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動画配信サービス「シラス」でのチャンネル開設のお知らせ

 株式会社ゲンロンが運営している「シラス」という有料動画配信サービスで、2023年11月1日よりチャンネル開設し動画配信をはじめました。

ホルダンモリの「モンゴルの野を駆ける――アジアを巡る歴史と文字」

ホルダンモリの「モンゴルの野を駆ける――アジアを巡る歴史と文字」

 わたしが開設したチャンネルでは、個人的に長年学んできたモンゴル語や、モンゴルの歴史、文化、仏教など、モンゴルに関連する話題をメインとして番組作りをしています。
 また、モンゴルに関連する事項として、ロシアや中国、チベットや満洲など周辺地域に関することも話題として取り上げます。
 それだけではなく、以前このnoteで取り上げた円仁円載、またその周辺人物や、遣唐使に関連する話題なども取り上げていきます。
「モンゴルの野を駆ける−−アジアを巡る歴史と文字」というチャンネル名には、モンゴルを中心としながらも、地域的にも時代的にも、また分野的にももう少し広い視点で考えていきたいという思いをタイトルに込めました。
 特に「文字」という言葉を入れたのは、モンゴル語において伝統的なモンゴル文字とキリル文字という、2通りの文字表記に関連することを取り上げたいという思いからです。モンゴル人の民族的アイデンティティにおいて、モンゴル文字を重視する考え方は決して少なくありません。
 またチベット人もチベット文字という独特の文字表記体系を持っており、モンゴルもチベットも漢民族と隣接する地域に居住していながら、漢字文化を受容しなかった、あるいは強い言い方に感じるかもしれませんが漢字文化を拒否し続けたとも言えます。他方で、現在のモンゴル国では、公式にも個人レベルで使用されているのはキリル文字ですが、モンゴル人民共和国時代に、モンゴル人自身が決して積極的にキリル文字を導入しようとした訳ではないという点も考慮する必要があります。以上のように、モンゴルやチベットのことを考えるに当たって、「文字」は極めて重要なものであると言えるでしょう。
 ちなみにこの記事を書いている時点で、わたしのチャンネルですでの8本の番組を配信済で、全てアーカイブで視聴可能になっています。

「シラス」とは

 シラスは株式会社ゲンロンが母体となって、他の動画配信サービスを利用する形ではなく、独自のプラットフォームから開発された非常にユニークな動画配信サービスです。
 それはまさに株式会社ゲンロンの創業者である東浩紀さんの哲学の体現であると言えると思います。
 有料配信であること
 チャンネル開設者は必ず収益が得られること
 この2点はYoutubeなどの他の動画配信と大きく異なるところです。そして、以前からゲンロンカフェというトークイベントスペースも運営しているゲンロンの特色が活かされており、「ゲンロン完全中継チャンネル」というゲンロンカフェのイベントを配信するチャンネルを筆頭として、他の動画配信サービスでは見られないユニークな特徴を持っています。
 現在シラスには50弱のチャンネルがあります。いわゆる著名人と呼ばれるような方のチャンネルもありますが、わたしのように無名な者でもチャンネル開設できたことから分かるように、チャンネル開設に当たっては知名度は重要ではないのです。具体的に名前は知らされていませんが、一般的に知名度が高い方のチャンネル開設申請が通らなかったこともあるそうです。
 その点に、創業者東浩紀さんを始めとして、株式会社ゲンロンが目指している方向性が現れています。現在、ゲンロンの代表はロシア文学者の上田洋子さんで、ゲンロンやシラスの運営に関しては上田洋子さんの考え方も大きく影響しており、また社員やアルバイトのスタッフもゲンロンやシラスの思想に共鳴した方々ばかりです。
 わたし自身、ゲンロン友の会の会員としてゲンロンの著作物や文章、ゲンロンカフェのトークイベント、シラスの様々な配信などを日常的に摂取してきた者として、チャンネル開設が叶ったことはとても嬉しいことです。

有料であること、長時間であること

 YoutubeやTikTok、インスタライブなど、多くの動画配信サービスは基本的に視聴者は無料で配信を視聴することができます。しかし、そのような大規模な事業を運営するためには、当然ながら莫大なお金が必要となります。一般的には広告費がその収益を支えているため、視聴者は必ず広告を見ることになります。Youtubeのように課金することで広告の表示を回避できる仕組みもありますが、現実には視聴者の課金より、広告収入が遥かに大きなウエイトを締めています。
 しかし、シラスには見たい動画を見るためには、定期的に流される広告が終わるのを待つ必要はありません。「ゲンロン完全中継チャンネル」では、ゲンロン関係の広告が流れることがありますが、これはトークイベントの休憩中のみで、それ以外には広告により視聴が中断されたり、遮られたりすることは一切ありません。
 つまり視聴者がチャンネル毎の月額会員になるか、特定の番組を個別に購入するか、どちらにしても視聴者の課金によって運営されています。
 また、Youtube動画でも短尺の動画が好まれる傾向が強くなっていますが、特に「ゲンロン完全中継チャンネル」では数時間にも及ぶ長時間のトークイベントをすべてライブ配信及びアーカイブ配信をしているのを始めとして、それ以外のチャンネルでも60分以上の動画が多数あり、数時間に及ぶ配信を可能とするシステム設計がなされています。
 長時間であることは、決して話が無駄にダラダラと長く続いていることを意味しません。配信者は視聴者がリアルタイムで書き込むコメントを見ながら配信をするため、視聴者の質問や意見に即座に反応することもできます。また、話の仕方を変えたり、関連することに話題を広げたりすることもできます。
 必ず長時間の番組を作らなければいけない訳ではなく、長い時間が確保できることで、興味や理解を途切れさせないことができると言えます。

「シラス」でチャンネルを持つ意味

 動画配信サービスは多数あります。Youtubeやインスタなどでも収益化している配信者は少なくありません。チャンネル開設に関しては特に制約もなくアカウントがあればよいので、参入障壁は極めて低いと言えます。
 シラスはチャンネル開設に当たって運営側の審査があり、審査結果によってはチャンネル開設ができない場合もあります。しかし、チャンネル開設ができれば、売れた番組が少なかったり月額会員が少なくても、月々の売上に対して一定割合の金額が配信者に支払われます。そのため、バズることと無縁の配信をすることができると同時に、月額会員が多く番組単独購入も多い人気チャンネルと、そうではないチャンネルとで、売上に対する支払い率に差はありません。これもYoutubeと大きく異なる点です。
 わたしはYoutubeプレミアム会員になっています。単に広告回避が目的です。
 有名ユーチューバーの動画や、バズった動画を一切見ないため、わたしが視聴しているチャンネルにわたしが支払った料金から収益が配分されることは一切ありません。視聴者の立場からするとYoutubeの最大の欠点だとわたしは思っています。わたしが視聴した動画に対して、配信者になんらかの金額を支払いたいと思ったら、Youtubeを経由しない形で支払うしかないのが現状です。さらに、プレミアム会員の会費から、見ていないチャンネルにも収益として支払いが行われることも回避する方法がありません。
 そのため、いわゆる迷惑系などのチャンネルに対して、ほんの僅かでも自分の会費から支払いが行われないようにするには、プレミアム会員を辞めるしかないのです。
 逆の立場からすると、収益化のためにはバズることが至上命題になるため、バズればなんでもOKの迷惑系や、どう見ても犯罪行為の配信があとを絶たないことになります。
 シラスはバズることとは無縁の運営方針です。もちろん、月額会員も番組個別購入も多ければ多いほど売上が増えますので、企業経営なので当然ながら利益が多くなる方がいいのは当然のことです。とはいえ、とにかく儲けられれば何してもいい、という方針をゲンロンもシラスも取っていません。
 企業規模に関わる部分もありますが、そもそも東浩紀さんがなぜゲンロンを創業し、さらに事業を拡大してゲンロンカフェや、ひらめきマンガ教室、ゲンロンSF創作講座、更にはシラスなどをやっているのかということと深い関わりがあります。
 詳しくはわたしが語るよりも東浩紀さんの著書「ゲンロン戦記」をお読みいただければと思います。
 ゲンロンやシラス、あるいは東浩紀さんの文章に関することなども、今後このnoteで色々書いていこうと思っています。

東浩紀著 ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる (中公新書ラクレ)


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