中村哲さん-その2
先日、映画「荒野に希望の灯を灯す」を観てきた。アフガニスタンやパキスタンで医療活動に従事し、さらには不毛の地に用水路を建設した医師中村哲さんを描いた記録映画だ。
映画で見る限り、中村さんは小柄で穏やかな顔をした(失礼ながら)どこにでもいるおじさんのような印象だった。しかし、さすがに医師なので、患者さんを診ているときは真剣なまなざしだった。
中村さんを見ていると、本当に大事をなす人はその意思を内に秘め、表面的には凡庸な風貌をしているのだと感じた。
いつも「やるやる!私に任せてください!」と大声で叫んでいる政治家とは大きく違っていた。
映画の中で中村さんが発した「世の中にこんな不公平があってはならない」という言葉が一番印象に残っている。
アフガニスタンでも、ガザでも、多くの人々が、無残に殺されたり悲惨な目にあわされている。
このような地域での一番被害者は子供たちだ。生まれてくる子供は国や政治体制を選ぶことができない。だからこそ、子供たちは大人の事情に関係なく幸せに生きる権利があるはずだ。
私たちは平和な日本に生まれ、少なくとも現在のところは空爆で命を奪われる危険とは無縁だ。
しかし、この状態はずっと昔から続いてきたわけではない。私の父は太平洋戦争に従軍している。おばさんは東京大空襲で命を落とした。
ノーベル平和賞をもらった日本被団協の方々の中には実際にヒロシマ・ナガサキの被爆者もおられる。
長い世界の歴史から見れば、戦後の約80年などあっという間だ。日本が戦争によって破滅的な状態になったのはついこの間のことだ。
台湾有事や北朝鮮の核による脅しは決して絵空事ではない。
このように最近の日本では「きな臭い」状態がピークになっているように感じる。
日本を防衛してもらうためにアメリカの核の傘の下に入り続け、その代わりアメリカに追随する道を選ぶか、日本独自の防衛戦略を構築するのか、あるいは憲法9条を守り続けるのか…、我々はまさに岐路に立たされている。
ただ、「暴力はエスカレートする」。これだけは紛れもない真実だ。
ウクライナやガザの紛争はどんどんその規模や地域が拡大している。戦争はいったん始まってしまうと、それを収束するのは並大抵のことではない。
だからこそ、戦争を始めないための外交努力が重要になってくるし、相手を頭から否定せず、相互に理解する努力も必要だ。
ただ、口で言うのは簡単だが、日本人を拉致した北朝鮮を理解しろと言われても自分の中で抵抗感があるのも事実だ。しかし、それを乗り越えないと戦争のリスクはなくならない。
中村さんは常日頃「日本は平和憲法を持っているから、外国人と比べて日本人は安全だ」とおっしゃっていたらしい。
しかし、その中村さんも最後は武装勢力に命を奪われてしまった。
石破首相が誕生して、衆議院議員選挙も近い。今まで以上に真剣に投票しなければならないと思う。
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