ウイスキーのミニ小説「最後まで踊っていたいの」

私たちは同じ方向を見ていた

整列したボトルが涙を浮かべたように輝く

バーテンダーはリズムよくグラスを磨き、すまし顔だ

流れるBGMがいつもより大きく聞こえる

鉛玉を飲んだかのような空気で彼の口は開かない

美しい世界の中で琥珀の液体がゆっくりと揺れる

「このウィスキーでさえ、作り手が変われば味も変わる変わらないものなんてないわ・・・」

私はマッカランをゆっくりと長く流し込んだ

「どうせなら、最後まで踊らせてよ・・・」

振り向かずに店を出た

鉄くずのように錆びた木の葉が街灯にちらつく

まだ空気の澄みきらない季節

それは私の心のようだった

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