプトの軸に据えたのでは?と思わせるくらい、内容がシンクロしています。なにしろ映画の国内版キャッチコピーは「傷ついた者にしか、歌えない愛がある」ですから。まだ観てない人は是非、この翻訳と合わせて観てみてください……それではどうぞ!

歌詞と対訳

Well if I needed you, would you come to me?
求めるままに 寄り添ってくれるかい?
Would you come to me and ease my pain?
僕の苦痛を 和らげてほしいんだ
If you needed me, I would come to you
求めるままに 僕も君に寄り添うから
I'd swim the seas for to ease your pain
君を癒やすためなら 海をもかき分ける

In the night FORLORN ah the morning's BORN
絶望的な夜を経て 新しい朝は生まれる
And the morning shines with the lights of love
夜明けの輝きは 愛の光に満ちているが
You will miss SUNRISE if you close your EYES
目を閉じていたら それを見失ってしまうよ
And that would break my heart in two
そんな僕の心を二つに引き裂くようなことはしないで

The lady's with me now since I showed her how
貴女は今こうして僕と一緒にいる それは
To lay her lily hand in MINE
僕が 贈ったユリの植え方を伝えたあの時から
Loop and Lil agree she's a sight to see
ループとリルも納得さ 貴女は希望の光
And a treasure for the poor to FIND
絶望の淵にいる僕が見つけた 宝物だということに

Well if I needed you, would you come to me?
求めるままに 寄り添ってくれるかい?
Would you come to me and ease my pain?
僕の苦痛を 和らげてほしいんだ
If you needed me, I would come to you
求めるままに 僕も君に寄り添うから
I'd swim the seas for to ease your pain
君を癒やすためなら 海をもかき分ける

  • the lights of love……「Will You Love Me Tomorrow」の項でも説明してますが、直訳すると「愛の光」。でも辞書で引くと「a woman inconstant in love 恋愛において変わりやすい女性」。同稿 Lonesome Cowboy様のコメントによれば「a partner in a romantic or sexual relationship: LOVER, PARAMOUR=無節操な女、誰とでも寝る女、売春婦」とあります。本稿では全体との親和性を考えて直訳しましたが、ひょっとしたら少々ダブルミーニング的な意味合いがあるのかもしれません。

  • The lady と You は同一人物なのですが、あえて二人称を三人称に変えることで平坦な曲調の中のちょっとしたアクセントになっている気がします。日本語には「身分の高い女性」と「あなた」の2つの意味を持つ「貴女」という便利な言葉があるので採用しました。

  • lay her lily の lay は本来「横たえる」「寝かせる」「敷く」といった意味を持つ同士ですが、植物を lay するのは「植える」という意味もあるみたいです。また Loop と Lil はタウンズ曰く、自身が飼っていたインコのことだそう(ライブ音源のMCによる)。

  • この二人称が三人称になる第3セクションは表現が色々と曖昧ですが、Lady・Lay・Lily・Loop・Lilというアリタレイションを成立させることを優先している気がします。

  • sight to see は「Take It Easy」にも出てきますが、本来は「見もの、圧巻、壮観」という意味。ですがアルコール中毒の当事者にとって、寄り添ってくれる人の存在は希望以外の何物でもないと思うので、このように訳しました(基本的に、筆者の翻訳は困ったときは Take It Easy=適当です)。また She's a Sight to See ということで、ここにもアリタレイションを発見。

  • the poor は貧乏人と直訳すると身も蓋も無いので、心がわびしい、アルコール中毒と薬物中毒でどん底にいる状況を当てはめて意訳しました。

  • Wikipedia などによると、この曲はタウンズの奥様について書かれた曲とのこと。単に「ユリを贈った」ではなく「贈ったユリの植え方を伝えた」としているのは、ちょっとパーソナルな馴れ初めのエピソードがあったのかも?ちょっと興味深いです。タウンズの生涯も映画化希望!

  • 映画と曲の内容がシンクロしている!と主張するものの、本稿については筆者が映画を見た後に翻訳した結果、翻訳が映画寄りになってしまったというのは正直あります。何卒ご了承ください(笑)。


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