農業に希望を持つ為には発想の転換が必要。
はじめまして、こんにちは。
私は現在30代で自営で農業に携わる仕事をしています。
(ここ数年のメインは農業者さんの土作りのお手伝いと悩み相談、
自分でも農業しながら色々と研究しています。)
なぜこの様なノートを始めようと思ったかと言うと、
私は元々、実家の土地を使い農業を小規模経営しながら、
家業の会社で植物の栄養管理や、土作り、ミネラルや上質有機肥料の選び方や使い方、など農業者さんに伝える技術屋の様な仕事をしているのですが、
ここ数年、日本全国どこもかしこも土が壊れてしまっていて、農業者さんからの相談がとても増えてきています。
私も近々、自身の農業経営を本格的に拡大するにあたり、
そういった相談だったり基礎的な知識などを振り返りながら、
自分用復習ノートの併用としてシェアできればと思っております。
まずは、何故、今農業をやるのか。
皆様にとって「農業」という産業はどの様に映っているでしょうか?
少し前までは「キツイ・汚い・危険」の3Kなんて言われておりましたが、
そもそもは私含む一部の農業オタクの間以外では話題にすら上がっていません。
TVで話題に上がるとしても、
「〇〇病が蔓延」「不作で価格高騰」などネガティブなイメージばかりで、
10代、20代の若い世代が農業者になりたい!
と新世代が憧れる産業には全く上げられないのが現状です。
(※日本の農業従事者の平均年齢は67.7歳の超高齢産業です。)
地方自治体や業界各社、また各〇〇農法の会などは何とかして最新技術やイメージ戦略をうって農業を盛り上げようと頑張っております。
しかしながら結局の所、なりたいランキング上位の職業の様に、
「キラキラして恰好良い」「安定して儲かる」「生涯を通してやりがいがある」という大前提の根拠を提示できないでいます。
だからこそ、やりたい人が少ないからこそ、
私は農業には大きなチャンスが転がっていると考えております。
なぜか?
農業とは、
①人が食べる以上、絶対に需要が無くならない産業
②人々の健康に直結する使命感のある仕事
③自分次第で同業他社と差がつけやすい仕事
④技術や知識次第で圧倒的な付加価値を産み出せる
⑤利益目的の他業種企からの参入は必ず失敗する
⑥ブランディング次第で安定して儲かる
だからです。
もちろん誰でも出来る事ではありません。
でも憧れる職業って本来そういうものじゃありませんか?
勉強して努力して、挑戦して、挫折して、
もそれでも夢を持って憧れ続ける。
そんな魅力的な産業に農業もしなければいけないと思っています。
今まで千人以上もの農業者と話して来て思う事があるのですが、
一番の日本の農業の問題点の根っこは、
皆様「個人経営者としての自覚が薄い方」が殆どです。
人に言われた方法で、人に用意して貰った販路で、
取引先には足元を見られて下請けどころか奴隷に近い様な条件での労働環境と自認しながらも、出来るだけ周りと同じ様に経営して周りと同じ様に転ぶ。
それでいて失敗は全て天候のせいに出来るから結果の総括もしない。
その為か「儲かっている農家」と「儲かっていない農家」の間では
圧倒的な情報格差が生まれてしまっています。
そして儲かっている農家さんの殆どには後継者が既にいます。
儲かっていない農家さんは、自分の子供にこんな辛い思いをさせたくないので後は継がせたくない、と考えてしまいます。
では儲かっている農業は何が違うのか?
それは
「圧倒的に美味しくて」
「他よりも天候に左右されにくく」
「収量を多く採っている」
農業です。
(安心・安全は大大大前提です。
そういう方の大半が減農薬~無農薬です。)
「病気になろうが農薬を使わない農業」ではなく、
「農薬を使う必要の少ない(無い)農業」なので
わざわざ看板に掲げて宣伝しません。
一番大事なのは美味しさです。
本当に美味しい野菜は体に良いです。
本当に美味しく作る為には、
イキイキと元気に育てる必要があり、
そんな野菜は病気にも虫にも負けづらく、
もちろん繁殖力も旺盛なので収量も多く採れます。
実際に私の知る農家さん達は、
品目にもよりますが、
売上が平均の2~3倍/10a倍を超える方がたくさんいます。
越冬のトマトをたった10a経営で直売のみで暮らしている方もいます。
(市場出荷に比べ、直売だと利益率が桁違いです。
しかも自分の家の庭先だけで完結します。)
1300円/kgのトマトが25t/10a 以上採れるので
10aだけで充分なのです。
※一番すごいのは倍以上も値段のするトマトを20t以上も直売のみで売り切るので、相当な「美味しさ」の証明にもなります。
そういう農業は説得力があります。
一方、現代農業のトレンドは海外に対抗するために
農地集中して、いかに大面積で栽培して、大規模な設備投資をして、
年中休み無く、利益率の少ない農産物を大量に生産して流通に乗せる。
という方向で国もそっちに舵を切っています。
(農業者を大切に思うならもっと効率的な補助をしてあげて欲しい)
もちろん農業者さんは一生懸命で潰れない様に必死です。
その思いは十分に分かった上で、
痛い所をつく様で非常に申し訳なくは思いますが、
そのベクトルはうまく行ってませんよね。
年々、資材費は高騰して、燃料も高騰して、肥料も上がって、
人件費も上がっていって、それだけ投資しても結果は殆ど天候まかせ。
いくら農薬かけても止まらない病気が新しく出てきて、
殺虫剤に耐性のある虫が発生して、
雨が続けば畑からいつまでも水が抜けずに腐ってしまう。
運よく豊作の年は市場価格が激安で出荷の人件費も出なくて泣く泣く
大量廃棄しなくてはならず、
価格高騰する時というのは「不作で売る物が少ない時」だけで、
野菜が高い~と文句だけ言われて殆どが儲からない。
大規模であればある程、借入金も人件費も大きい為、
たった1割~2割の売上減が致命的になりかねます。
そんな勝ち目の薄いギャンブル誰が目指します?
いくら農業設備や最新農機具などハードの面を強化していたって、
実際に儲かっているのは資材業者だけで国からの補助金は農業者の手元に残らず、莫大な借金と失敗できないプレッシャーだけが圧し掛かります。
肝心の土づくりや栄養管理、栽培技術などソフトの部分を全く重要視していないので効率が上がっても、どんどん失敗の確率だけが上がっていってジリ貧です。
今年病気が出た所は来年はもっと出るかもしれないから対策する、
でも、その対策が原因でもっと酷い事になる、でも誰も原因が分からない。
そこから抜け出す為には、
【まず最初に投資すべきはハードでなくソフトです】
最初にどかっと徹底的に土作りを行えば、
品質と収量が上がって自ずと設備投資する余裕ができてきます。
それに病気になってから対処するより、病気にならない様に管理する方がよっぽど効率的ですよ。
土作りについて「たい肥」だけ入れておけば終了。
と思っている方も多いですが、そんな甘いもんじゃありません。
土が肥沃になる為には、水はけが良くなるためには、
有用微生物のテリトリーを増やす為には、
その全てに対して何が必要で何が不要か、の根拠が必要です。
農業者一人一人が、
植物生理を勉強して、土作りをちゃんとして、
自分の農業環境を職人の様に理解して、
美味しい農産物を目指す為に、きちんと栄養学も勉強する。
それだけで農業の未来は劇的に変わってきます。
やってる様で意外と皆様やっていないんです。
もしくはそもそものピントがずれているのではないでしょうか。
有機でも化成でも、何を目的にしてどんな栽培をしたいのか、
何より、あなたは今、どの様な履歴のある土地で、現在はどんな環境で、
どの様な形態の農業経営をしているか?
それによって、ミネラルも大事だし、アミノ酸も、微生物も大事、酵素の働きも、品種選びだってタイミングだって全部大事だし、時には何もしない事だって必要になって来るので、覚える事は沢山あります。
〇〇農法という本読んで、〇〇先生の有難いお話さえ聞けば、
全国どこでも誰でもできる農法なんて私の知る限りは存在しません。
誰がやっても自分のオリジナリティが必須です。
農業ってやりがいありそうでしょう?
実はとてもアカデミックだし、若さも体力もいる、哲学も必要だし、
その上でビジネスセンスも必要。
そもそも他にやれる事ないから就農する、様な仕事じゃないのです。
最後に誤解の無い様に言いますが、
農業は結果儲かりますが、それだけを求めては絶対に失敗します。
数字だけを見て参入すると資材屋の餌食になるだけなので注意です。
一番大事なのは個々の技術力向上と経験です。
食べる人の事を考えて、その為に自然の事を勉強して、
それでも分からない事だらけで挑戦しながら、
その上で産業として成り立たせられた結果として、儲かる。
です。
具体的な技術論などは、
これから気が向く限り少しづつ書いていきます。
日本の農業には希望しかありません。
最後までお読み頂きありがとうございます。